XJR1300のパワーUPを数字で表すと・・・

シャーシダイナモ(ダイノジェット)等の普及により、今ではオートバイのパワーやトルク、空燃費までが気軽に測定できるようになりました。

以前は、パワーが出ているとお客さんが喜ぶから、といった理由で、実際よるも高めの数字が出るよう設定されたショップもあったようですが、現在では、そのような噂はあまり聞きません。

私自身は、ほとんどパワーチェックはしません。数馬力の違いで一喜一憂したくはないからです。そうは言っても、エンジンの出来具合を確認したり、チューニング度合いを確かめる意味では、パワーを数字で表すことは重要です。

加工されたXJR1300のヘッド

XJRは、カタログ値の最高出力は1200で97ps、1300になって100ps、となっています。今回は、私の製作したエンジンや身近な知人たちのエンジンが、いったいどのような数字を出しているのか。お客様がパワーチェックされた結果も含めて、公開しようと思います。


1998年式、入手状態で70ps

ヤマハXJR1300

近所に住む友人が、昨年、1998年式のXJR1300を購入しました。見た目の程度は良く、外装もエンジン外観もキレイです。走行距離は2万キロ以下です。

しばらく走らせた後、知人のショップでパワーチェックをしてもらったところ、「70ps」しかなかったと、ちょっと寂しそうに言っていました。

20年前の新車時には100psあった車両です。程度も良く、走行距離も18,000km程度です。それが、たったの「70ps」だったことに、友人はガッカリしていました。

走行距離が少なくて程度は良好に感じても、20年の歳月が経過しているということは、出力の低下は仕方のないことでしょう。

後日、ミクニTMRキャブレターを装着セッティングさせて頂きました。どの領域でもトルク感・パワー感共に向上しましたので、それだけで随分と楽しいオートバイになったようです。

しばらくした後、エンジンのチューニングも兼ねたオーバーホールをしたい、とのことです。

1月26日:訂正加筆

オーナー様から、「85psはあったんですよ。」と連絡がありました。
私の勘違いでした。申し訳ありません。
「70ps」は、ちょっと低すぎですよね。


キャブとマフラーで120ps

ミクニTMRキャブレター

この数字は、以前からよく言われている数字です。XJR1300は、エンジンの調子が良いという前提で、レーシングキャブレターとマフラーを変更した状態では、良くて120ps程度、というものです。

メーカー数値が100psであることを考えれば、確かに妥当な数字だと言えます。一つの目安になる数字でしょう。

ただ最近では、キャブレター車の年式を考えれば、少しばかり難しい数字かもしれません。お乗りのXJR1300が、レーシングキャブレターとマフラー変更程度で120ps出ていれば、十分に合格です。


圧縮を上げて130ps

以前のお客様のエンジンオーバーホールの際、ついでに圧縮も上げて欲しい、というご要望で、シリンダーヘッドを面研磨しました。研磨量は「0.6mm」です。

面研磨したXJR1300のヘッド

もちろん、カムスプロケットを長穴加工してのバルブタイミング調整は、きちんとしています。しかし、カムシャフトは変更していませんし、ポート加工もしていません。

ちなみにキャブレターは、TMRではなくFCRでした。きちんとセッティングが合っているとは言えない状態でしたが、FCR用のパーツが無いことや私が不得意なことから、セッティング変更はせず、簡単なクリーニング程度しかしていません。

慣らしが終わったあと、オーナー様がご自身でパワーチェクをしてきました。グラフも見せて頂きましたが、130psを少し超える出力でした。

そのショップでは、何台ものXJR1300をパワーチェックしてきたそうですが、マフラーとキャブレター変更でも、良くて120psだと言われたそうです。

完成試乗時にも感じましたが、圧縮を上げると下からトルクフルになっており、マフラーとキャブレター変更だけのXJR1300とは明らかに違います。加速が楽しくなります。

通常の乗り方では、7,000rpmも8,000rpmもなかなか回せないと思いますが、3,000rpmや4,000rpmでもトルクがあって、十分に楽しめるエンジンになります。


ポート加工で140ps

拡大加工したXJR1300の吸気ポート

上記のノーマルピストンで圧縮を上げた仕様に、ポート加工を施して140psを超えたエンジンは、幾つかありました。

つまり、高価な社外ピストンや社外カムシャフトを使わなくても、140ps程度のエンジンであれば十分に製作可能だということです。

XJR1200でノーマルピストン仕様、つまり排気量も「1,188cc」のままで、145psを出したエンジンも、以前に造ったことがあります。レースで使わなくなった1200のエンジン部品で、ノーマルピストンのまま、どんなエンジンが造れるのか?といった、ただの興味本位で造ったものです。

このエンジンは、クランクまで手を入れていましたし、圧縮比も高めて、勿論ポート加工もしていましたが、レース用エンジンではありません。セルモーターも付いていますし、ジェネレーターで発電もしていました。


SOHC製ピストンで150ps

SOHC製スペシャルピストン

少し前のお客様のエンジンです。腰下は何もしていません。ピストンをSOHC製のスペシャルピストンに変更し、ポートを拡大加工し、キャブレターをミクニTMRに変更しただけです。

当ガレージで行ったのはその程度でしたが、後日、オーナー様が知り合いのショップでパワーチェックをしてもらったデータを持って、遊びに来てくれました。

データを見ると、なんと150psを少し超えていました。これには正直、少し驚きました。SOHC製スペシャルピストンの高圧縮と軽量さが貢献しているのは間違いありませんが、それにしても、ピストンとヘッド加工だけで150psです。

オーナー様には、転倒や事故にはくれぐれも気をつけてくださいね、とお話しました。


レース用エンジンで165ps

このエンジンは、私が作ったり整備したものではありません。北海道に住む、昔のレース仲間のエンジンです。

彼とは、もう30年も前に、同じヤマハの「OW-01」で同じクラスを走っていました。開けっぷりが良く、富士スピードウェイの以前のコースの高速の最終コーナーで、レース中に目の前でハイサイド転倒したことがありました。

高速コーナーなのに、なぜそんなにガバ開けするの?と思える開けっぷりでの転倒でしたが、幸いにして大した怪我もなく、チェッカー後に後ろに乗せてピットまで帰ったことを、なぜか覚えています。

そんな彼も、地元の北海道では有名人のようで、XJR1300でR1やGSX-Rを追い回して走っている、元気なオヤジです。

XJR1300には、もう20年は乗っているでしょうか。『クランクが折れたので、余ってたら送ってくれませんか?』、『ヘッドの面研をしたいんですが、何ミリまで出来ますか?』、そんな連絡を、時々してきたものです。だから私は、彼のエンジンの仕様は、おおよそ知っています。

165ps出ているXJR1300レーサー

その彼が、SOHC製スペシャルピストンを入れたい!ということで、高圧縮仕様(12.0:1)のピストンを1セット送りました。そのピストンを組み込んだ後にパワーチェックをしたら、なんと『165ps』だったということでした。

以前のワイセコよりパワーも上がり、ストレートスピードも速くなったと、喜んでいました。十勝の長いストレートでも、前ほど簡単に現行のスーパースポーツに抜かれなくなったようです。

しかも、2年ほど前より、遠く北海道からテイストに参戦するようになりました。恐るべきエネルギーです。そして、たいして練習もしない筑波サーキットで、とうとう59秒を出しました。

これ以上パワーを出そうと思えば、STDの79mmボアでは相当に大変になってきます。ボアアップやインナーシム化など、大掛かりなチューニングが必要になってくるでしょう。でもSTDの79mmボアで『165ps』、筑波で59秒を出せるのです。

ただ、彼が速くなったので、もうコース上で遊んでもらえなくなりました。


155psは出ているハズの、「My Bike」

クランクシャフトからヘッドまで手が入っている私の愛車ですが、10年前には155psはあったハズですが、このところ少しお疲れのご様子なので、数字は分かりません。

155psは出ているハズのXJR1300

オーバーホールの予定はありますが、思うように進んでいません。パーツはある程度は揃っていますので、頑張ってオーバーホールし、ついでに外観も塗装をしてキレイにしようと思っています。

エンジンを降ろす前に、一度パワーチェックをしてみますので、結果が出たら、また皆さんにご報告いたします。

そんな状態ですので、一応「155ps」としておいて下さい。


まとめ

以上のパワーや出力の数字は、あくまでも一つの目安です。必ずこのパワーが出せる、と約束できるものではありません。

XJR1300のキャブ車は、既に15~20年選手です。走行距離が少なくても、程度が良さそうでも、エンジン内部は消耗し傷んでいます。くたびれたエンジンに幾らチューニングしても、本来のパフォーマンスは発揮されません。

パワーアップやチューニングで自分好みにしたい、楽しく走りたい、これからも長く楽しみたい、と思ったら、まずはオーバーホールでエンジンをリフレッシュさせてあげる必要がります。

もう一つ肝心なことは、装着したレーシングキャブレターのセッティングでしょう。これが出来ない限り、本来のパワーも出せず、息付き等の症状も消せず、走ってもつまらない結果になります。

エンジン内部の消耗パーツの交換、圧縮の改善などがキチンと出来て、なおかつキャブレターのセッティングが合っていれば、今回ご紹介した数字は、そう難しいものではありません。

① キャブレター+マフラー変更~120ps
② ①+ヘッド面研磨130ps
③ ②+ポート加工140ps
④ ③+SOHC製ピストン150ps
⑤ SOHC製レース用ピストン+α160ps~

SOHC製スペシャルピストンですが、今年も製作しようかと考えています。ただし、5セット以上のご注文があった場合に限ります。

販売できる見通しも立たないまま、製作費用を当ガレージが捻出するのは、ちょっとばかり荷が重すぎますので、その点はご理解いただければと思います。

もし欲しい、という方がいらっしゃいましたら、まずはお問い合わせ下さい。

XJR1300のこと、TMRキャブレターのこと、SOHC製スペシャルピストンのことでのお問合せ・ご相談は、こちらからお気軽にお願いします。