チューニングバイクでのタンデムツーリング

YAMAHA XJR1200改スペシャル

何かしらの改造をすることを、一般的に『カスタム』と言っていますが、その中でも、性能に関する改造のことは『チューニング』と言われ、外観の変化だけを目的とした「カスタム」とは、分けて使われる事が多いように思います。

自分では、そのような用語の意味などほとんど気にせず、昔から『バイクをイジる』といった表現で通しています。私の回りの多くの方も、そうでした。

そもそも、性能を向上させるためにイジることが殆どでしたので、『バイクをイジる = チューニング』という事だったのでしょう。性能を向上させる、速く走る、といったことの先に、レースという世界があり、いつしかそこを目指すようになっていました。

そんなオッチャンが、レース時代のお古のパーツで造ったマシンですから、極端に偏った、多くの方には乗り難いと思われるオートバイになるのも、ある意味で仕方のないことかもしれません。


タンデムツーリング

3月後半のある日、天気も良さそうでしたので、オートバイに乗りたくなりました。前日は筑波サーキットに行きましたので、二日続けてのバイク遊びということになります。我ながら道楽者だと思います(汗・・)。

「明日、バイクに乗ってくる」と妻に話したところ、「あたしも行く~♪」となりました。年に数回のことですし、何より喜んでくれますので、一人で走るよりもペースは遅く気も使いますが、その程度のことは、何てことありません。バイクを好きでいてくれる事の方が、よほど大切です。

私のバイクは、自分でも分かってはいますが、酷く偏った作りとセッティングになっています。乗った事のある殆どの方は、「このバイクは、開けられない」、「乗れない」と言っておりましたが、私は全く気にしてはいませんでした。だって自分専用のオートバイですから、自分の優先させたいところを優先させて、楽しく乗れるようになっていれば、それでOK!なのです。

しかし、そんな愛車でタンデムすると、一人乗りでは感じなかったネガな部分が、とても大きなものに感じます。後ろに50kgの人間を乗せて、重心の変わったオートバイを、気を遣いながら走らせる訳ですから、仕方ないのかもしれません。

狭いハンドル切れ角と大きなオイルクーラー

何といっても一番のネックは、狭いハンドル切れ角です。レース時代は、もちろん気にした事などありませんでした。公道仕様にした際も、多少の不自由さはありましたが、Uターンや小回りが多少大変になる程度でした。特にUターン時は、両足を着いてバタバタと動かし、3~4回は切り返さないと、向きを変えられません。でも、そんなもの、と思えば、さほど気にはなりませんでした。

これが、ことタンデム走行となると、一人乗りの時と比べて難易度は格段に上がります。たとえば休憩後に走り出すことを考えてみましょう。

行きたい道路と垂直にオートバイを留めている時、右に行きたければ右、左に行きたければ左に、無意識にハンドルを切り、走り出します。そんな時、思っている以上にハンドルを切るものだと、改めて知りました。つまり、そんなふうに右に走り出すことが、ハンドルが切れないことによって上手く出来ないのです。

じゃあ、ハンドル切れ角をもっと広げれば良いだろう!と言われそうですが、そうすると、ハンドルを切った際にインナーチューブとオイルクーラーが干渉します。アフターパーツとして販売されている大型のラウンドオイルクーラーは、殆どが干渉ギリギリです。実際に高価なゴールドフォークにオイルクーラーが若干ですが干渉している車輌も、何度か見ています。

オイルクーラーの大型化 ⇒ フロントフォークと干渉 ⇒ ハンドル切れ角を制限する ⇒ ハンドルロックが効かない、取り回しが大変

このような図式です。まず始めの「オイルクーラーの大型化」ですが、見た目重視のカスタムであったとしても、ハンドルがよく切れて純正よりも遥かに大きなオイルクーラーという物は、残念ながらありません。見た目ではなく、発熱量の大きくなったチューニングマシンの場合は、間違いなく冷却効率を取るべきです。ハンドル切れ角の減少や取り回し難さなどは、取るに足らないことになります。

カスタムやチューニングとは、何を求めてイジるのか?によって、答えは変わってくるものです。ジムカーナのような乗り方が好みの方であれば、ハンドル切れ角の減少は致命傷です。でも、筑波サーキットでタイムを縮めたい方には、ハンドル切れ角の減少は、大した問題にはなりません。それが、一般公道を走るツーリングユースでも、『求めるものは何か?』で答えや選択肢は変わるものです。


その他の問題とは・・・?

ハンドルの切れ角以外にも、ネガな部分は幾つもあります。

オーバークール

空冷や油冷のオートバイでは、通常ではまず無いであろう「オーバークール」。ビッグラジエターの取り付けられたサーキット専用の水冷スーパースポーツ車であれば、ガムテープで水温調整をすることは当たり前ですが、空冷車のオイルクーラーにガムテープを貼るなんて、普通ではありません。

昨年の正月に、ちょっと走りたくなって近くの湖まで行きましたが、油温は60度でした。昨日のタンデムツーリングでも、70度前後といったところです。完全に下がり過ぎです。

渋滞になれば風も当たりませんので、100度を超えることも良くありますが、下がり過ぎには注意しなければなりません。春先までは、ガムテープでも貼って対処することにしましょう。

アイドリングと極低速域で不安定

ノーマル車輌のように1,000rpmでアイドリングが安定する、といったことは、残念ながらありません。これは、カムシャフトが結構ハイリフトタイプに変更されていますので、仕方のない事です。

走り出せば、そう気にする事もないのですが、やはりアイドリングと動き出す際は、ちょっとばかり気を使います。といっても、あくまでもノーマル車と比較すれば、といった程度です。

ちなみに、私のエンジンに組み込まれているカムシャフトは、「ミハラスペシャリティ」が製作したもので、ほとんど出回ってはいません。

この記事に、カムシャフトのことを詳しく書いていますので、興味のある方は読んでみて下さい。

さすがに、渋滞の多いツーリングや都内などを走る機会が多い方には、ちょっとばかり厳しい(乗り難い)とは思います。でも、中速域からの加速感は、たまらないものがあります。

正直に言えば、ツーリングユースの方にはお勧めは出来ません。サーキットユースやレース車輌であれば、カムシャフトの変更は、その本領を発揮するでしょう。

重いクラッチ

XJR1300のクラッチは、ダイヤフラム式です。ちょっとパワーアップするだけで、まず確実に滑り出します。滑りを防ぐために私のエンジンでは、コイルスプリング式に変更しています。FCCなどで販売しています。

そのコイルスプリングを、さらに硬いタイプに変えており、その上、クラッチマスターにピストン系の大きな物を使い出してから、クラッチレバーを握るのがとても重くなりました。握力を鍛える為のトレーニングのようです。

一度、タンデムしている時、上り坂の途中で数台前の車が右折のために停車しました。当然、私も止まる訳ですが、タンデムで後ろが重く、クソ(汚い言葉で申し訳ありません・汗)重たいクラッチを半クラ操作し、公道で使用するのはいかがなものかというカムシャフトのせいで、余計に発進に気を遣う状態のオートバイを、上手く発進させることが出来ませんでした。

レースの時のスタートのようにうるさいほど回転を上げて、ちょっとだけ後ろに動いた後、やっと前に進むことが出来ました。免許取り立ての少年でも、もう少し上手に発進できるぞ、というくらい、自分でも情けなくなるほど下手な発進でした。

チューニングしていないオートバイが、ちょっとだけ羨ましくなった瞬間でした。

硬い足回り

足回りは、レースの時から多少は柔らかめにセッティングしていますが、硬いです。私が乗っても硬いです。路面が悪い場所では、サスペンションは吸収せずに跳ねるだけです。

では、柔らかくセッティングし直せば良いのですが、路面の状態が比較的良いところで、2~3速で走るスピード域では、最高に気持ちよく走ることができます。この領域が楽しいから、そこを最優先しています。

どの領域でも楽しく感じられるような設定は、まず無理でしょう。どこを取ってどこを捨てるか、ということです。

ただ、タンデムツーリングの場合は、ブレーキの掛け方もコーナリングGの掛け方も、一人の時とは違います。スピードもバンク角も、いろいろと変わってきます。ちょっとだけ、しんどく感じてしまうのです。

乗り心地

前後のサスペンションが硬いのですから、乗り心地が良いと感じる訳がありません。一人乗りでも、中途半端なスピードで走っていると、路面の凸凹を吸収していると思えない場面は、多々あります。ただ跳ねているだけです。

でも、乗り心地を優先すれば、一番楽しいと思える場面で、楽しく感じる動きにはなりません。まあ、仕方ありません。オートバイに乗り心地の良さを求めるのは、ずっと以前に諦めました。

タンデムツーリングの続き

このように、普段はしないタンデムツーリングをすると、いろいろとイジったオートバイのネガな部分が、やけに気になったりします。数年前にはタンデムしても、あまり気にならなかったのですが、なぜなのでしょうか・・・。下手になったのか、歳を取ったのか。

富士山の見えない柳沢峠にて

でも時には、ダンデムツーリングも楽しいものです。特に今回は、ちょうど桜がキレイに咲いており、走りながらたくさんの桜を見ることができました。一人だと絶対に寄らないであろうところにも、寄り道してみました。

たい焼きとコーヒーで休憩中

桜とXJR1200改

結局、いつものコースを走って帰ってきました。高速道路は使わずに、下道だけで約220kmくらいでしょうか。

次回のタンデムは、伊豆方面にでも行こうかなぁ~♪


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