フルカスタムのXJR1300、その2、車両分解

フルカスタムのXJR1300ですが、全てに手を入れますので、当然ですが全てのパーツを取り外していきます。

外装パーツを外したら、いつものエンジン下ろしです。いつも使っている専用エンジン台ですが、木製で見た目はショボいですが、活躍してくれています。これがあると、重いXJR1300のエンジンも一人で積み降ろし作業ができます。

エンジンを下ろしたところ

この木製エンジン台ですが、建築関係の仕事をしている後輩君が手作りしたもので、これで3台目です。各部が改良されて今の形になりました。

エンジンを一人で降ろすには、マウント部をフリーにしたエンジンを台に載せ、高さを上げてスライドさせ、フレーム部から横に抜き取る必要があります。積む時はその逆の作業になりますが、フレームとエンジンのマウント部を合わせるために、高さの微調整が必要になります。

この木製エンジン台、建築現場の廃材で作られてはいますが、それらの機能を全て備えている優れものです。素晴らしい!T君、今度はもう少し強度のあるスチール製で作ろうよ!手伝いますから♪


スイングアームピボットの作動不良

私がオーバーホールさせて頂いているXJR1300は、初期の頃の車両が多いですが、スイングアームピボットが酷いことになっている車両は、結構な割合であります。

スイングアームは、Rサスペンションが伸び縮みする度に、ピボットを中心に上下に動きます。でも役目は、それだけではありません。

オートバイは、皆さん良くご存知のように、右手でアクセルを開ければ前に進みます。では何故、前に進むのでしょう。「そんなの、当たり前じゃん!」。はい、おっしゃる通り、当たり前です。普段はそんな理屈など考えずに、誰でもオートバイに乗っていますから。

右手を捻れば混合気が燃焼室に送り込まれ、爆発してエネルギーを発生します。それがクランクシャフトの回転となり、ミッションを介してフロントスプロケットを回転させ、チェーンを引っ張ります。そのチェーンがRスプロケットを引っ張ることによってRタイヤが回転し、オートバイは前に進みます。

Rタイヤの回転が、なぜオートバイ全体を前に進めることになるのか・・・。

それは、スイングアームがピボット部でフレームに繋がっているからです。加速時には押し、エンジンブレーキ時には引く力が、スイングアームピボットに負担を掛けます。

このようにスイングアームピボットには、上下運動するだけでなく、前後にも常に大きな力が掛かっています。昔の鉄フレームでも、現行のスーパースポーツでも、スイングアームピボット回りはフレームが明らかに頑丈になっていることからも、その事が伺えます。

そんな重要なスイングアームピボットですが、残念ながらあまり気にされる事はありません。つまり、ノーメンテナンスの事が非常に多い箇所です。

どんなにコストを掛けたオートバイでも、どんなにハイパワーのエンジンを積んでいても、どんなに高価なサスペンションを組んでいても、スイングアームピボットがノーメンテナンスであれば、サスペンションの動きも悪くなり、パワーを伝える時にもロスが発生してしまうことになります。酷い場合は変形します。

スイングアームピボットシャフトが抜けません!

通常は、多少傷んでいても、ちょっと叩けばスイングアームピボットシャフトは抜けるものです。でも、この車両は頑固でした。ちょっと叩いたくらいではビクともしません。鉄ハンマーで叩いても、ダメです。

仕方ないので、フレームごと横にして、シャフトを当てて思いっきり叩くこと10回、やっとスイングアームピボットシャフトが抜けました。

抜いたシャフトとカラー

錆びて動かないベアリング

カラーとシャフトは、サビや腐食でもう使い物になりません。おまけに曲がっています。サビを落としても、シャフトはカラーにスムーズに入りません。ベアリングは、役目を全く果たしていません。とても残念な状態です。

このような状態になる大きな原因は、保管状況による影響が大きいでしょう。屋内保管されている車両では、あまり起こりません。

走行距離だけでなく、古い車両をお持ちの方は、是非一度メンテナンスすることをお勧めします。中古車を購入された場合は、以前のオーナーの保管状況やメンテナンス頻度は分かりません。大きなトラブルが発生する前に、チェックやメンテナンスは必要でしょう。


足回りパーツの分解

分解した足回りパーツ

フロント回りやスイングアームまで取り外し、フレーム単体にした後は、製作物の準備です。

アンダーブラケットはR1のスタンダードを使用しますが、ステムシャフトはXJR1300に合わせて製作し、打ち換える必要があります。

トップブリッジは、ハンドルポスト用の穴を開ける必要があります。キーシリンダーを取り付ける必要もあります。しかしR1のスタンダードトップブリッジでは、外観も含めてそれらが上手く出来そうにありません。オーナー様がそこで男気を見せてくれました。「じゃあ、トップブリッジも製作してもらいましょう!」

寸法取りもありますので、XJR1300とR1のアンダーブラケット・トップブリッジ一式を、製作依頼するショップに送ります。出来上がりが楽しみです。


フレームカット

私のXJR1300は、必要無くなったフレームのステーをカットしています。無駄なものですから、取り外せばスッキリしますし、軽量化にも繋がります。ただ、タンデムステップを留めるステーだけは、切除しなければ良かった、と後悔しました。

一人で乗っている時には全く不要なものですが、そのままだと車検証の乗車定員が1名になってしまいます。ちょっとやり過ぎだったですね。

でも、センタースタンドの取り付けステーやオイルクーラーステーの円形部は、キレイに削り取りました。塗装もしましたので、まるで新車の時からそうだったかのように、キレイに仕上がりました。

今回のオーナー様もそれを希望されましたので、フレーム単体の状態にした後、余分なステーを切除しました。

センタースタンド取り付けステーの切除

オイルクーラーステーの切除

センタースタンド取り付けステーをここまでキレイに切除するのは、思いの他大変です。でも、随分とスッキリしますし、段差で当たる心配も無くなります。今後、Rタイヤを浮かせる必要がある場合は、スイングアームで持ち上げるスタンドがあれば便利でしょう。

錆びたマフラー取り付けナット

ひび割れたインシュレーター

ちなみに上記の写真は、マフラー取り付けナットとインシュレーターです。エキパイを止めるナットは、やっと外しました。1ヶ所は、ナットとスタッドボルトが固着し、スタッドボルトごと抜けました。でも、外せるだけマシです。抜けずに内燃機加工屋さんに依頼することも、多々あります。

インシュレーターは、長年の劣化で、4つ共に大きくひび割れしています。これらのパーツやネジ類は、残念ながら再使用することはできません。ゴミ箱行きとなります。

古いオートバイやパーツが劣化するのは、仕方のないことです。当然、機能や性能もそれに伴い、劣化してきます。でも私たちのオートバイは、仕事ではなく趣味の乗り物です。ただ動けば良い、というのでは、あまりにもつまらない・・・。

XJR1300は、まだまだパーツが供給されています。落ちた機能や性能を取り戻そうと思えば、オーナー様の意思で出来ることです。大きなトラブルが発生する前に、楽しくオートバイに乗るために、自分好みのオートバイにするために、時々でも良いですので、人の手を入れてあげる必要があります。