純正キャブレターのオーバーホール
エンジンをオーバーホールするには、当然ですが、エンジンをフレームから降ろします。その際、キャブレターは取り外します。つまり、エンジンのオーバーホールの際は、割と簡単にキャブレターを分解出来る状態になっている、ということになります。
クリーナーボックスの付いている車両では、キャブレターを外すのは、案外と大変なものです。整備性の悪い「フェンダーレスキット」や「サブフレーム」が装着されている場合は、純正キャブレターの脱着は、非常に手間が掛かる場合もあります。しかし、エンジンが降ろされている状態では、キャブレターも取り外されている訳ですから、オーバーホールするまでの大変さは、だいぶ軽減されます。
画像のキャブレターは、2003年式車両から取り外したものです。エアクリーナーボックスが付いているとはいえ、20年以上も経過している訳ですから、思いの外、汚れています。
エンジンをオーバーホールする際に、キャブレターのオーバーホールもご依頼くださる方は多いのですが、古いキャブレターになりますので、ついでに多少のパーツは交換したいところです。
交換したいパーツとは?
たとえ不具合が発生していなくても、これらのパーツは交換したいところです。左は「ニードルバルブ」で、右は「フロートチャンバのOリング」です。
フロートチャンバはガソリンが溜まるところですから、Oリングくらいは交換しましょう。ここは、古い年式では、ガスケットになっています。
「ニードルバルブ」は、ガソリンを流したりストップさせる役目を担っています。このパーツが消耗や段付きをおこすと、オーバーフローが発生します。オーバーフローが発生すると、溢れたガソリンはインテークポートから燃焼室に入り込み、ピストンとシリンダーの隙間からクランクケース内に落ちることもあります。
「なんだかエンジンオイルの量が増えたんですけど・・・」
いえいえ、オイルは勝手には増えませんよ。もし増えたのでしたら、それはオイルではなく、ガソリンが入り込んだ為です。過去にオーバーホールした後、オーバーフローでケース内にガソリンが入り込んだ車両が、2台ありました。
後からキャブレターを外すのは、手間が掛かります。つまり、コストもその分、掛かります。20年も乗り続けた車両です。多少はコストが掛かったとしても、重要なパーツは交換したいところです。
以下が、私が交換したいと考えているキャブレター内のパーツです。
<2003年式>
- フロートチャンバ O-リング 682×4個
- ニードルバルブセット 4,851×4個
- ダイヤフラム 3,267×4個
- パイロットスクリューセット 2,563×4個
XJRは年式によって、キャブレターも何度か変更されています。上記でご紹介したのは、あくまで「2003年式」であり、パーツの価格や形状は、年式によって異なります。
試しに、1998年式で価格を調べてみました。
<1998年式>
- フロートチャンバ ガスケット 1,683×4個
- ニードルバルブセット 6,072×4個
- ダイヤフラムアセンブリ 13,640×4個
- パイロットスクリューセット 3,762×4個
2003年式と比べると、全てが高額です。上記のパーツだけでも、合計で「10万円」を超えます。
この中で、特に「フロートチャンバ O-リング」と「ニードルバルブセット」は、強く交換をお勧めします。後々のトラブルや不調を防ぐためにも、できれば交換したいところです。
「ダイヤフラム」は、調子が悪いキャブレターの場合は、交換した方が良いでしょう。薄いゴム製のパーツですが、何をしても不調が改善されなかったキャブが、このダイヤフラムの交換により、不調が改善したケースもありました。
「パイロットスクリュー」ですが、先端にOリングが付いており、締め込んだ状態から何回転戻したかで、セッティングするパーツです。そんな重要なパーツにも関わらず、先端のOリングだけの部品設定がありません。Oリングが潰れていたり破損していた場合は、パイロットスクリューのセット購入しか方法がありません。Oリングが再使用出来る場合は、そのままでも良いかと思います。
オーバーホール内容
当ガレージでは、キャブレターのオーバーホールを依頼された場合は、上記の写真のように分解します。基本的には、外せるパーツは取り外します。
キャブレターボディには、キャブクリーナーをたっぷりと吹きかけます。すると、このように汚れを含んだクリーナー液が流れ出てきます。これで、ある程度のボディの汚れを落とします。
エアブローした後、もう一度クリーナー液を吹きかけます。この時は、特に内部の細い通路も含め、各通路にタップリとクリーナーを吹きかけます。そして1晩経過した後、各通路に付着した汚れを落とすために、念入りにエアブローします。
その他、取り外したパーツもキレイにします。ジェット類はエアブローします。その他のパーツも、クリーナーを用いてキレイにします。
ここまで行っても、不調が改善しない純正キャブレターがあります。そうなると、私の手には負えません。キャブ屋さんの仕事になります。不調が改善しない純正キャブレターの場合は、「交換して頂きたい」というのが、私の本音です。
キャブレターは、非常にデリケートで微妙なパーツです。しかも当然ですが、古いです。その間、どのような整備がされてきたのか、不動時にガソリンは抜かれていたのか、車両の使用状況はどうだったのか、全く分かりません。そんな状態の不調な純正キャブレターを調子良くするのは、非常に難しい作業になります。
一番大変だった車両では、キャブレターを2回、交換しました。分解クリーニングだけで5回は行いました。それでも不調は改善しません。お客様保有のスペアに交換しても、改善せず、オークションで入手したキャブレターで、やっと調子良く走れるようになりました。しかしその後、オーバーフローが発生し、ニードルバルブを交換しました。
そのような事もありますので、できればオーバーホール時には、多少の部品は新品に交換したいところです。もし不調の場合は、部品交換とオーバーホールでも直る保証はありませんので、キャブレターの交換も視野に入れておくべきでしょう。
純正キャブレターの主要部品は、まだ新品で購入できますが、キャブレター本体は、すでに販売終了です。もし新品キャブレターをお考えであれば、ミクニTMRキャブレターしかありません。
もし、今のうちに新品キャブレターを入手しようとお考えの方は、早めに注文することをお勧めします。当ガレージで発注しても、最低でも入荷までに3ヶ月は必要です。
キャブ屋さんがいました♪
先日のレースの際、元キャブレターメーカーの社員だった方から、純正キャブレターのオーバーホールをしてくれるキャブ屋さんがいることを、お聞きしました。
今度一度、コンタクトを取って、整備時間や費用、内容等をお聞きしたいと思っています。肝心なパーツが新品で入手出来るうちは、それで調子良くなるのであれば、一つの方法として選択肢に入れることも出来ますからね。
ご相談はお気軽に
XJR1200、XJR1300のキャブ車のことであれば、お気軽にご相談ください。お一人お一人に、親身になってご回答させて頂きます。
a:889 t:1 y:0