クラッチやピストン

XJR1300レース車両

XJRレーサーはなんとか形になり、レースも無事に終えることが出来ました。満足出来たか?と問われれば、今回の目標だった「無事完走、一桁順位」は達成できましたので、とりあえずは合格ということにしてください。

でも、本当に満足したかと言えば、もちろん満足なんて、していません。そんなにすぐに満足出来るヤツだったら、こんなイイ歳になるまで、レースなんてやっていません。満足出来るレースなんて、5年に1回とか10年に1回とか、そんな程度です。

今度は、あそこをこうしよう!あの部品はこう加工しなければ!ここを調整して、こう走れるようにしないと!、こんなことばかりです。

さて、初回のレースは終わりましたが、製作過程の記事は書き終わっていませんので、ちょっとばかり遅くなりましたが、『XJRレーサー製作』として続けたいと思います。

日々、整備やオーバーホールさせて頂いているお客様のエンジンについては、実はネガティブな部分も結構ありますので、あまり書かないようにしています。でも、自分のエンジン、自分の車両でしたら、どんなことでも記事に出来ます。

もちろん、詳細なデータやデリケートな部分については、ちょっとはボカした表現にはなりますが、そこはお察し頂ければと思います。


クラッチ

クラッチは、この車種の泣き所の一つです。XJR1200からですから、もう30年近く乗っていますが、クラッチに良い思い出は一つもありません。

『重い、切れない、ニュートラルが出ない、滑る・・・』
FJ時代のままですから、仕方ないのかもしれません。

XJR1300レース車両のクラッチ
XJR1300レース車両のクラッチ

もう20年以上前の話ですが、当時のレースで一番緊張したのは、実は『フォーメーションラップ』でした。クラッチのハウジング類を頻繁に交換出来るほどの余裕もなく、当時の社外強化クラッチの精度の悪さもあって、とにかくニュートラルが出にくかったのです。

エンジンを掛けた状態で停止すれば、まずニュートラルは出ません。クラッチレバーをいっぱいに握っても、クラッチは完全には切れてはいません。こうなると、スタートまで待たされる時間が非常にシンドいのです。出来ればスタート直前にギアを入れたいのですが、それにはニュートラルで待つ必要があります。ですが、1速に入ったまま停止すると、まずニュートラルが出せません。

そんな状況でどうしていたかと言えば、フォーメーションラップ時に2ヘアピンを立ち上がった後、裏ストレートで一旦加速し、その後、動いている状態でニュートラルにするのです。当時はスタート前の裏ストレートで、必死で左手と左足を動かしていました。

運良くニュートラルに入れば、あとは惰性でグリッドに着きます。もし勢いが足りなくて惰性で行けない場合でも、絶対に再度1速には入れません。両足をバタバタさせて、何とかグリッドまで進むのです。もしニュートラルが出なければ、スタートまでジッと耐えるだけです。ブレーキを掛けないと前に動きますので、Fブレーキに指を掛けて、クラッチが傷まないよう祈りながら、スタートの合図を待つのです。

一度、チームのショップに転がっていたブレンボマスターを付けてみたことがありましたが、「19×18」ですと、レバーを一杯まで握っても、オートバイは前に動いた記憶があります。結局は、マスターは純正品を使っていました。重いし見た目も今ひとつでしたが、当時の貧乏レーサーには、それが一番のような気がしました。

上の画像は、現在のレーサーに付いているクラッチです。確か、「FCC製」だったと思います。スプリングには、ワッシャを挟んでテンションを掛けています。重くなりましたが、マスターのブレンボと合わせると、使用には問題はありませんでした。20年の間に、部品も進化しているんですね。

フォーメーションラップでのニュートラル出しは、念の為に今回も行いました。部品がまだ新しいからでしょうか、社外部品の進化でしょうか、昔のようにニュートラルが出ない!ということは、ありませんでした。

スタートだけでなく、走行中も、よく滑りました。何度も何度も、滑りました。いろいろなトラブルも発生しました。今のように豊富な社外部品の無い時代でしたので、無い頭を使い、いろいろな事も試しました。

その後、XJR1300をレースに使わなくなり、使える部品でストリート用の車両を造りました。

ストリート用のXJR1300

ストリートでは、さすがに滑りませんが、重いクラッチには閉口します。マスターを変更したら、停車時にクラッチは完全に切れるようになりましたが、さらに重くなりました。とにかく重いです。半クラッチが出来ません。でも、信号待ちでも、ちゃんと切れます。どうしたものか、思案中です。


ピストン

SOHC製スペシャルピストン
SOHC製スペシャルピストン

SOHC製スペシャルピストン
SOHC製スペシャルピストン

これが、レーサーに組まれている「SOHC製スペシャルピストン」です。何度かご紹介していますので、今更詳しく解説する必要もないでしょう。

このピストンが、良い仕事をしてくれます。空冷エンジンの走り方を忘れてしまったロートルライダーでも、軽くてトルクフルな加速をしてくれます。これからもう少しの間、頑張って働いてもらいたいものです。


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