フルカスタムのXJR1300、その1、事前チェック

分解する前の1999年式XJR1300

現在、1999年式のXJR1300をお預りして、各種作業をしています。前回のブログで、センタースタンド取り付け部の切除をご紹介した車両です。

その車両をお預りした際の写真です。この後、フレームまで単体にしました。エンジンもフルオーバーホールしました。

オーナー様は、数年前にこの車両を入手したようですが、年式なりにあちらこちら傷んでおり、各部をキレイにしたうえで調子良くして乗りたい!とのご要望です。

事前のお打合せで、フロント回りとホイールを他車種に換装することになりました。その上で、フレームやホイールまで塗装します。全てをバラす必要があるカスタムです。大掛かりですが、やり甲斐もあります。


カスタムメニュー

車両をお預りした時点での大まかなメニューは、以下の通りです。

  • エンジンオーバーホール
  • エンジン塗装
  • フレーム塗装
  • 外装塗装
  • フロント回りをR1用に換装
  • ホイールをR1用に換装
  • その他

なんと言っても最大の特徴は、フロント回りとホイールをR1用に換装することでしょう。

事の発端は、ご訪問時に置いてあった以前のお客様の車両です。この車両は、Fフォークやホイール、ブレーキなど多くの箇所が変更されていましたが、なぜ多くのユーザーがオーリンズのフォークを使うのか、といったことから話は始まりました。

現在は、多くのアフターパーツが車種専用に販売されています。すると、コストを掛けても、選択するパーツはどうしても同じようなものに偏ってきます。その典型が、フロントフォークです。

車種専用に出来ていますから、取り付けは難しくはありません。取り付けの為に何かを製作したり、といった事も不要です。専用知識も特に必要ありません。特にFフォークは、他のメーカーから車種専用としては、ほとんど販売されていません。「オーリンズ」というブランド力やメーカーの知名度も抜群です。だから、皆がこぞって使うわけです。

私の師匠であるカタクラの社長は、昔かたぎの職人です。特に、人が出来ないと思うことをするのが大好きです。今までに、何度もそのようなカスタム車両を造ってきたのを見ていますし、何度も乗せてもらってきました。R1のフォークをTRXやXJR1300に取り付けた事もあります。

そんな話をしていたら、オーナー様が興味を持ち、是非やってみたい、という事になりました。

でもそれには、出物のパーツが必要です。新品パーツを購入してそのようなカスタムをしたら、社外製のアフターパーツを購入するのと変わらないコストが掛かってしまいます。

ちょうど友人の知り合いが、R1をバラして売ろうとしている、というので、早速探りを入れてもらいました。もし程度が良くて金額の折り合いが付いたら、任せるから買ってきて欲しい、と。

そうやって入手したパーツが、こちらです。

R1のフロントフォーク一式

このフロント回り一式とRホイールを入手してきてくれました。

ブレーキも付いていますので、ブレーキホースを長くする程度で、ほぼそのまま使えます。フォークは長さがXJR1300には短いので、延長する必要があります。ステムシャフトの製作も必要です。パイプハンドルにしますので、トップブリッジの加工も必要です。でも、ありがちなXJR1300カスタム車両とは明らかに違ったオートバイに仕上がると思います。


分解前のチェック

車両をお預りした時点では、ちょっとした問題があり、エンジンの始動や試乗は出来ませんでした。メインハーネスまで交換する予定ですし、どうせ全て分解しますので、調子の悪い原因を探す作業はしないまま、分解していくことにしました。

分解前に、目視で一通りチェックしていきます。

塗装が大きく割れているタンク

サビの目立つフレーム

シートカウルのキズ

ブレーキホースのバンジョー

年式なりでしょうか、全体に傷みやヤレが見受けられます。ある程度の期間、屋外保管されていた車両でしょうか。車体各部には転倒した形跡がありますが、その際の補修のパテ処理の不具合でしょうか、タンクの塗装が大きく割れています。シートカウルにもキズがあります。

フレームの溶接部にはサビが目立ち、再使用付加のパーツもあります。

タンクの固定ネジがありません

シートカウルの割れ

シートカウルの裏側

切れたヒューズ

ガソリンタンクとシートカウルの隙間がおかしいと思ってよく見ると、タンク後部の固定ボルトがありません。シートカウルの取り付け部は割れており、固定されていません。シートカウル裏側の固定部は、ステーすらありません。

エンジンを掛けようと思ってセルを押すと、ヒューズが切れます。

チェンジペダルのシフトアーム部

見慣れない箇所を見つけました。なぜ見慣れないかと言えば、通常とは明らかに違っているからです。

シフトアームには、このような長いボルトは使用しません。そもそも、ナットも使いません。ボルトをシフトアームの左側から入れれば、片側にネジが切ってありますので、ナットなど不要なのです。

オーナー様は、購入後はたまに乗るだけで、ほとんど何もしていない、とのことですので、以前の持ち主か整備したショップの仕事だと思われます。

この後、エンジンを分解していく中でも、驚くような箇所が幾つも出てきましたが、それについては今後、ご紹介します。

いずれにしても問題の多い車両ですが、エンジンも車体もバラしていきますので、全てに問題の無いよう仕上げていくだけで、随分と調子良くなるはずです。

交換が必要なパーツも多々あります。全てを新品購入するのは、コスト面でも大変ですので、中古パーツを探すことも必要でしょう。

頑張っていきます!