「でか兄」という呼び名について
このツナギは、今年新調したものです。もうツナギは作らないと思っていたのですが、昨年秋のレースに、出来上がったばかりのキレイなマシンに乗せて頂けることになり、その時の写真を見たら、ツナギがまるでボロ雑巾のように汚く見えたので、思い切って新調した次第です。
私はレースを始めてから今まで、ずっと同じメーカーのツナギを着ています。関東の方には有名な、『YONEZO』です。これでもう何着目でしょうか。
この新調したツナギの背中のネーム部に、『デカ兄』と書かれています。一つ前の、ボロ雑巾のようなツナギを見てみましょう。
こちらにも、同じように『デカ兄』と書かれています。もっと前のツナギはというと・・・
こちらは『デカニー』です。今、目の前にありませんが、もっと前のピンクのツナギにも、同様のネームが入っていました。
これは、私が依頼したものではありません。そもそもYONEZOさんに、色やデザインの注文をした事は、確か初回のみで、その後は一度もありません。依頼も注文もしていないのに、いつの頃からか、何故かこのようなネームが当たり前のように入っています。
「デカ兄」の由来
簡単です。でかいヤツだったからです(笑)。態度ではなく、身体のことですよ。
むか~~し、レースブーム真っ只中の頃、相模原を拠点にした「ミラージュ関東」というチームがありました。昔のロードレースを知るオジさんなら、もしかしたら聞いた事があるかもしれません。鈴鹿4耐を含め、数々のノービスレースに優勝し、ヨシムラに多くのライダーを輩出した名門チームです。
そのチームの創設者で会長の長田さんという方が、チーム員ではないのに何故か私を可愛がってくれ、私のことを「でかにい」と呼ぶようになりました。「でかジイ」でないのは、当時は私も若かったからです。
創設者であり会長であり監督なのですが、イメージは「ボス」といった雰囲気の方でした。
「よおデカ兄、うちに飯食いに来いよ!」
「デカ兄、ガレージに遊びにおいでよ!」
こんな感じで、よく声を掛けてもらいました。当然、当時のチーム員とも親しくなります。そんな中に、安藤武や沼田憲保もいました。
その後、選手権レースを走らなくなり、「デカ兄」と呼ぶ人もいないと思っていたのですが、3人だけ、「デカ兄」と呼ぶ人たちがいました。今のヤマハの監督、ヤマハ監督と仲の良かったスズキの沼(沼田憲保)、そしてYONEZOの社長です。彼らだけは、私と話をする時にも、そう呼んだりしていました。
YONEZOで作ったツナギは、もう何着なのか覚えていませんが、確か3着目くらいからでしょうか、勝手に「デカ兄」と入れられるようになりました。
でも、昔のミラージュ関東のチーム員やごく近い人だけが呼ぶ言い方だと思っていたのですが、面と向かって言わないだけで、テイストの仲間たちも結構その呼び名を使っているようなことは、聞いたことがありました。
確かに、中には数人ですが、「デカ兄さん」とか「兄さん」、「アニキ」と言ってくれる方もいます。でも、面と向かって言われることは、ほとんどありませんでした。だからかもしれませんが、私の中で、面と向かって「デカ兄」と言って良いのは、ミラージュ関東の長田さん、ミラージュ関東の元チーム員、今のヤマハ監督、YONEZOの社長くらいです。
正直に言えば、あまり親しくない間柄で、「さん」もつけないで「デカ兄」と言われると、あまりいい気はしません。せめて、「さん」をつけて「デカ兄さん」と言ってくださいね。
今年の全日本で
筑波サーキットでJSBが行われなくなってからは、ツインリンクもてぎの全日本は、出来るだけ見に行くようにしています。鈴鹿やSUGOは気軽に行ける距離ではありませんので、もてぎくらいは見に行かないと、と思っています。
今年はコロナ禍の影響で、ロードレースの全日本選手権の日程変更や開催中止が幾つもありました。世界中がこのような事態ですので、仕方のないことです。そんな中、もてぎラウンドは日程が変更になりましたが、10月17~18日になんとか開催されました。
年に1回くらい、全日本の雰囲気や空気感を味わいたいので、今年も行ってきました。いろいろな方に会いましたが、そこで、こんなことがありました。
『ワタル~、うちの奥さんがサインを欲しがっているんだけど。』
「いいですよ。」
トラックの裏に行くと、そこにライダー二人がいました。笑いながら2言3言話すと、プロモーション用のポスターにそれぞれがサインをしてくれました。現チャンピオンはにこやかな顔でサインしてくれましたが、今年チャンピオンを狙っている若手ライダーがサインを書いていると、監督さんはこんなことを言っていました。
「でか兄だからな。」
できたら航汰にはその時、
『知ってるよ、おっさん!!』
くらい言って欲しかったのですが、笑顔でサインをするだけでした。
ファクトリーの監督もYAMALUBEの監督も、最近ではただのオッサンに見えますが、昔の走っている姿は、本当にカッコ良かった!
これくらい褒めておけば、今度こそポロシャツくらい貰えるでしょうか?