エンジンのオーバーホール事例・1

10年ほど前に、私が持っていた1300のエンジンをお譲りしたお客様です。
程度の良いエンジンでしたが、走行距離も5万キロを超え、だいぶお疲れです。

愛着があり、カスタムしてお金も掛けているので、まだしばらくは今のオートバイに乗りたい、ということで、今回のオーバーホールとなりました。

分解・洗浄

XJR1300のオーバーホール事例1
車両の入庫です。キレイに乗っている車両です。

XJR1300のオーバーホール事例1
エンジンを降ろします。

XJR1300のオーバーホール事例1
まずはヘッドを降ろします。

XJR1300のオーバーホール事例1
燃焼室側に、イヤな凹みが幾つもあります。

XJR1300のオーバーホール事例1
同じ4番ピストンにも、打痕があります。

XJR1300のオーバーホール事例1
シリンダーを外したところです。

XJR1300のオーバーホール事例1
ピストンには、相当量にカーボンが付着しています。

XJR1300のオーバーホール事例1
EXポートにも、カーボンがびっしり付着しています。

XJR1300のオーバーホール事例1
クラッチは、大きな段差も異常もありません。

XJR1300のオーバーホール事例1
クランクまでバラします。

XJR1300のオーバーホール事例1
パーツをチェックしながら洗浄していきます。

XJR1300のオーバーホール事例1
ケースの合わせ面に付着していた、余分な液体ガスケットです。全て丁寧に取ります。

XJR1300のオーバーホール事例1
カーボンを除去した4番ピストンです。ひどい打痕です。

XJR1300のオーバーホール事例1
3番ピストンにも、小さな打痕が幾つもあります。

XJR1300のオーバーホール事例1
カーボンを除去して洗浄したヘッドです。傷の数と大きさがよく分かります。

XJR1300のオーバーホール事例1
3番にも、小さな傷が幾つもあります。


修正・組立て

シリンダーヘッドの面研磨

修正するために、0.3ミリの面研磨をしました。凸部と小さな打痕は消えましたが、深い打痕は消えません。凹部を全て消すには、1ミリは研磨する必要があります。
凸部と浅いキズ、3番の打痕は消えたので、通常使用にはこれで問題ありません。

XJR1300のオーバーホール事例1
ヘッドの4番部分です。だいぶ良くなりました。この後、オイルストーンとリューターで燃焼室側の突起部を修正しました。

XJR1300のオーバーホール事例1
バルブタイミングを調整するため、カムスプロケットの取り付け穴を広げました。

XJR1300のオーバーホール事例1
燃焼室の拡大です。こびり付いたカーボンは除去しました。

XJR1300のオーバーホール事例1
カーボン除去前と除去後のバルブです。最後はボール盤とペーパーで仕上げます。

XJR1300のオーバーホール事例1
バルブを1本ずつ、手作業で摺り合わせしていきます。

XJR1300のオーバーホール事例1
バルブを取り付け、シリンダーヘッドを組み立てました。

XJR1300のオーバーホール事例1
コンロッドをクランクに組み付けます。ボルト・ナット・メタルは新品を使います。

XJR1300のオーバーホール事例1
トルクレンチを使用し、数回に分けて規定トルクで組み付けます。

XJR1300のオーバーホール事例1
ケースアッパーに、クランクとスターターギヤ、カムチェーン等を組み付けます。クランクメタルとカムチェーンは新品です。

XJR1300のオーバーホール事例1
ケースロアに、洗浄・チェックしたミッションを組み付けます。

XJR1300のオーバーホール事例1
ケースを組んだ後、オイルパンを組み付けていきます。ダウエルピンやOリング類は、全て新品を使用します。

XJR1300のオーバーホール事例1
エンジンの下側が完成です。その後、上向きにします。

XJR1300のオーバーホール事例1
クラッチを組みつけていきます。大きな段差もなく、良好です。

XJR1300のオーバーホール事例1
3番ピストンは、キズも小さかったので、修正して使用します。

XJR1300のオーバーホール事例1
ピストンを組み付けました。全てのパーツがキレイになっています。

XJR1300のオーバーホール事例1
ヘッドを載せた後、バルブタイミングを調整します。ヘッドを0.3ミリ面研したので、バルブタイミング調整は必要です。

XJR1300のオーバーホール事例1
エンジン完成後は、キャブレターのオーバーホールです。結構汚れています。

XJR1300のオーバーホール事例1
分解した後、キャブクリーナーとエアーで念入りに汚れを取り、スプリング部も掃除します。これだけで動きが良くなります。

XJR1300のオーバーホール事例1
キャブのフロート室側も分解洗浄します。何年も乗ったキャブレターをオーバーホールするだけで、オートバイの調子は良くなります。

XJR1300のオーバーホール事例1
クラッチ側のマスターです。オイルが酷く汚れています。

XJR1300のオーバーホール事例1
クラッチマスターをオーバーホールし、新しいオイルを入れます。

XJR1300のオーバーホール事例1
クラッチキャリパー側で、念入りにエア抜きをします。同時に、オイルを全て入れ替えます。


完成・テスト走行・納車

XJR1300のオーバーホール事例1
完成後のテスト走行です。エンジンやキャブのフィーリング、異常がないかを必ず確認します。

XJR1300のオーバーホール事例1
「ノーマルエンジンって、こんなに良く走ったっけ?」と思うほど、良く走るエンジンになりました。

オーナー様と、完成したXJR1300

オーナー様と、完成したXJR1300です。
後日、作業報告書を提出させて頂きました。

当店では、どのような作業を実際に行なったのかが分かる『作業報告書』を提出しています。『実際には作業していなかった』、『雑な作業をしていた』等というご心配は、一切必要ありません。


総評

今回のピストンとヘッドの打痕には、ビックリしました。
おそらく原因は、プラグ交換の際にプラグ穴から小石等が落ちたのだと思われます。それ以外には考えられません。

オーナー様は、ご自分で何度かプラグ交換をした、と言っていますので、まず間違いないでしょう。

特にプラグ周りには、小石等が入り込んでいます。プラグ交換の際は、必ずエアーで吹いてから行うようにして下さい。

4番は、大きな異物がピストンとヘッドの間で、何度も挟まれた形跡がありました。もしピストンが割れていたら、大変な事になったでしょう。排気と一緒に放出されたのは、運が良かったとも言えます。

長く乗っていると、走って分かるパワーダウンや調子の悪さだけでなく、時としてこのように予期せぬトラブルが発生しているものです。

愛着のあるXJR1300を長く走らせたいとお考えであれば、一度オーバーホールすることをお勧めします。

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