ダンボールに入ったエンジン、その10、フルード交換と増し締め
段ボール箱十数個に入ってやってきたバラバラなXJR1300のエンジンですが、車体に積んで、もう少しでエンジンを掛けられるまでになりました。
クラッチ
XJR1300のクラッチは、油圧式です。左手でクラッチレバーを握ると、プッシュレバーのピストンが動き、プッシュロッドが押し出されて、クラッチが切れる仕組みです。
多くのユーザーの方は、ブレーキには気を使うものの、クラッチは放置プレーです。オイルが汚れているのは当たり前で、プッシュレバーからオイル漏れを起こしている車両も少なくありません。
そこでまず、プッシュレバーのオーバーホールをしようと、持ち込まれたダンボール箱からプッシュレバーを取り出しました。
持ち込まれたプッシュレバー
写真でも分かるように、非常に残念な状態です。それでも、ピストンを取り外そうと試みましたが、ピクリともしません。したがって、オーバーホールすることも出来ません。再使用不可となり、ゴミ箱行きです。
そのことをオーナー様にご連絡すると、「もう一つありました。」と送ってくれたのが、こちらのプッシュレバーです。
2個目のプッシュレバー
ブリードスクリュー
程度は一つ目と比べると、だいぶ良さそうに見えますが、こちらもピストンが固着しており、取り外すことが出来ません。エア抜きのためのスクリューも、このように残念な状態です。
クラッチのプッシュレバーは、日帰りツーリング1日でさえ何百回以上も動く、重要なパーツです。ここに重大なトラブルが発生すれば、ツーリング先から帰ってくることもできなくなります。
以前のご相談に、そのような事例がありました。クラッチを切ることが出来ず、出先で走行不能になった、というものです。原因は、プッシュレバーのピストントラブルでした。
1万円ちょっとで購入できるパーツです。酷く痛んでいる場合は、躊躇無く新品に交換したいところです。
今回はオーナー様の男気で、新品に交換することとなりました。
フルード交換
ということで、新品のプッシュレバーを取り付けたら、エア抜きも兼ねてフルード交換です。
フルードがほとんど入っていない状態で、パーツとして持ち込まれましたが、まずはマスターシリンダーをクリーニングします。
クラッチマスターのクリーニング
プッシュレバーからのエア抜き
マスター側のクリーニングが終われば、フルードを入れてプッシュレバーからエア抜きをします。新規に入れたキレイなフルードが出てくるようになり、クラッチを握って重さを感じ、切れることが確認できれば、エア抜き作業は終了です。
ついでに、ブレーキのフルードチェックとエア抜きも、やってしまいましょう。
Fブレーキのマスターシリンダー
Fブレーキのマスターシリンダーです。オイルが酷く汚れています。問答無用でフルード交換ですね。
溜まっているヘドロ状の汚れ
フルード交換の終わった状態
フルードを抜いていくと、底にヘドロ状のものが溜まっています。これを取り除いてキレイにした後、新しいフルードを入れていきます。キレイなフルードが両側のキャリパーから出てくるようになれば、フルード交換は終わりです。
ブレーキレバーを握って、タッチを確かめます。ホイールを回転させて、ブレーキの効き具合も確認します。
その他のチェック
あれこれ車体をいじっていると、カラン…、と何かが落ちました。よく見ると、大きなナットです。
落ちた大きなナット
スイングアームピポッド
なんと、スイングアームピポッドシャフトのナットでした。車体のチェックや増し締めを、エンジンを掛けた後にしようとは思っていましたが、すぐにやることにします。
いくらオーナー様が組んだ車体とは言え、私も試乗しますし、何かが起きてからでは遅いですから。忘れないうちに、ステム回りやスイングアーム回りなど、一通りチェック・増し締めをします。
オーナー様が組んだ際、仮締めの後、ついウッカリ…となってしまったのでしょうが、こんな箇所もありました。
トップブリッジのナットが浮いています。
トップブリッジのナットが締まっておらず、浮いています。このナットだけでなく、トップブリッジ下の2ヶのナットも増し締めします。その他、フロントアクスル、リアアクスル、チェーンライン、ブレーキキャリパー、ステアリングステムなどを確認していきます。
これで安心して試乗することができます。あとは、キャブレターだけです。
このキャブレター、問題がありそうで、少し気が重かったのですが・・・
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