オイルポンプの破損
オートバイに長く乗っていると、いろいろなトラブルに遭遇します。ましてやレースなんてやっていれば、なおさらです。
XJR1200、1300でしか経験したことのないトラブルの一つが、オイルポンプの破損です。
何故、オイルポンプが・・・
以前に自分のエンジンから取り外し、何故か保管していた二つのオイルポンプです。よく見ると、同じ部分が同じように破損しています。どこだか分かりますか・・・?
アップにすると、破損具合が良く分かります。スプライン部の下が三分の一ほど無くなっています。この症状がもっと進むと、スプライン全てが無くなります。そうなると、残念ながらアウトです。実際に私は、2度もその経験をしています。
保管しておいたオイルポンプ、二つ共に同じ状態です。
オイルポンプのスプライン部には、このようにギアが取り付けられます。クランクシャフトの回転がスプラインに取り付けられたこのギアに伝わり、オイルポンプが回転する仕組みです。
回転することによって、内部からオイルを送り出しています。ですから、スプライン部の破損によってギアが回転しなくなれば、オイルポンプは作動しません。つまり、オイルがエンジン内部に回らなくなります。
オイルが回らない ⇒ 焼き付きを起こします。ほんの少しの違和感でエンジンを即座に止めたとしても、メタル交換は免れません。「何かエンジンの回転が重くなって、回らなくなってきた。」、ここまできたら、クランクシャフトとコンロッドは、使い物にならなくなっています。
そんな状態になってもエンジンを回し続けたら・・・
おそらくエンジン全損です。
オイルポンプ破損の原因とは?
しっかりとした検証はしていませんが、大方の予想は付いています。その対策をした後は、オイルポンプのスプライン破損は、一度も起きてはいません。
この改造は、サーキット走行専用車両にしか行わないものですので、公道しか走行しない一般のユーザーの皆さんには、おそらく起こらないトラブルだと思っています。
私の以前のレーサーでもそうでしたが、XJR1300をレース専用車両にする場合、軽量化とピックアップ向上の為に、ジェネレーターとセルモーターを取り外すことがあります。
ジェネレーターとセルモーターを取り外すということは、クランクケース内部にある噛み合う幾つかのギアや、クランクシャフトとワンウェイクラッチをつなぐハイボチェーンも、不要になります。不必要なものは取り外すのがレースでの鉄則ですから、それらも取り外します。
その際の、作業の一環として行ったある改造が、おそらくオイルポンプ破損の原因だと考えています。
その答えに行き着くまでに、私は2度、エンジンを焼き付かせました。2度共に、スプライン部は完全に無くなっていました。そうなると、色々と原因になりそうな事を探し、様々な対策も施しましたが、焼き付きだけは避けたいので、年中オイルポンプのチェックをするようになりました。その際に見つかり、交換したオイルポンプが、写真のものです。
ちなみにオイルポンプ内部は、このようになっています。それほど複雑な仕組みではありません。しかし、シャフトだけでのパーツ提供はありません。あくまでもポンプアッセンブリでしか、部品は出てきません。ですからスプラインが破損したオイルポンプは、丸ごと交換することになります。
なお写真でもお分かりのように、スプライン部は細く、強度も取り付けられるギアに比較して、強そうには感じられません。ですから、エンジンをバラした車両については、このオイルポンプのスプライン部は必ず細かくチェックします。
念には念を入れて、ということです。オイルポンプ破損でエンジン全損なんて、シャレにもなりませんからね。
ちなみに今まで、公道走行車両でこのオイルポンプが破損していた車両は、私は1台も見た事はありません。だからといって、起こりえないトラブル、ということではありません。絶対に大丈夫だとも、もちろん言えません。強度的に強くないことは、既に分かっているのですから。
走り方やエンジンの回し方等で、負荷の掛かり方は全く異なってはきますが、時間や距離を重ねたXJR1300では、チェックしたい項目の一つと言えます。