XJR1300という素材
「中古車を購入しようと思っていますが、何年式がお勧めですか?」
そんなご質問を、時々お受けします。
特別なこだわりもなく、ただ乗るだけあれば、できるだけ年式が新しい車両がお勧めです。それだけ手を入れる箇所も少なくて済みますし、年式が新しければ、トラブルが発生するリスクも、その分少ないと思われるからです。
しかしカスタムを前提に考えた時、車両選びは全く状況が異なってきます。
今回は、カスタムベースとしてのXJR1300を考察してみます。
市場価値
巷で流行りのZ系やCB系のような希少価値は、残念ながらXJR1300には全くありません。ですから市場価値は、年式と程度なりです。
大きな中古車販売店に行けば、XJR1300の中古車はゴロゴロあります。予算に応じた好きな車両を選ぶことが可能です。
需要と供給のバランスは、価格に大きな影響を与えます。カワサキZ系のように車両自体が少なく、欲しがる人が多ければ、自然と価格も上昇します。しかしXJR1300に限っては、そのような事はありません。
1994年の1200から合わせて、20年間も国内販売されていた車両です。
「いつか市場価値が上がって、持っていれば高く売れるかも・・・」というようなことは、残念ながらないでしょう。
でも、車両オーナーやXJRマニアにとっては、これは実は有難いことです。それだけ国内に出回っているのですから、中古車もパーツも、エンジン丸ごとでさえも、まだまだ安価で入手できる、ということです。
年式での違い
1994年に初代の1200が発売されました。私は発売直後に、この1200の赤を購入しました。
1996年には、カウルの付いた1200Rが発売されましたが、あまり売れなかったようで、見かけることは少なかった気がします。
今となっては、まず見かけません。もしかしたら、唯一希少価値のあるXJRなのかもしれません。
当ガレージのお客様に1200Rに乗っている方がいますが、カウルがなくて困っているようです。あまり売れなかった車両ですから、無理もありません。オークションでも、程度の良いかウルが出品されることは無いようです。
売れなかった車両だからこそ、マニアの方もいるハズです。FRPでカウルを製作したら、10ヶくらいは売れるかもしれませんね。今度、考えてみましょう。
もしR用のカウルが欲しい、という方がいましたら、ご連絡くださいね。
1998年に1300へとモデルチェンジされますが、排気量が大きくなっただけでなく、今後を左右する重要なポイントがあります。
- メッキシリンダー
- 浸炭処理されたコンロッド
この二つは、生産終了時まで変わらずに採用され続けました。この二つのパーツの登場で、私はレースでもボアアップするのを止め、メッキシリンダーとノーマルコンロッドを使い続けました。
2000年のマイナーチェンジでは、多くの箇所が変更され、その箇所は200にも及ぶと言われました。ホイール、アクスルシャフト、キャブ、外装、キャリパーなどなど。
その中でも、カスタムベースとして一番影響を与えるのが、「エアインダクションシステム」と呼ばれる機能の追加です。
そして2007年からは、キャブレターからインジェクションに変更されました。
エアインダクションシステムの追加やインジェクション化は、規制強化に対応するもので、地球環境を考えれば致し方ないのかもしれません。2015年で生産中止になったのも、今後このエンジンでは、厳しくなる一方の規制をクリアできない、というのも理由の一つだったようです。
カスタムの自由度
以上がおおまかな流れですが、もうお分かりのように、2000年式以降の車両では、エアインダクションシステムが無ければ車検に通りません。2007年式以降では、キャブレターでは車検が通りません。
エアインダクションシステムが追加された事によって、シリンダヘッドのEXポートに穴が開いています。自由にカスタムをする事を考えれば、EXポートの穴もエアインダクションシステムも、使いたくありません。
余分なものは極力取り付けない、これが私の車両作りのポリシーです。散々レーサー作りに関わってきた結果、いつの間にかこのような考えになっていました。
パーツや機能が増えるほど、トラブルの可能性は高くなります。整備し難くなります。それを考えれば、EXポートの穴もエアインダクションシステムも、カスタムには不要です。
以上の理由で、カスタムベースとして考えれば、98・99年式がベストでしょう。
もちろん、インジェクション車でもカスタムは可能ですが、私は個人的にはやりたくありません。あえて自分からイバラの道を進みたくはありませんから。
ベストの組み合わせ
何も始めから車両1台が無くても、フレームとエンジンさえあれば、後は好きに組み合わせて1台の車両を作ることもできます。パーツが豊富に入手できるXJR1300であれば、そんなことも可能です。
車両の年式は、エンジンではなく車体、つまりフレームです。それを考えれば、1200のフレームでも、エンジンを積みかえる前提ならば何の問題もありません。
今、98・99のエンジンを2機、フレームを1機、その他1200エンジンを3機、保有しています。1200エンジンも、シリンダーとコンロッド、ピストン以外は、ほとんど1300にも使えます。部品取りですね。
いつか、このフレームと99エンジンを使って、その他のパーツは自由に組み合わせて1台造りたいなぁ~、と考えています。配線類はストックがあるし、フロントフォークはあれを使って、Rサスはこれにして、外装は・・・そんな妄想をしています。
外観は、この写真のようなイメージです。
エンジンは98年式をチューニングして載せ、TMRキャブレターに倒立フロントフォーク、外装は2015年式の1300C用を使い、このようなイメージで造りたいなぁ~、と。
誰か、そんなオーダーしてくれませんか?
考えただけでも楽しそうです。