究極のカスタムマシンたち
オートバイをカスタムする、チューニングする、セッティングする、イジる・・・巷ではいろいろな言われ方をしていますが、私個人的には、「造る」という言葉が好きです。
「造る」という言葉には、何かマニアックな響きがあります。マニアックでレーシーなイメージを感じるのは、私だけでしょうか・・・
(RSカタクラ製 オリジナルフレームのTOTレーサー)
カスタムとは?
http://garagexjr.com/index.php?mind
このページにも書いていますが、カスタムとは、何らかの改造(カスタマイズ)をする行為のことを指し、チューニングとはカスタマイズの中でも性能に関する箇所を改造することを指します。エンジンや足回り等の機能パーツの改造がチューニングに当る、ということです。
まあそんな言葉の詳しい意味は、ここではあまり関係ありません。私は個人的には、『カスタムとは、ある目的を持ってカスタマイズすること』だと思っています。
目的は、人それぞれです。ただカッコ良くしたい方にとっては、ドレスアップパーツや塗装でのカラーリングの変更でも、十分に満足できるでしょう。機能性を上げたい方は、高価な機能パーツを幾つも取り付ける場合もあるでしょう。
私が目的としているカスタムとは、XJR1300に限って言えば、下から十分なトルクあり、2速3速でアクセルを開けた時に強大なトルクで加速するエンジン、ワインディングでスポーツする際に良く止まるコントローラブルなブレーキと車体を安定させるサスペンション、これらを実現することです。
簡単に言えば、適度なパワーとそれに見合った足回り、ブレーキを、XJR1300に与えることと言えます。
シングルレース
(RSイトウ製 オリジナルシングルレーサー)
1980年代後半から1990年代にかけて、シングルブームが起こりました。各地のサーキットでも、シングルレースが盛んに行われた時代です。単気筒や2気筒でそのままスポーツできるオートバイが、ドカティくらいしか無い時代です。
その中に、エキスパートシングル(ES)、エキスパートツイン(ET)というクラスがありました。エキスパートシングルは、単気筒であれば何でも良くて、エキスパートツインは2気筒であれば何でも良い、といった、物凄く分かりやすいレギュレーションです。
レースは盛り上がり、メディアもこぞって取り上げるようになりましたので、多くのショップやコンストラクターたちが本気で取り組んできました。
今の時代のように、ポン付けパーツ等と言うものは殆どありません。現在のレースのように、皆が同じパーツを使う、といったこともありません。自由な発想と知恵と工夫で、それぞれがマシン造りをしていました。
非常に盛り上がっていましたので、走るライダーもレベルがどんどんと高くなっていきました。現在の「イデミツ チームアジア」の監督や「ヤマハレーシングチーム」の監督も、若かりし頃に走っていました。
そのような状況ですから、ライダーの要求は高くなり、レベルアップも激しくなります。ラップタイムも上がり、もはや草レースの域を超えた感さえしたほどです。
幸運にも私は、そんな時代に、何度もそのようなマシンで走る機会に巡り会えました。先日行った走行会を主催するRSイトウの社長とは、何年間もシングルレースを一緒に戦いました。
(参考:http://garagexjr.com/index.php?QBlog-20170817-1)
そんな何でも有りのシングルレーサーを造ろうと思えば、まずはフレーム選びからです。どの有力チームも、思い思いのアルミフレームにチューンしたシングルエンジンを載せていました。サスペンションも様々でした。
私の記憶では、GSX-R400のアルミフレームに、TZのフロントフォークだったと思います。当然、車重の重くなった車体にTZのフォークは、そのままでは走れません。バネを変え、オイルや油面を変え、試行錯誤の連続です。どこに何を使ったらどうなるか、なんて、やってみなければ誰にも分かりません。だから、良いと思ったことをやってみるしかないのです。
オートバイが何とか形になって走れるようになった後は、細かな調整の連続です。ほぼ全てが手作りですから、前後の重量配分から始まり、スイングアームの垂れ角、フロントフォークの突き出し量、バネレートの変更、減衰調整、ファイナルレシオ、キャブセッティング・・・やることは山積みです。
ですが、シングルエンジンの振動でフレームに度々クラックが入ります。クラックが入れば走行を中止して、帰ってエンジンを降ろし、フレームを逆さまにして慣れない溶接作業で修正します。
なぜ、こんなにも面倒臭いことをしてまで、このレースをしていたのか・・・?
それは、楽しいからです。レース自体が楽しい上に、自分たちで『オートバイを造る』という楽しみもあったからです。この時代の経験が、私の『オートバイを造る』ということの原点になっているような気がします。
昔のコンストラクター
幸いにも私の身近には、まさしくコンストラクターと呼べる人が、他にもいました。RSカタクラの社長です。
(コンストラクターとは、レースの世界で言えば、レーシングマシンの製造者のこと。)
例えば、ヤマハには「XZ550」という、シャフトドライブを採用したマイナーな車種がありました。このエンジンをボアアップし、FZR400のフレームに積んでチェーンドライブ化したレーサーに、何度か乗せて頂きました。まさしく『造った』マシンでした。
このレーサーには、現ヤマハレーシングチームの監督も、私の後に乗りました。あの頃は、皆そうやって経験を積んで、大人になっていったんですね。
他にもTRX850のレーサーにも、乗らせて頂きました。あの平忠彦さんと一緒にレースを走りました。当然、追いつける訳もありませんが・・・
(RSカタクラ製TRX850レーサーで、グリッドにて。)
(レース中の写真をBSのカレンダーに使って頂きました。)
そんな、『オートバイを造る』ことが大好きな社長のおかげで、今のTOTレーサーがあります。FZS1000FAZERに、R1のエンジンが積まれたマシンです。言葉にすれば簡単ですが、そう簡単に積める訳ではありません。
エンジンも、何度も積み替えられています。フロントフォークやマフラー、エンジンの年式や仕様など、何度も変更されています。
乗り手としては、その都度、セッティングを一からやり直さなければなりませんが、そんな作業も楽しいものです。
今のオートバイショップやレース屋さんは、そのようなマシン造りは、あまりしないでしょうが、一昔前は、そのような職人かたぎのコンストラクターは沢山いた気がします。
ある時、私のTOT(テイストオブツクバ)レーサーを見て、後輩にこんな事を言われたことがあります。
「高野さんのバイクって、フェーザーに見えますけどR1ですよね。」と。あながち間違ってもいません。でも周りを見れば、ホーネットに見えるCBR、ニンジャに見えるZZR、刀に見えるGSF、FZに見えるR1・・・そんなマシンばかりです。
でも、それでいいじゃないですか。レギュレーションの範囲内で、速く走ることが目的ではない古いバイクを、試行錯誤して速く走らせる・・・これが楽しいんですから。
ライダーという走る立場で言えば、現行のオートバイと比べ、やるべきことは山のようにあります。コストやエネルギーも必要です。自分たちで造り上げる訳ですから、時には痛い思いをすることもあります。
コンストラクターという造る立場では、経験、知識、知恵、工夫といった多くのエネルギーが必要です。面倒臭い作業も、山のようにあります。
でも、ライダーもコンストラクターも、そうやって一生懸命になって、本気で遊ぶ事が楽しいんです。楽しくて仕方ないのです。
このような経験を長くさせて頂いたおかげで、オートバイを造るという楽しみを感じることができました。もちろん、乗るのが一番楽しいのですが、それと同じくらい『造ること』が楽しいと感じられるのです。
私が乗らせて頂いた数々のカスタムマシンや、一緒にレースを走ったカスタムマシンたちが、今思えば究極のカスタムマシンなのかな、と思っています。それらを経験できたことは、とても幸せなことです。
そのような経験があるからでしょうか、ポン付けパーツをただ付けただけのマシンは、造り上げたマシンとは思えないのです。せめて、「自分だけのカスタムマシン」と言うのであれば、自分に合った味付け、セッティングをして、あなたオリジナルに仕上げて欲しいのです。
造るのはショップやコンストラクターの仕事ですが、セッティングはライダーの仕事ですから。
オンリーワンのXJR1300カスタム
もしあなたが、自分だけのXJR1300を造りたい、オリジナルのXJR1300にしたい!とお考えなら、まずはお気軽にご相談ください。
オーバーホールからフレーム補強、他社パーツの流用、マフラー製作、エンジンチューニングなど、どのような事でもご相談に乗ります。