オーバーホールについて
当店では、エンジンのフルオーバーホールの価格設定を『47万円程度』としています。これは、『全ての作業と部品代を含めると、総額でこのくらいは必要ですよ』という意味合いです。
中には、高い、と感じる方もいるかもしれません。他のショップのサイト等で、「エンジンフルオーバーホール 工賃148,000円~」といった記載を見れば、確かに高額なイメージです。
ではなぜ『47万円程度』としているのか?
エンジンオーバーホールの価格や作業内容について、詳しくご説明します。
他社の工賃
信頼できるショップに依頼した場合の相場は、いったい幾らくらいなのでしょうか?
レースを始めて30年も経つと、多くの業界関係者やショップの方と知り合いになります。必然的に、作業内容や金額も知る事になります。その中で、個人的に信頼して依頼できると感じるショップは、私の周りには数店しかありません。
それらのショップの、4気筒大排気量車のエンジンオーバーホール代金は、おおむね45万円以上です。つまり、最低でも45万円からですよ、ということです。
当然、程度によりもっと必要な場合もあります。どこまで求めるか、にもよって変わってきます。
ネット上で他店のオーバーホール代金を、参考までに調べてみました。
A店:空冷4気筒1,000cc以上
工賃 | 部品代 | |
フルオーバーホール | 260,000 | 190,000 |
腰上オーバーホール | 210,000 | 120,000 |
エンジン脱着 | 30,000 | |
タペット調整 | 34,000 | |
バルブフェースカット | 30,400 | |
シートカット | 44,800 | |
すり合わせ | 24,000 | |
バルブ鏡面加工 | 40,000 | |
面研磨 | 15,000~ | |
ポート加工 | 120,000~ | |
キャブオーバーホール | 24,000 | 洗浄液別途 |
キャブセッティング | 40,000 |
- フルO/H
- 450,000(部品代込み)
- エンジン脱着
- 30,000
- 作業内容
- 不明
- キャブO/H
- 24,000~
(O/H:オーバーホール)
バルブすり合わせやタペット調整などの項目が別にあるので、オーバーホールにどこまで含まれるのかは分かりません。
キャブオーバーホールは洗浄液別途とあるので、トータルで幾らなのか不明です。
B店:空冷4気筒1,000cc以上
工賃 | 部品代 | |
フルオーバーホール | 248,000~ | 別途 |
腰上オーバーホール | 129,600~ | 別途 |
エンジン脱着 | 37,800 | |
ポート研磨 | 51,840 | |
キャブオーバーホール | 30,240 | |
キャブセッティング | 54,000 |
- フルO/H
- 428,000~(部品代180,000円として)
- エンジン脱着
- 37,800
- キャブO/H
- 37,800
消耗パーツを交換すると、部品代だけで180,000円程度は必要になります。
その他
フルオーバーホール工賃 | 部品代 | エンジン脱着 | キャブオーバーホール | |
C店 | 178,000~ | 別途 | 36,750~ | 36,750 |
D店 | 400,000~ | 込み | 35,000 | 要見積り |
この記事を作成して6年経過していますが、様々な理由により、現在ではどの企業でも、部品代や工賃は上昇しております。メーカーのオートバイ純正部品でさえ、当時と比較すると、『20%』程度は値上がりしているのが現状です。 (2023.3.6)
多くのショップでは、価格に『~』という記号が付いています。つまりその数字は最低の場合であって、ほとんどの場合は「最低価格以上」になると考えて良いでしょう。
また、どこまでの作業が含まれるのか、どこまで部品を交換するのか、といった事も重要です。見積りを取る際には必ず確認する必要があります。
特に年式の古い車両、走行距離の多い車両では、予想外のトラブルが起きている場合もあります。
空冷の場合、熱的な問題でシリンダーヘッドやシリンダーに歪みが発生している場合があります。その場合、面研磨が別途必要になります。
エンジンのオーバーホールは、エンジンを開けてみなければ分からない要素も多分に含まれています。作業内容も含め、信頼出来るショップに依頼する事が最も確実な方法です。
当店の作業内容
当店では、作業の効率化やスピードより『丁寧さ』を重視して、オーバーホール作業をします。
たとえばクランクケースの合わせ面には、液体ガスケットの余分なカスが付着していますが、全て丁寧に取り除きます。バルブのすり合わせは、機械ではなく手作業で行います。
当店ではオーバーホールの際、全ての消耗部品を交換するだけでなく、カムチェーンやメタル類も必ず新品に交換します。
また、一旦取り外したコンロッドボルトやナットは、絶対に再使用しません。
一度トルクを掛けて伸びたコンロッドボルトの使用は、トラブルの原因になりやすいからです。
分解した全てのパーツを入念に洗浄し、カーボンはキレイに取り除き、各部をチェックします。特にXJR1300の弱い部分は、念入りにチェックします。
作業風景については、こちらをご覧下さい。
(⇒ エンジンオーバーホール事例)
当店の工賃設定
なぜ『45万円程度』としているのか?その理由をお伝えします。
多くのショップでは、工賃幾らより(~)、と価格設定しています。この場合の『~』が実はクセ者です。予想外のトラブルがあった場合は別ですが、通常のオーバーホール作業では、するべき作業はほとんど変わりません。
しかしそこに『~』があるということは、まず間違いなく工賃はそれ以上になります。さらに作業項目が別途設定されている場合は、それぞれの工賃も加算されます。
すると、『工賃178,000~』のオーバーホールが、総額で60万円を超える事も、実際に珍しくはありません。75万円の事例も耳にしています。
当店では、エンジンの脱着や部品代も全て含め、『45万円程度』としていますが、多少の追加作業等はその範囲でまかないます。バルブすり合わせやタペット調整、洗浄なども当然含まれます。トラブルが発生していた場合、当店の手持ちパーツで代用できる場合は、安価でお譲りもします。
つまり、予想外のダメージやトラブルが無ければ、その金額を超えることはありません。
作業項目を細かく設定するよりも、トータルで安くなる場合がほとんどなのです。
キャブレターも外れている訳ですから、ついでに安価でオーバーホールもします。項目を細かく設定し総額を上げるようなやり方はしておりません。肝心なことは、『総額幾らで、どのような作業をするか』です。
ネームバリューでショップを選び、高額な費用が掛かったという事例は、山ほど見聞きしています。信頼できると思っていたショップの作業が、実は手抜き作業だったという事例もあります。
あなたがエンジンのオーバーホールやチューニングをしようと思うのであれば、どこに依頼するかで、その出来栄えは決まります。総額も変わってきます。
一つの作業項目に惑わされず、総額で幾ら程度必要になるのか、どの程度の作業をしてもらえるのか、どこまで部品を替えるのか、といったところは、必ず確認することをお勧めします。
2022年9月より、部品代の高騰などの理由により、オーバーホール工賃を『47万円』に値上げさせて頂きました。ご理解をお願いいたします。
XJR1300のオーバーホールやチューニング、カスタムのご相談事がありましたら、お気軽にお問合せください。
a:9897 t:3 y:0