SOHCにエンジンを持って訪問

私のお疲れ様だったエンジンですが、『分解する前にちょっと持ってきてよ♪』とSOHCの渡辺さんに言われていましたので、エンジンを持ってお伺いしてきました。

「バラして持っていけばいいんですか?」
『バラす前に持ってきて!バラしちゃだめ。』

渡辺さんは簡単に言いますが、XJR1300のエンジン、もう一人で車に積み込む気力はありません、腰を痛めるだけです。ですから近所の友人に積み降ろしを手伝ってもらい、二人でのご訪問となりました。

多少吹き抜けた状態で乗っていましたので、エンジン前部は酷く汚れています。ナベさん、汚いままですみません。

降ろしたXJR1300エンジン


SOHCで計測

良い天気です。絶好のエンジン分解日和です。

エンジンは台車の上に置いたまま、工場の前に陣取ります。ヘッドカバーを外し、ダイヤルゲージをセットしてクランクを回転させます。

『1番の上死点を出して!』
「はい、今すぐ。」

その後、見たことの無い計測道具を出してきて、渡辺さんはいろいろと計測を始めました。特に、バルブとピストンのクリアランスを念入りに測定していました。

ふ~~~ん、なるほど、そうやって測るんですね。ところで、バルブとピストンが一番近づくのは、何度くらいのところなんですか?

へぇ~、ふ~ん・・・


ヘッドを外して・・・

『じゃあ、ヘッドを外して!』
「了解です。」

テンショナーやカムシャフトを取り外し、ヘッドを外します。これが、思いのほか張り付いていて、簡単には取れません。格闘する事5分、シリンダーヘッドが外れました。

シリンダーヘッドを外したXJR1300エンジン

1番ピストンの上にべっとりとオイルがあるのは、訪問する前に自分でオイルを注入し、容積を測ったからです。私がやったので、どこまで正確な数字かは保証できませんが、ピストン上死点で容積を測定し、それを元に計算した結果、圧縮比は『12.2:1』となりました。これは、予想通りの数字です。

しかし、それにしてもシリンダーの合わせ面が汚れています。吹き抜けの跡です。よく見ると、ピストンの外周に沿って、シリンダー上面が加工されているのが分かるかと思います。溝を彫って、そこに銅線を入れて、カッパーに喰い込ませているのです。圧縮抜け対策です。

取り外したカッパーGK

取り外したカッパーGKです。ピストンより少し大きいサイズで、円周状に線が残っています。シリンダーにはめ込んだ銅線が食い込んでいた跡です。

ヘッドを外した状態で、カッパーの厚みやシリンダー上面とピストンの高さなどを、慣れた手つきで測定していきます。

取り外したピストン

シリンダーを外し、ピストンも一つ、取り外します。このピストンは、随分と前に閉店されたミハラスペシャリティというショップが販売した、ワイセコの79mmです。それまでのFJ系のピストンに比べて圧縮比が高くなっており、ワイセコ特注品だと聞いています。

その他、カムシャフトもミハラ製です。このカムシャフトについても、渡辺さんからいろいろと事情をお聞きすることが出来ました。なるほど、そういう事だったんですね。

おそらくミハラのピストンもカムシャフトも、ほとんど出回ってはいないと思います。私の知る限り、私と北海道のS君くらいです。そのS君も、今ではSOHC製ピストンを使っています。

特にカムシャフトは、レースでも街乗りでも使える、非常に優れた物です。どこかにこのカムシャフトの中古品をお持ちの方がおりましたら、ぜひご連絡下さい。


1週間後に再訪問

取り外したXJR1300のシリンダーヘッド

取り外したシリンダーヘッドですが、吹き抜けの跡はありますが、思ったよりもダメージは少ない感じです。

渡辺さんが、『燃焼室容積を測りたいが、オレは汚いヘッドは嫌だ!』とワガママを言うので、一旦持ち帰り、バルブを外してキレイに洗浄した後、再度訪れることとなりました。

でもこのヘッド、いったいどの程度面研磨したのか、古いノートにもハッキリとした記載がありません。当然ですが、私の記憶も曖昧です。

「0.5mmだったかなぁ~、1mm近く削った気もするなぁ~。」

実は今、キレイに洗浄してあるシリンダーヘッドが、これとは別に二つあります。両方共に面研磨してありますが、研磨後、まだ使用してはいません。研磨量もハッキリと分かっているものです。

ということで、1週間後、ヘッドを3つ、バルブを1気筒分持って、再度SOHCにご訪問しました。

キレイに洗浄したXJR1300のシリンダーヘッド

バルブを入れ、燃焼室の上に透明のプラ板を置き、燃焼室容積を測っていきます。ヘッドの高さも測定します。その結果、今回分解した私のヘッドは、1mmも面研磨していないことが分かりました。人の記憶なんて、曖昧なものですね。

ただ、燃焼室容積にも個体差があることも分かりました。これはどの車種でもあるそうです。昔の量産品ですので、ある程度は仕方のないことなんでしょうね。

一通り、渡辺さんが計測するのを見ていましたが、これを個人レベルで行うのは、ちょっと無理がありそうです。私も以前、自分でやってくれ!と言われたことがありましたが、この正確な計測は無理です。

今回、エンジン丸ごと持参して、後日ヘッド単体として持ち込んで、いろいろと計測して頂きました。これらの数字が今後、渡辺さんが作るもの、作ろうとしているもののお役に少しでも立てば、と思っています。

私のヘッドとカムシャフト、シリンダー、ピストンは、もうしばらく預かりたい、とのことですので、置いていきます。壊さない程度に、好きに使ってください。

ナベさん、今年もピストン製作、宜しくお願いしますね!
カムシャフトの件も、宜しくお願いしますね!
ヘッドも面出ししておいてくださいね!

SOHCピストン、チューニング、オーバーホールに関するお問合せ、ご相談はこちらから気軽にお願いします。