クランクシャフトの軽量加工

自分のXJR1300をオーバーホールしようと思い立って、早くも半年が経ちます。しかし未だに、エンジンすら降ろしていません。

SOHC製ピストンを組んで、ヘッドは作り直して、シリンダーも変えて、ついでにエンジン塗装もして、さらに車体もあれやこれやをして・・・。計画だけは一人前ですが、それに作業が伴っていません。

なので今回は、現在のエンジンに組まれているクランクシャフトをご紹介しようと思います。


軽量加工済みのクランクシャフト

現在の私のエンジンには、軽量加工されバランス取りのされたクランクシャフトが組み込まれています。

軽量加工されたクランクシャフト

このクランクは、レース時代の最後に使っていたもので、痛みもなく良いフィーリングでしたので、街乗りエンジンにもそのまま使っています。

各ウェイト部が三角形状に削られているのが、写真からも分かると思います。私たちはこれを『おむすび型』と呼んでいました。

軽量加工されたクランクシャフト

この画像では、スタンダードのクランクと並べていますので、どの程度加工されているのか、より違いが分かるかと思います。

コンロッドが付いた状態のクランクがスタンダードです。2本とも同じ角度で置いていますが、加工クランクはスタンダードに比べ、各ウェイト部がおむすび形状に大きく削られています。


加工方法は・・・

私がXJR1300でレースに参戦していた間に、3~4通りのクランク加工をしました。別にクランク加工が趣味ではなかったのですが、焼き付きやトラブル等でクランクがダメになった後、新たに組むクランクの軽量加工の際に別の削り方を試した、というだけです。

と言っても、当時の私は大した知識もなく、ただ速く走りたかっただけで、加工を依頼していた友人がいろいろと考えてくれていました。頼もしい友人です。

車のチューニングエンジンに詳しいその友人からの、「今度はこんな加工をしてみよう。きっと良くなると思うよ。」といった提案から、次々に加工方法が変わっていった、というのが実情です。

一番初めは、ただの外周切除でした。それぞれのウェイトの外周部を削り、軽くしただけです。2本目は、同じ方法で外周部をさらに大きく削りました。二回り以上、ウェイト部が小さくなった気がしました。

どの程度軽量していたのか、古いノートを引っ張り出して見てみました。

当時は、正確な秤(はかり)など持っている訳もなく、家にあった適当な秤で重量を量っていただけです。ですから当然、正確な数字ではありません。ただ、今後のために目安として残しておこう、そんな気持ちでノートに書き残していました。

従って、これから記載する数字は、あくまでも『一つの目安』程度に見てください。正確な重さでは無い事を、まずはご了承いただければと思います。なにせ、20年以上も前のことですから・・・

その古いノートを見ると、スタンダードのクランクシャフトは、「12.8kg」とあります。いったいどこまで正確な数字なのかは分かりませんが・・・

 1本目の外周切除クランクは、11.0kg(14%減)
 2本目の外周切除クランクは、10.4kg(19%減)

そして、肝心の走行フィーリングはと言うと・・・

ノートの汚いメモ書きと当時のかすかな記憶からですが、
「ピックアップは良くなったが、トルク感が無くなった」エンジンになりました。

その結果を踏まえ、次に行ったのが、『おむすび型』の軽量加工でした。


『おむすび型』とトルク感

レース用XJR1300エンジン

そもそもレーサーでは、セルモーターやジェネレータ、スタータクラッチ、それらを駆動させるハイボチェーン等は取り外します。これだけで、ピックアップは相当に改善されます。

ただ、回転するものが軽量化されれば、動きやすくはなりますが、慣性力は小さくなります。だからトルク感も無くなった感じがします。

そこで、友人の提案で『おむすび型』にウェイト部を削る加工をしました。回転の中心部より遠いところに重さを残すことで、同じ重量のクランクでもトルクを出そう、という狙いです。

軽量加工されたクランクシャフト

この写真の右側が、現在のエンジンに使われている、いわば最終仕様です。外周部は削られて小さくなっており、ウェイト部は「おむすび型」に削られています。

20%の軽量化を目安に加工しましたが、最終的には10.4kgで、19%の軽量化になりました。

この前にも1本、おむすび型の加工をしましたが、そちらは約15%減で、しかもオイルポンプのトラブルで焼付き、ゴミとなりました。(写真は残っていません。)

走行フィーリングは、以前の同じ10.4kgの外周切除クランクと比較し、トルク感はだいぶ増しました。経験した中で、一番気に入ったクランクでした。

その後はレース車両を変更したこともあり、XJR1300でクランクの軽量加工は試してはいません。お気に入りクランクも、レースでの使用期間が短かったので、ダメージも消耗もなく、未だにご健在で元気に頑張ってくれています。

オーバーホールの際にチェックはしますが、このクランクにはまだまだ頑張ってもらうつもりです。


街乗り仕様にクランク軽量化は必要か?

クランクシャフトの軽量加工について、何度かお問合せもあったので、ここでお答えさせて頂こうと思います。

普段の公道使用をするだけのXJR1300に、クランクの軽量加工は必要なのか?
答えは・・・

『どちらでも良い』になります。

コストと手間が必要です。5~6万円でこの加工はできません。
レースでタイムを争う訳でもなく、10万円以上を掛けて、その見返りに満足できるのか?ということです。

でも、モアパワーを求める方であれば、やならいよりやった方が良いでしょう。

ただ多くのユーザーの場合、その前にコストを掛けるべきところがあります。
その部分にコストを掛けることが、まずは先決だと考えます。

それでも『レースでも走れるようなエンジンにしたい!』とお考えの方は、お気軽にご相談ください。