フルカスタムのXJR1300、その12・ほぼ完成
フルカスタムのXJR1300ですが、エンジンを掛けて試乗できるのも、もうすぐのところまで来ました。残された作業を急ピッチで進めます。
まずは、ブレーキやクラッチのオイル交換とエア抜きです。
ブレーキ、クラッチ共にホースにはオイルは入っていない状態です。オイルタンクのダストをキレイにクリーニングした後、オイルを入れてエアが出なくなるまで抜いていきます。
Fブレーキとクラッチは順調に進み、レバーを握った際の手ごたえも確認しました。しかしRブレーキは、十分にエア抜きをしても踏み応えがありません。ブレンボキャリパーのエアの抜けが悪いのかと思い、外して位置や向きを変えてエア抜きしましたが、改善する気配がありません。
オーナー様に聞いたところ、以前から踏み応えが無く、ブレーキランプも点かない状態だった、とのこと。キャリパーは新品ですので、原因はマスターシリンダーしか考えられません。急遽、新品に交換することとなりました。
とはいえ、部品は発注しても、すぐには届きません。また作業がストップしてしまいます。仕方ありません。ここまで来たのですから、慌てずにやっていきましょう。
部品が来る前に、古いマスターを取り外しておこうと思い、ヘキサゴソケットをボルトの頭に掛ける際、ちょっと嫌な予感がしました。このボルト、ナメている・・・?
何度もボルトの脱着が行われたのでしょう。ヘキサゴンソケットを入れても、トルクが全く掛かりません。ソケットだけが回ります。はい、ボルトが終わっています。
もう使うことの無いボルトですから、外すために切れ目を入れました。タガネで一発、かましてやります。意外と簡単に回りました。まあ、この状態ですから、締める際にもトルクを掛けることが出来なかったのでしょう。
後日、届いたブレーキマスターを取り付けて、再度エア抜きをしました。今度はちゃんと踏み応えも復活し、ブレーキスイッチも交換したので、ランプの点灯も問題なくなりました。もちろん、固定ボルトも新品に交換です。
これで、安心してRブレーキを使うことができます。
Rブレーキのマスターと同時に、メーターのインジケーター部も入荷しましたので、メーターを組んでいきます。
電源を入れて、各作動をチェックします。前回チェックし、インジケーター以外は問題ないことは分かっていますが、念のため確認します。
メーターが終われば、いよいよエンジンの始動です。
まずはエンジンオイルを入れて、クランキングします。オイルを入れた後にいきなりエンジンを掛けることは、絶対にしません。
XJR1200の時代から、もう20年以上、エンジンをバラしたり組んだりしてきました。このクランキング作業は、エンジンを組んだ後の、一つの儀式のようなものです。
オーバーホールして組み立てる、ということは、必要箇所にはオイルを塗布して組んでいるとはいえ、エンジンオイルが全く入っていない状態です。オイルを入れてもオイルパンに溜まるだけで、エンジン各部には回ってはいません。その状態でいきなりエンジンを掛けるのは、怖くてできません。
ですから、まずオイルを入れたら、エンジン各部にオイルを回すために、プラグを付けない状態でセルを回します。こうすることによってオイルポンプが回り、オイルを各部に送り出します。十分にオイルポンプを回した後、初めてエンジンを掛けるのです。
昔のレース用エンジンは、セルモーターは取り外していました。今のようなRタイヤを回転させるスターターも、ありませんでした。ですから、セルボタンを押してオイルポンプを回す、ということも出来ません。
では、どうやってクランキングさせていたか・・・
ギアを4速とか5速に入れ、ひたすら走るのです。さすがに一人ではシンドいので、近所の誰かに頼んで、後ろから押してもらいます。
100メートルの往復くらいはしたでしょうか。きっと、若かったから出来たのでしょうね。今なら、なんとか無い頭を使って、押さないで済む方法を考えます。まあ今では、スターターも安く購入できるようですから、このような遊びには必需品かもしれません。
エンジンオイルを回した後、いよいよエンジンの始動です。何十回やっても、一番緊張する一瞬です。
セルボタンを押すと・・・
そんな緊張をよそに、あっさりとエンジンは掛かりました。キャブレターが古いので心配していましたが、問題なさそうです。
排気漏れやオイル漏れ、異音がないかをチェックします。全て問題ありません。
一旦エンジンを止めてプラグを外し、コンプレッションを測定します。圧縮はどれほど回復したのか、一つの目安になります。
全ての気筒で、11.0~12.0という結果が出ました。圧縮比を上げるような面研磨もしていませんので、非常に良好な数字です。
あとは外装パーツを付ければ、試乗することができます。楽しみです。