テイストで走らせたFZSレーサー車両

前回は、今まで走らせてきたXJRレーサーをご紹介しました。

今回は、XJR1300の後に走らせてきた『FZS1000レーサー』をご紹介したいと思います。あまり見かけるような車両ではありませんし、いわゆるポン付けカスタムとは違いますので、何かの参考になれば良いのですが・・・。


FZS1000

FZS1000は、ヤマハがR1の数年後に発売した、いわばR1をネイキッドにしたようなオートバイでした。その最大の特徴は、鉄フレームです。

何故アルミフレームにしなかったのか、今でも不思議ですが、日本ではマイナーなこの車種も、欧州では結構売れたと聞いています。その車種を使って面白いことをしよう、とチームの社長が思い立ったのがキッカケでした。

鉄フレームなので、テイストで走れます。エンジンもR1ベースなので、面白いことも出来そうです。一緒に事故車を千葉まで引取りに行き、FZSプロジェクトはスタートしました。

初めは社長のツーリングマシンだったものが、数年後にはこのように変身していました。

初期の頃のFZS1000レーサー

この写真は、まだFZS1000に乗り始めた初期の頃かと思います。Fフォークが初期の頃に使用していたものなので、間違いありません。

その後は、エンジンを含め、何度も仕様変更されました。
『ちょっとレーサー車両を持って来い!1ヶ月置いておけ。』

1ヶ月後に行くと、
『ちょっと変えておいたぞ。』

エンジンだけでも、5バルブ、4バルブ、クロスプレーン、JSB仕様、ノーマルエンジン、何度も仕様が変わりました。当然ですが、その度に燃調の再セッティングです。専門の方に筑波に来てもらい、空燃比計を取り付けて3~4走行使い、走ってはピットインを繰り返し、マップを作ります。

FフォークもRサスも何度か変わりました。もちろんその度に、車高も含めたサスのセッティング作業が必要です。

社長は、もちろん良かれと思って、エンジンやパーツを変更してくれていたのですが、もはやこのバイクをイジるのが最大の趣味だと思えるほど、いろいろとやってくれました。そして変更後のセッティングは、ライダーの仕事です。でも、そんな作業も楽しいものでした。

そうやって、時間を掛けて作り上げていくのですが、気が付けば他のライダーには乗りにくい車両になっていたようです。車高は高く、サスは固く、他の方が乗っても沈みこまないらしいです。以前のXJR1300の時もそうでした。完全に私スペシャルの仕様ですね。

FZS1000レーサー

この写真の頃には、Fフォークやブレーキキャリパー、ホイールが変更されています。エンジンはR1には間違いないのですが、年式や形式までの細かいところは、あまり認識していません。

自分の意思とは関係なくエンジンが変更されることもよくありましたが、本当に有難いことです。だって、お世話になっているところが他のチームだったら、絶対に出来ないことばかりですから。

このFZS1000は、途中で何度も仕様変更されていますが、その他にも、ちょっとばかり特別な車両にも乗せて頂きました。勝手に『FZS1000R』と『FZS1000WR』と名付けています。『FZS1000R』の方は、以前に雑誌(ロードライダー)に紹介されたことがありますので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。


FZS1000R

FZS1000Rレーサー

FZS1000Rレーサー

今から10年ちょっと前でしょうか、こんな車両に乗せて頂いたことがあります。今よりもずっと元気でしたので、まだ無理も出来ました。

『どう見てもR1ですよね。』と言われましたが、鉄フレームなので違います(笑)。タンク下のフレームには、その証拠に『鉄』と書かれています♪なのでこの車両は、勝手に『FZS1000R』と名乗らせて頂きました。

Fフォークには、雑誌でしか見たことの無かった、高価そうな「オーリンズ倒立フォーク」が装着され、注意書きのメモには『曲げるな!』と書かれていました。はい、もちろん曲げません!!ただ、この頑丈そうなフォークをもし曲げるようなことがあれば、ライダーにも相当なダメージがありそうです。ライダーの大事な骨も曲がりそうです。それだけは、何としても避けなければなりません。

この時のパイプフレームは、純正のアルミフレームと違って、「しなり感」が全くありませんでした。剛性は高く、微振動も多く、中高速コーナーでは乗りにくいものでした。それをチームの社長に伝えたところ、タンク下の左右を繋ぐパイプを1本、大胆にもハンドグラインダーで切断しました。

『これで大丈夫だろ!』

この状態で走行すると、今度は最終コーナーで大きく振られて、どうにもなりません。サスのセッティングを振ったところで、とても攻められたものではありません。当然、テスト走行後に社長に伝えます。

『じゃあ、溶接して元に戻そう!』
そんな楽しい思い出を残してくれたフレームでした。


FZS1000WR

FZS1000WRレーサー
カーボン外装のFZS1000WRレーサー

FZS1000WRレーサー
レース時のFZS1000WRレーサー

この車両は、現在乗らせて頂いているものです。名称は、『FZS1000WR』としました。もちろん、私が勝手に付けました。ヤマハの場合は「RR」としないで、「WR」とすると友人から聞きましたので、末尾に「WR」と付けました。

この車両に乗り始めて、もう1年以上経過しています。何度も筑波サーキットに持ち込んでいます。レースにも出場しています。なので、ここで紹介しても、きっと大丈夫でしょう♪

私は長い間、筑波サーキットしか走っていませんが、車両について細かな質問をされることは、まずありません。皆さん、空気を読んでくれているのでしょうか。

レースの際は、ブリヂストンガレージ前に置かせて頂きますので、車両の回りには、ブリヂストンのシャツやジャンパーを着た怖そうなオジさんたちがいます。そのせいでしょうか、それとも『カタクラ』という名前がそうさせているのでしょうか。やはり細かな質問をされることは、まずありません。質問されて時間を取られる事もありませんので、有難いです。

以前の『FZS1000』レーサーの時、雑誌屋の方に、「その青いフォークは、どこのですか?」と聞かれた事がありました。筑波に通い慣れている方には、おそらく「カタクラだから・・・」で事が済みます。大抵の関係者の方にも、それで通ります。でもそれが通じない雜誌屋の方には、『ナップスに売っていますよ。』と答えておきました。

でも、そんなパーツを使わせて頂いたり、このような素晴らしい車両に乗せて頂けるのは、全て今のチームのおかげです。本当に有難いです。速くもないただのオッサンが、今でもこのような素晴らしい車両に乗れるのですから、感謝してもしきれません。

FZS1000WRレーサー

11月のレース当日、ひょっこりと『RSイ○ウ』の社長が、筑波にやってきました。「高野の応援に来たんだよ♪」と言っていましたが、他に大事な用事があったに違いありません。

「すごいバイクだなぁ~。これなら勝てるよ♪」と言っていましたが、それならライダーをキチンと選ぶ必要がありますよね。そもそも、君と同じ年なんだからね。それを、現役の全日本ライダーたちに勝てと言っても、無理だろ!!もう少し、優しい言葉を掛けてくれよなぁ~♪


展示車両

今回のレースの時、『FZS1000WR』の製作にご協力頂いた方が、展示車両を2台持ってきました。金曜日から日曜日まで、BSガレージの前に展示していましたので、筑波サーキットにご来場された方は、実物を見たかもしれません。

FZS1000WRレーサー
FZS1000WRレーサー

MT-7レーサー
MT-7レーサー

『FZS1000WRレーサー』は、私の乗っている車両と、ほぼ同じだと思われます。フレームもエンジンも、どう見ても同じです。電装系までは聞きませんでしたが、ここまで作り込まれていますので、電装系もキットパーツが付いているものと思われます。制御系のセッティング幅が、ずっと広くなります。

当然、書類はありません。公道走行は不可です。しかし、間違いなく珍しい車両です。現在日本には、私の車両と合わせて2台しか存在していないと思われます。

この車両、場合によっては販売しても良いらしいです。でも、高価なのは間違いありません。どう安くみても、現行R1よりも高価でしょう。もし本気で購入したい!とお考えの方は、当ガレージで問合せをしてみます。問合せフォームに「希望金額」をお書きの上、お問合せをお願いします。

本名を記載していない方、ふざけた金額しか申告していない方は、単なるひやかしと判断させて頂き、問合せはしません。予めご了承ください。

もう1台の方は、「MT-7レーサー」です。こちらは、岡山国際サーキットで実際に走行している車両のようです。面白くて楽しい乗り味と聞いています。一度、ぜひ乗ってみたいものです。