純正ピストンの話
XJR1200の純正ピストンは、随分前に販売終了となりましたので、新品を入手することは出来ません。ピストンリングやヘッドガスケット、ベースガスケットはまだ販売していますので、エンジン内部に大きなダメージが無ければ、オーバーホールは十分に可能です。
XJR1200の場合、ピストンだけでなく、シリンダーも販売終了となっていますので、こちらの新品も入手出来ません。ですからXJR1200をオーバーホールする際は、ピストンやシリンダーに再使用出来ないようなダメージがあった場合は、少々面倒臭いことになります。オーバーホールをお考えの際は、頭の片隅にでも、そのことを入れておいて頂ければな、と思います。
XJR1300の場合
XJR1300はXJR1200よりも新しいとはいえ、1998年からの販売ですので、既に25年が経過しています。部品の供給も、いつまで続くのか分からない状況です。スズキやカワサキに比べれば、まだメーカーから部品が供給がされていますので、十分に有り難いのですが・・・。これからも長く乗り続けようとお考えの方は、少しは考えておくことも必要かもしれません。
ピストン
ピストンは、初期の1998年式でもインジェクションになった2007年式でも、まだ新品で購入できます。
リングもガスケット類もありますので、オーバーホールは問題なく出来ます。
シリンダー
以前は、シリンダー単体で部品購入できていたのですが、いつの頃からか、単体販売されなくなりました。理由は分かりません。会社の事情、大人の事情、部品精度の問題、そんなところかと想像できます。
シリンダ・ピストンセット
シリンダー単体の販売がされなくなった代わりに、「シリンダ・ピストンセット」となって、販売が継続されるようになりました。
このセットでは、おそらくクリアランスの問題かと思いますが、
「このピストンは、1番シリンダーに、このピストンは2番に」
といったような、組み合わせが予め指定された状態で、セット販売されていました。
どのような経緯でこのようになったのかは、あくまでも想像するしかありません。ただ、言い換えてみれば、非常に親切な設定だと思えます。
その「シリンダ・ピストンセット」ですが、現在では2007年式しか販売されていないようです。それ以前の年式用は、全て「販売終了」となっています。
どうしても新品のシリンダーにして欲しい!というお客様の時に、2007年式のシリンダーを使ったことがありました。私の見立ては、色の違いだけでしたが、もしかしたら材質も変わっているのかもしれません。ただ、形状は同じに見えました。
インジェクション仕様のエンジンは、半艶タイプのブラックですから、それまでの年式のエンジンと比べると、当然ですが外観の色が違います。それくらいの違いであれば、ユーザーサイドで何とかしましょう。材質、生産場所など、何かが変わっているのかもしれませんが、それはユーザーには分かりません。でも、使えるのであれば、良しとしましょう。
純正ピストンでのチューニング
エンジンをチューニングしようとする場合、最も多く交換されるパーツが、『ピストン』かと思います。『エンジンチューニング=鍛造ピストン』というイメージは、多くの方が持っています。今でも、入手出来る社外ピストンは、数種類あるようです。
では、いったい何のためにピストンを交換するのでしょうか・・・
もしエンジンチューニングをしようとお考えの方は、そのあたりの事も少し考えてみると、面白いかと思います。
XJR1300は、スタンダードのピストンサイズは「79mm」です。この純正サイズのままピストン交換する場合、メリットは高圧縮くらいでしょうか。重量は、同程度、もしくは若干重くなるケースがほとんどです。鍛造ピストンは強度が高い、とお考えの方もいますが、壊れる時には壊れます。溶ける時には溶けます。トラブルが発生するような状況になれば、純正ピストンでも鍛造ピストンでも、大して変わりません。
つまり、ピストン交換で得られる一番のメリットは、『高圧縮』ということになります。しかし、圧縮は純正ピストンのままでも、高めることが出来ます。
昔、レースの時に使用していた部品で、1200の純正ピストンのまま、チューニングエンジンを造ったことがありました。カムシャフトはヨシムラST-1でしたが、よく回る楽しいエンジンになりました。
ピストンは純正のままでも、カムシャフトを変えたりクランクを加工したり、圧縮を高めたりポートを削ったり、そんな事をすれば、相当に楽しいエンジンは造ることができます。そんな事を考えると、『エンジンチューニング=鍛造ピストン』というイメージは、簡単に崩れます。
要は、アイデアと手間です。チューニングは、何を変更した、幾ら掛けた、というだけではありません。実際に走った時に、『乗って楽しいか?』と思えるかどうか、ではないでしょうか。
軽量ピストン
以前に何度か製作した、純正ピストンから15%の軽量化を実現したSOHC製スペシャルピストンを、再度、製作することになりました。
私はXJR1200が発売された当時から、様々なピストンを使ってきましたが、軽量ピストンはどこにも存在していませんでした。ですから、ピストンが軽量化されるとエンジンがどう変わるのか・・・、それを初めて体験させてくれたのが、SOHC製スペシャルピストンでした。
諸事情により、前回で最後かと思っていましたが、この秋にもう一度、製作することが決まりました。おそらく最後の製作になると思います。
製作数は既に決まっています。これは材料の兼ね合いもありますので、変更はできません。数名の購入者も、現時点で決まっています。レースで使う方々です。サーキット走行でのパフォーマンス向上も、実証されています。北海道から筑波までやってくる昔のレース仲間は、このピストンを使うようになって、「59秒台」で走るようになりました。
そんな『SOHC製スペシャルピストン』の、最後の製作分ですが、以上のような経緯もあり、皆様にお譲りできるのは、5~6セット程度になります。
近いうちに、正式にブログで発表いたします。