TMRキャブレターいろいろ・・・
Wossnerピストンを組み込んだお客様のXJR1300ですが、装着されていたTMR-MJNがご臨終な為、TMR40パイを新品購入することになりました。
前回の記事は、こちらです。
「Wossnerピストンを味わうはずが・・・」
XJR1300用の在庫が無かったのですが、少しばかり無理を言って他車種用をピッチ変更してもらい、なんとか1週間後には私の手元に送られてきました。これでセッティング出しをすれば納車できます。I様、お待たせしました。
キャブレターいろいろ・・・
お客様用にTMRを購入する際に、私も新品を一つ購入することにしました。
今、私のバイクに装着されているTMR-MJNは、私の物ではなく、ちょっと友人と交換していただけです。しかし、貸し出していた友人の事故により・・・。私のTMR41パイは、帰らぬ部品となりました(涙・・)
購入できるうちに一つ買っておきたかったので、今回は良い機会です。思い切って久しぶりに新品キャブレターの購入です。ついでにJNやPJなどのセッティングパーツも、何種類か購入しました。空燃比計で試してみたいこともありますので…
新品キャブレターが二つ届いたら、作業台の上にTMRが4つ並ぶことになりました。
このTMR-MJNが、お客様のマシンに装着されていたキャブレターです。トップカバーが赤色ではないのは、塗装が汚かったので剥離したからだそうです。オークションで入手されてから5年間、炎であぶられた痕跡も残る痛々しい姿で、よく頑張りました。ご苦労様でした。
入手経路や現在の症状を考えれば、修理に出すのは得策とは思えません。ですからこのキャブレターは、これでご引退です。
こちらは、私が使用していたTMR-MJNです。特に不具合があった訳ではありません。ただフロートチャンバーからガソリンが少しニジんでいましたので、取り外したついでにオーバーホールをして、Oリング類やガスケットを新品に交換しました。
なぜTMRなのか・・・
ミクニ製キャブレターでは、本家のTMRよりもヨシムラ製TMR-MJNの方が、圧倒的に多く市場に出回っている気がしています。中古品が売買されるオークションでも、本家のTMRはほとんど出回っていないのに対し、ヨシムラ製TMR-MJNは頻繁に出品されています。
なぜTMR-MJNの方が、それほど数多く売れているのか・・・
使用した経験から考えてみました。
- ヨシムラ、というブランド力
- ポン付けでも、そこそこ走る
- 急開時のレスポンス
- 燃費の良さ
- 扱いやすさ
ヨシムラ製TMR-MJNは、確かに良く考えられています。私は長い間、TMR41パイと40パイを使っていました。その後、友人と交換してTMR-MJNも使用していました。
TMR-MJNの特徴を一言で言うと、「扱いやすい」という事になるのではないか、と思っています。TMRほどセッティングにシビアではなく、ピンポイントで合わせなくてもそこそこ走れます。許容範囲が大きい、ということです。
キャブレターの特性として、アクセルの急開時に薄くなる、という症状があります。その対策として、TMRやFCRには加速ポンプが装備されています。しかしそれでも薄くなります。
トルク感が無くなり、大きくセッティングがズレている場合は、息つき症状も出ます。レーシングキャブレターを公道で使用する際、最もセッティングが難しいところです。
しかしTMR-MJNでは、その構造上、エンジンの発生する負圧に即座に反応しますので、レスポンスの良さが持続できる傾向にあります。またTMRよりも燃費が向上します。
ご自身でセッティング作業をしないユーザー、モアパワーを求めないユーザー、お手軽感を求めるユーザーには、そういった辺りが使いやすいのかもしれません。
一方で、TMRの大きな特徴である、トルク溢れる胸のすく様な加速感とパワー感は、TMR-MJNでは今ひとつの感じがします。また、一度でもセッティング作業をした事のある方ならお分かりでしょうが、ピンポイントで合わせられない・・・
許容範囲が大きくて、シビアにセッティングを合わせなくてもそこそこ走れる、という事は、全体に少しボケた印象を感じさせます。ですから、多くのユーザーに支持されている扱い易さは、モアパワーを求めるユーザーやレーシング志向のユーザーにとっては、物足りなさを感じさせます。
ピークパワーを求めるなら、断然TMRです。キャブレター車で行われているレースの世界でTMR-MJNを使用しているユーザーは、ほとんどいません。ミクニ製キャブレターのほとんどはTMRです。ボディはTMR-MJNでも、JNは従来タイプに変更して使用しているユーザーもいるくらいです。
という訳で、私が購入するのであれば、誰が何と言おうとTMRキャブレターです。
新品のTMRキャブレター
これがお客様用のTMR40パイです。一度分解し、各部をチェックした後、設定を確認しながら組み立てました。
今回はちょっとしたトラブルもありましたが、これでやっとWossnerピストンの走りを味わうことができます。