XJR1200のチューニング構想・ローコスト車体編

前回の『ローコスト・エンジン編』に続いて、今回は車体編になります。

エンジンをある程度パワーアップすれば、当然ですがノーマルの車体では、不具合が出たり物足りなさが出てくるものです。安全面にも関わってきます。ですから、車体にも、ある程度はコストや労力を掛けて、しっかりとその向上したパワーを受け止められるようにする必要があるでしょう。

車体関係、つまり外見から見える部分については、カスタムパーツと言われるパーツが、山のように販売されています。カスタムパーツは、見た目が非常に重要ですから、ひと目で分かります。しかし今回は、「ローコスト編」です。私だったら選ばない物、必要性を感じない物、性能に大した影響を与えないパーツは、コストを重視して今回は見送ります。

例えばFフォークでは、定番の高価なオーリンズ等は、コストを重視するのであれば不要です。純正フォークに手を加えたり、スプリングを変更するだけで、ある程度の走行は十分に可能です。

前回の記事に載せた、赤いタンクのXJR1200を作った際も、フォークは純正を使っています。約145馬力の出力でしたが、筑波サーキットでも、ある程度のタイムも出せています。多くの方が実際に走らせていましたが、不満や問題は、ありませんでした。

コストを優先させた上でチューニングを行うのであれば、『目的』を明確にする必要があります。そうすれば、無駄なコストを、外見重視のパーツに費やすことも、しなくて済むでしょう。

<車体メニュー>

  • ブレーキ
  • クラッチ
  • Fフォーク
  • Rサスペンション


ブレーキ

マスター

フロントブレーキのマスターは、個人的には一択です。

ブレンボブレーキマスター
ストリート用XJR1300のブレーキマスター

私は昔から、レースでもストリートでも、ずっとこのマスターを使っています。鈴鹿8耐、もてぎ7耐、SUGO6耐などの耐久レースからテイスト・オブ・ツクバまで、車両が変わってもサーキットが変わっても、ずっとこのマスターです。ツーリング用車両でも、使っています。

なぜ、そんなにこだわって使っているのでしょう・・・。もちろん、他のメーカーのマスターが付いた車両にも、乗ったことはあります。ブレンボの別のマスターを使ったこともあります。今までに色々と使ってみた結果、効き、タッチ、フィーリング、コスト、全てにおいてベストだと思えるブレーキマスターが、このブレンボだと思えるのです。

ブレンボブレーキマスター
レース用R1のブレーキマスター

削り出しの高価なマスターもありますが、この鋳物のマスターで十分です。品番などは気にしたこともありませんので、すぐには出てきません。おそらく、鋳物のラジアルブレーキマスターと言えば、このタイプしか無いはずです。

ストリート用では、こんなタイプのブレーキマスターも使っています。車両を入手した際、装着されていたものです。まあ、ストリート用と割り切ってしまえば、特に不満はありませんので、そのまま使っています。

ブレンボブレーキマスター
ストリート用FZS1000のブレーキマスター

キャリパー

制動させる目的ですから、マスターシリンダー以上にキャリパーも重要です。キャリパー次第では、幾ら高性能のマスターシリンダーを使ったとしても、その効き具合は物足りなくなったりもします。

コストを掛けないでキャリパーを変更するのであれば、やはり「MOS」が一番だと、個人的には思っています。

ヤマハ純正MOSキャリパー
ヤマハ純正MOSキャリパー

正立フォークの車両には、このMOSキャリパーが非常に多く使われています。1300初期の、いわゆる「ヤマンボ」と比較すると、タッチも効きも、ずっと良いと感じています。以前に製作した「XJR1200」にも、純正フォークにこのMOSキャリパーを使いました。制動力も、十分に発揮してくれます。

もう少しだけコストを掛けることが出来るのなら、やはりブレンボキャリパーでしょうか。

ブレンボレーシングキャリパー
ブレンボレーシングキャリパー

ブレンボには、高価な削り出しキャリパーが幾つもありますが、これは昔からあるキャリパーです。一応、削り出しで製作されている物ですが、現在の高価なラジアルキャリパーと比較すると、見た目は大人しいですね。

私たちの間では、以前からこのキャリパーのことを、「チビブレンボ」と呼んでいました。現在のラジアルタイプではなく、昔からの「アキシャルタイプ」のキャリパーでも、一回り大きな「デカブレンボ」が存在していました。見た目は似ていますが、少し大きなタイプです。あまり出回ってはいなかったようですが、そのキャリパーと区別するために、「チビブレンボ」と呼んでいたのだろうと思います。

ブレンボレーシングキャリパー
デカブレンボと、チビブレンボ

上記のチビブレンボも、純正キャリパーとして多くの車両の使われている、鋳物のキャリパーと比較すると、タッチだけでなく、効き具合も全く異なります。ですから、サーキットで使用しなくなったチビブレンボを、ストリート用の車両に使っている訳です。

コストを重視した場合、キャリパーはこの2択かと思います。


クラッチ

クラッチですが、キャブレターをTMRに変更し、パワーも上がった状態では、純正のままでは滑り出す可能性大、でしょう。必然的に、何かしらの強化をしなければなりません。

そうなると、マスターシリンダーも純正品のままでは、レバー操作が重く感じるようになります。ブレンボの高価なタイプではなくても、例えばニッシンのラジアルタイプに変更するだけで、随分と操作性は良くなります。

エア抜き中のニッシンラジアルマスター
エア抜き中のニッシン、ラジアルマスタークラッチ

クラッチの強化については、エンジン内部の話にはなりますが、何通りか方法があります。コイルスプリング式の強化クラッチキットでなくても、160馬力のパワーでも滑らないクラッチにする方法もあります。

今回は車体編ですので、クラッチの話は、また別の機会でお伝えしようと思います。


Fフォーク

XJR1300の純正フォークは、そのままでは大きく動く、柔らかいセッティングになっています。エンジンパワーを上げてスポーツしようと思えば、まず間違いなく頼りない感じになるでしょう。

そこで、多くの方は「金色のオーリンズ」を選択しますが、高価です。コストを掛けずにパワーアップしたエンジンでスポーツするには、スプリングとオイルを交換するだけでも、相当に良くなります。

オーバーホール中のFフォーク
オーバーホール中のFフォーク

もちろん、古いフォークであれば、オーバーホールをした上で、スプリングを変えてください。お勧めは、「ハイパープロ」のスプリングキットです。安価で、ある程度踏ん張るフォークに変えることが出来ます。


Rサスペンション

最低でも、純正サスペンションをオーバーホールすることが必要になります。古くてオイルも抜けたようなRサスペンションでは、どうにもなりません。

本来であれば、Rサスペンションは新品を購入して欲しいパーツです。機能パーツですから、そこにはコストを掛けましょう。私の個人的なお勧めは、以下のサスペンションです。

アラゴスタRサスペンション
アラゴスタRサスペンション

このサスペンションの良いところは、発注時にサスの全長とスプリングの種類、バネレート等を指定出来ることです。市販のサスペンションは、仕様が決まっていますので、好みや乗り方、体重などの理由で変更する場合、新品を購入した後で、コストと手間を掛ける必要があります。しかし、ある程度の使用目的や好みがある場合は、仕様を決めた上での発注が出来ますので、コスト的にも時間的にも、ずっと有利になります。

もし新品の購入をされない方は、せめてオーバーホールくらいはした方が良いでしょう。Rサスペンションのオーバーホールは、通常のオートバイショップでは出来ません。サスペンションの専門店や、それに準ずるショップに依頼する必要があります。

中古で譲り受けたサスペンションの場合は、必ずオーバーホールして下さい。サスペンションだけでなく、その他の機能パーツも、中古入手品であった場合は、オーバーホールが必要だとお考えください。

以前の所有者の使い方やメンテナンス頻度など、何も知らない訳です。信用できる理由もありません。ですから機能パーツの場合は、専門店でのオーバーホールが、安全上でも機能上でも、最低限、必要なことかと思っています。


あくまでも、個人的な好みです。

今回の「ローコスト車体編」、「ローコストエンジン編」は、私が以前に試してみた内容であり、こうでなければダメだ!というものでは、決してありません。高価なカスタムパーツ、高価なチューニングパーツを大量に使わなくても、手間や工夫で、楽しく走ることの出来るXJR1200・XJR1300が作れますよ、という事を、お伝えするものです。

XJR1300でも、最近は高価なカスタムパーツを数多く取り付けた車両も、時々見かけるようになりました。個人の好みですから、それをとやかく言うつもりは、全くありません。

ただ、そこまでコストを掛けなくても、パワーのある走れる車両は作れる、という、貧乏臭いオッサンの一つの考え、程度に読んで下さいね。

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