コンプリートマシン構想・その1、なぜ造るのか?

1200の時代から、もう25年もXJRに乗り続けて、XJRばかりをイジり続けていると、ストックパーツも結構溜まるものです。もう絶対に使わないであろうパーツやゴミは、当然処分していきますが、思い出のあるタンクなどは、なかなか捨てられません。

お客様にも使えそうなパーツや、いつか使えそうなパーツなどをストックしているうちに、パーツだけで1台作れるくらいになりました。じゃあ1台、新たに造ってみようかな・・・、そんな事を考えるようになりました。


フレームから仕上げていきたい!

1年ほど前、フレームまで単体にして整備させて頂いたXJR1300がありました。オーナー様が中古で購入された車両だったようですが、それ以前の保管や整備に問題があったためか、楽しく走ることが出来るのだろうか?、と思われるような状態でした。

サビで動かないスイングアームベアリング
サビで動かないスイングアームベアリング

その車両は、スイングアームピポッドやステアリングステムのベアリングを交換しましたが、スイングアームベアリングなどは、サビて固着しており、酷い状態でした。

私がオーバーホールさせて頂く車両の多くは、15~20年選手です。目に見えない部分が傷んでいる車両も、少なくありません。エンジンブラケットが破損している車両だけでも、3台ありました。

折れたエンジンブラケット
折れたエンジンブラケット

もちろん、全ての車両がこのような状態になっている訳ではありません。ごく一部でしょう。でも、少なくともこれからも長く、楽しく、安心して乗っていくには、古い車両ですから、目に見えない箇所もキチンと整備する必要があると感じています。

そう考えているので、製作するコンプリートマシンは、フレーム単体にした状態からベアリング交換や塗装まで施して、操安性やサビの心配を取り除いた上で、ゆっくりと仕上げていきたいのです。

多くのオーナーの方は、ベアリング交換なんて、まずしません。エンジンを降ろさないと確認できないフレームのサビなんて、気付くこともありません。でも、気が付かないだけで、年式相応に傷みはあるものです。

後から手を入れるのは、結構大変な作業になります。でも、全てを分解して、一から組み上げていくのなら、その都度、問題箇所に対応できます。

塗装の終わったXJR1300のフレーム
塗装の終わったXJR1300のフレーム

ステム、Rサス、スイングアームを取り付けた状態
ステム、Rサス、スイングアームを取り付けた状態

塗装の終わったマルケジーニホイール
塗装の終わったマルケジーニホイール

車体の完成
車体の完成

これらの写真は、13年前に、今でも私が街乗りに愛用しているXJR1200改1300を造った際のものです。

素材としては、その時よりもさらに古くなっていますので、ここまでの作業をして造りたい!と考えています。

この車両は持っていよう!、乗りたい時に乗ろう!、そう思える1台にします。
もし誰かが欲しいと言ったときにも、自信を持ってお譲りできるような、自慢できる1台に仕上げたいと思います。


エンジンも傷んでいる!

これはもう、当然のことですね。走行距離に関わらず、20年物のエンジンはオーバーホールして、消耗パーツは交換するべきでしょう。

クランクケースまでオーバーホール
クランクケースまでオーバーホール

シリンダーヘッドやピストンには、カーボンが蓄積しています。圧縮が落ちている場合もあります。オイル管理次第では、思いのほか傷んでいることもあります。カムチェーンは伸びています。メタルも消耗しています。バルブも傷んでいます。

「今は、走れる。」と、「今、調子良く走れる。」は違います。趣味でオートバイに乗るのですから、調子良く走れないと、オートバイに乗っていてもつまらないだけです。ツーリングに行っても、ストレスが溜まります。

古いエンジンでもキチンとオーバーホールすれば、今後も楽しく安心して走れます。パワーやトルクも回復させることが出来ます。新車時よりパワーを出すことだって出来ます。


昨今の旧車事情

オートバイに40年も乗っていて、レースなんかを長くやっていると、オートバイ業界や様々な事情を知ることになります。

カワサキ車を中心に、『旧車』と言われているカテゴリーがあります。その定義は定かではありませんが、相変わらずコアなマニアの方がおり、ビックリするような高値で車両が売買されているようです。

各地に、いわゆる旧車マニアを相手にする旧車専門店と言われるショップも、数多くあります。しかし、「オーバーホール済」と言われ、高額で購入した車両がグズグズで満足に走ることも出来ない・・・。そんな事例は後を絶ちません。よく聞く話ですが・・・。

古い友人に、カワサキZ系を中心に旧車のエンジンを扱っているエンジンチューナーがいます。たまに遊びに行くと、とてもここでは言えないような話を聞きます。幾つものショップ名も出てきます。そんな話を聞くと、なんだかなぁ~、と思います。

オートバイは、外見は非常に大事だと思っています。誰だって、どうせ乗るならキレイでカッコ良いオートバイに乗りたいでしょうから。私も同じです。

でも旧車業界は、外見だけキレイにされた車両が、『オーバーホール済』として数多く出回っているようです。

最近、近くの友人やその仲間たちが、ミドルクラスの旧車を続けて購入しました。マッハ350、CB400Four、GS400などです。どれも、年式にしてはそこそこキレイな外観です。しかし・・・

どの車両も、満足に走らせることができません。どの車両も『オーバーホール済』だったハズなのですが・・・。旧車業界のオーバーホールという定義がどのようなものなのか、疑いたくもなります。

ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみると、

オーバーホール(Overhaul)とは、機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業のことである。

とあります。
『分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業』をしたにも関わらず、何故まともに走ることもできないのでしょうか・・・。不思議です。

つい先日も、TMRキャブレターの調子が悪いので見て欲しい、というお客様が来られました。4年ほど前に、他のショップでキャブレターのオーバーホールをしてもらったが、調子は良くならなかった、ということでした。

オーバーホールしても不調が改善されないのなら、セッティングの問題だと思い、とりあえずキャブレターを取り外して中を確認してみました。すると・・・

4年間で4万キロ走ったとして、その間何もメンテナンスしなくても、ここまで汚れないですよ、と思うほど、汚れていました。少なくとも、4年前にちゃんとオーバーホールされていたら、ここまで汚れや異物が溜まることはないのでは、思えるほどです。おまけに、フロートチャンバのOリング部には、多量の液体ガスケットが塗られています。

普通、このような箇所に液体ガスケットなんて塗りません。Oリングを交換すれば済むことです。

別の車両では、XJRの弱点でもあるヘッドカバーのガスケットに、多量の液体ガスケットが塗布されていた事がありました。ガスケットを新品に交換すれば、液体ガスケットを塗る必要なんて、ありません。次の作業のことなど全く考慮していないのですね。

世間のオーバーホールって、この程度なのかな、と思うと、ちょっと悲しい気分になります。もちろん、中には腕の良い方もいます。真面目に取り組んでいる方もたくさんいます。でも、このような事は、二輪業界では良く聞く話なのです。残念ですが・・・

一部の収集家の方を除けば、多くの方は乗って、走って楽しむためにオートバイを購入したり維持します。古い車両や旧車が好きな方は、オーバーホール済なら安心して乗れる、と考えます。でも、そうではない場合が多いのも、残念ながら事実です。

結局は、調子を良くするために腕の良いショップやメカニックを探し出し、さらにコストを掛けることが必要になります。でも、腕の良いショップやメカニックは、いったいどこにいるのでしょうか・・・。もしかしたら、それを探し出すことが、一番難しいことなのかもしれません。

全ての機能を新品時と同様に戻すことは、手間もお金も掛かります。でも、安く売るがためにそこを省いてしまったら、元の性能にはなりません。酷い場合は、まともに走ることも出来ません。

調子良く走らせるために、購入者がさらにコストを掛けなければならないのであれば、初めから高額になったとしても、『新品時の性能状態に戻す』ことをしておけば良いのに、と個人的には思います。そこまでしておけば、その車両を買う買わないは、個人の判断ですれば良いことですから。

ですから私は、誰でも安心して楽しく乗れるように、全ての箇所に手を入れて一から組み上げたい、と思っています。

なんだか今回は、つまらない話になってしまいましたね。しかも、ちょっと愚痴っぽくなりました。申し訳ありません。

次回からは、もう少し楽しい話にしたいと思います。


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