フルカスタムのXJR1300、その3、キャブレターとプッシュレバー

フレームまで塗装するフルカスタムのXJR1300ですが、エンジンを分解する前に、取り外したキャブレターやパーツの清掃をします。

キャブレターやクラッチのプッシュレバー、その他エンジンマウントパーツなどは、エンジンのオーバーホール中はしばらく保管することになります。組み付け時に汚れを落とすなどの手入れをするのではなく、すぐに組みつけられるよう、保管前にクリーニングしておきます。


キャブレターのクリーニング

取り外した1999年式のキャブレター

取り外した1999年式のキャブレター

XJR1300のキャブレターは、何度か仕様変更されていますが、インジェクションに変更される前ですから、どれも古いことには変わりありません。この車両の正確な走行距離は分かりませんが、取り外したキャブレターは、結構汚れています。

本来であれば、全てのゴムパーツやガスケット類は交換したいところですが、Oリングやガスケット類だけで、簡単に2~3万円のパーツ代が掛かります。初期のタイプでは、ダイヤフラムが1万円、ニードルバルブセットが5千円します。全て4つ必要ですので、これらを交換しようとすれば、さらに6万円掛かる計算です。

しかも、連結部まで外さなければ交換できないOリングもあります。こうなると、キャブレターのオーバーホールだけで、工賃も含めれば10万円以上も掛かることになります。

純正キャブレターに特別のこだわりがあるなら別でしょうが、私はそこまでのコストと手間を掛ける価値が、純正キャブレターにあるのだろうか…、と思っています。

とはいえ、オーバーホールしたエンジンに、取り外したままの汚れたキャブレターを付ける訳にはいきません。ですから、必ずある程度のクリーニングはしています。

キャブレターのクリーニング

キャブレターのクリーニング

フロート内のパーツやダイヤフラムなどを外していきます。外観パーツやネジ類を洗浄していくだけで、これだけの汚れが落ちます。キャブレター本体は、キャブクリーナーを十分に各通路に吹いた後、エアブローして異物や汚れを飛ばします。

全てのOリング類やガスケット、パッキン類を交換している訳ではありませんし、連結部まで外してクリーニングしている訳ではありませんが、通常であればこの作業だけでも、十分に調子良くなるものです。

問題なのは、保存されていたキャブレターの場合です。実動車であれば、少なくとも走行していた訳ですから、調子良かったのか悪かったのかが分かりますし、直前までの走行実績もあります。

しかし保存されていたキャブレターの場合、取り外す直前の様子は不明です。問題があったのか無かったのか、どんな調子だったのか、全く分かりません。またガソリンを抜いてクリーニング後に保管されたのか、もしくは取り外しただけで保管したのかにより、内部の様子も全く変わってきます。

ガソリンを抜かず、クリーニングもされないまま長期間保存されたキャブレターは、中に残ったガソリンが変化し、各部の通路に悪影響を及ぼします。そうなると、簡単に調子良くはなりません。できれば、オーバーホールもしたくありません。調子良くすることが非常に大変なことが、よく分かっているからです。

クリーニング後のキャブレター

一通りのクリーニングも終わり、組みあがりました。外観も出来るだけブラシ等でキレイにしました。クリーニング前と比較すると、格段にキレイに見えます。この状態で袋に入れて、しばらくの間、保管します。

15~20年も経過したキャブレターを調子良くしようと思うのであれば、やはり最低限のパーツ交換はしたいところです。今だけエンジンが掛かれば良し、というのであれば話は別ですが、今後も調子良く乗りたいのであれば、最低限のパーツ交換をお勧めします。

純正キャブレターにそこまでコストを掛けたくない、という方は、レーシングキャブレターの購入をお勧めします。純正キャブレターは新品では購入できませんが、レーシングキャブレターはまだ新品を入手することができます。

市販車がインジェクションに変わった現在では、新型キャブレターが作られるということは、おそらくもう無いでしょう。現在市販されているレーシングキャブレターが、最後のレーシングキャブレター、という事になります。

いつまでメーカーが市販するのかは分かりませんが、長く製造販売して欲しいものです。

純正キャブレターの調子が悪くてお悩みの方は、是非一度、ご検討くださいね。


クラッチのプッシュレバー

クラッチのプッシュレバーは、使い続けるとオイル漏れを良く起こします。したがって、定期的なメンテナンスや交換が必要なパーツです。

エンジンを降ろすには必ず取り外すパーツですので、最低でもシール交換はしたいところです。高価なパーツではありませんので、腐食が酷い場合には、問答無用で交換になります。クラッチが切れなくて出先で走行不能なんて、誰だってイヤですからね。

ピストンを取り外したプッシュレバー

この車両のプッシュレバーは、キレイな状態でした。ここがオイル漏れを起こしている車両では、塗装の剥がれや腐食が発生しているものですが、外観もまだキレイです。おそらくオーナー様が入手される前に、新品に交換されたものと思われます。

シール類を交換し、ピストンを軽く磨きました。しばらくは、これで問題なく走れるでしょう。


エンジンマウントパーツ

エンジンのマウントパーツなんて、エンジンを降ろさない限り、取り外されることはありません。当然、汚れています。これらのパーツも洗浄した上で保管します。

エンジンのマウントパーツ

洗浄後のエンジンのマウントパーツ

洗浄液に浸けてブラシで洗いますが、これらのパーツ洗浄だけで、洗浄液がこれだけ汚れます。

普段は取り外されることのないパーツですから、この際キレイにして組みたいものです。特にボルト類は、トルク管理するためにも洗浄は必須作業です。

エンジンをオーバーホールする、ということは、その他のパーツも取り外すことになります。エンジンを降ろして軽くなっているのですから、スイングアームやステアリングステムも取り外しやすい状態です。

小まめにメンテナンスをされている方でも、手が行き届かない箇所はあるものです。せっかくエンジンを降ろしてオーバーホールするのですから、その際に各部の手入れやメンテナンスも行えば、今後も調子良く走ることができます。なにより、トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。

安心して乗り続けるためには、時には手を掛けてあげましょう!

SOHC製スペシャルピストンですが、まだ1セット残っています。
興味のある方は、お早めに。