エンジンのオーバーホール事例2
初期型のXJR1200に1300エンジンを換装し、7万キロを走行したマシンです。
まだまだこのマシンに乗り続けたいので、一度オーバーホールをしたい、とのご希望です。
分解・洗浄
まずはエンジンを車体から降ろします。
なんと!エンジンマウントの一つが破損していました。オーナー様は全く気付かなかったそうです。
シリンダーヘッドカバーを外し、バラしていきます。
カムシャフトを外す前に、カムスプロケットの合いマークが合っていることを確認します。
ヘッドを外しでピストンを見たところです。結構な量のカーボンが付着しています。
取り外したヘッドです。全体にベトついたカーボンが大量に付着しています。一部のバルブの色が気になります。
2番の燃焼室のアップです。ステムシールからのオイル下がりでしょうか。
ピストンには、相当のカーボンが付着しているのが分かります。XJR1300はこのように、スタッドボルト下に小石や汚れが溜まります。シリンダーまでしかバラさない場合は、ケース内に落とさないよう注意が必要です。
クランクケースを割ったところです。
クランクからコンロッドを外しました。メタルは新品に交換します。
ミッションを取り外します。
全てバラし終わりました。
組立て
ケースのクラッチ部のボルトが2ヶ所、破断しています。ネジ穴から破片を取り外します。
全てのパーツを洗浄し、各部をチェックしていきます。
コンロッドメタル、ボルト、ナットを新品にして組みます。トルク管理するため、ボルト部とナット座面にグリスを塗ります。
クランクにコンロッドを組み付けました。
上下ケースに各パーツを組み付けていきます。
クランクケースを合わせて組み付けます。
オイルシール部に、念のために液体ガスケットを塗り、オイル漏れを防ぎます。
オイルパンを組み付けていきます。
オイルパンを組み終わったところです。この後、エンジンを上向きにします。
クラッチを組む前にオイルポンプを取り付けます。このスプライン部は弱点なので、念入りにチェックします。
オイルポンプを組み付けた後、クラッチを組んでいきます。
ドリブンギア部の段差が酷かったため、手持ちパーツをプレゼントしました。これは段差もなくキレイです。
ピストンは新品です。もちろんピストンピンも新品に交換します。
キレイに面出ししたシリンダーを組み付けます。
バルブは全て新品に交換です。当り面を出すために摺り合わせをします。
ヘッドを組み付けた後、この状態でカムシャフトを組み付け、バルブクリアランスを一度測定します。
エンジンを組み上げた後、再度バルブクリアランスを測定します。
組んだエンジンをフレームに積み、各パーツを取り付けたら、エンジンオイルを入れます。ここですぐにエンジンを掛けず、火を入れる前にクランキングして、オイルをエンジン全体に回します。
特にクランクケースまで割るフルオーバーホールの場合、全てのパーツを洗浄しています。メタル類やピストンリング等を新品に交換します。オイルを塗りつけながら組んでいるとはいえ、念のためにこの作業は欠かせません。
テスト走行
完成後のテスト走行では、エンジンは軽く回り、またパワフルである事を確認しました。2速でも、フロントが浮き気味になるほどです。
走行後、オイル漏れ等もチェックします。
サスペンションの動きに気になるところがあったので、納車時にオーナー様にその当りも伝えます。
総評
今回のケースでは、走行距離が7万キロを超えていたこともあり、ピストンやバルブまで新品に交換しました。
一般のユーザー様の場合、ケースを割るようなことは滅多にありません。長く快調に乗るために、ケースまで割った場合は、メタル類やカムチェーンは全て新品に交換することをお勧めします。
当店では、ケースを割った場合は、メタル類やカムチェーンは必ず新品に交換します。XJR1300の弱点であるパーツは、特に念入りにチェックします。コンロッドボルトとナットは、再使用することはありません。
今回は、エンジンを降ろして初めてマウントパーツの破損が見つかりました。普段乗っているオーナー様でも気が付かないトラブルは、走行距離が長くなるほどあるものです。
長く快調に乗り続けるためには、エンジンのオーバーホールは必要です。XJR1300に愛着があり、これからも乗り続けたいと思っている方には、XJR1300のスペシャリストが対応いたします。
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