スペシャルピストンの走りを味わってみる

XJR1300オリジナルピストンの味わい

ガレージXJRオリジナルのXJR1300用スペシャルピストンが完成し、組込み1号車も出来上がりました。18日の夕方前にはTMRキャブレターのセッティングも終わりましたので、雨が降り出す前に一走りしてきましょう。

昨日の午前中まで雨が降り続いており、明日からはまた雨予報です。今日を逃すと、またしばらく走れそうにありません。とにかくピストンを味わってきましょう。


エンジンの仕様

エンジンは、フルオーバーホールしてメタルやカムチェーンまで新品を組んでいますが、ピストン以外はほぼスタンダードパーツです。とはいえTMRキャブレターを組むこともあり、インシュレーターの拡大加工や、ポートのシートリング付近の段差の修正研磨などは行っています。

ポート加工


カムシャフトはノーマルのままです。シリンダーおよびシリンダーヘッドの合わせ面は、ガスケットによる微細な段差が気になりましたので、高圧縮比による吹き抜け等のトラブルを未然に防ぐ為にも、0.1ミリの面研磨(面出し)を行いました。面研磨を見込んだピストンヘッドの加工で、想定圧縮比は、11.9:1になっています。

XJR1300をパワーアップすると、必ずと言って良いほどスベるクラッチは、FCCのコイルスプリングキットを組み込み、スベリ対策をしています。走り方によっては、キャブレターをTMRやFCR等のレーシングタイプに変更しただけで、クラッチはスベり出します。FJ1100時代の古い設計ですので、仕方ないのかもしれません。クラッチは、XJR1300の弱点の一つです。

コイルスプリング式クラッチ

コイルスプリング式に変更すると、スプリングレートが高いせいもありますが、クラッチレバーの操作は確実に重くなります。これはガマンして頂くしかありません。クラッチのスベったオートバイに乗っても、楽しくありませんから。コストが許せば、クラッチマスターをラジアルタイプに変更するのも一つの方法です。操作が軽くなります。


カムシャフトはスタンダードのままです。バルブタイミングも、カムスプロケットの合わせマークで合わせたのみで、詳細なタイミング合わせはしていません。バルブタイミング調整は、コストが掛かります。そのコストを他に回したい、とのオーナー様のご要望です。

出来上がったシリンダーヘッド


バルブタイミングを調整するには、カムスプロケットの取付け穴を広げる必要があります。このような感じです。

XJR1300のカムスプロケット

左がスタンダードの状態で、右が取付け穴を広げたものです。これで、カムシャフトに対して取付け位置を微妙に変えることが可能になります。

「シリンダーとヘッドで、コンマ2ミリも面研磨しているのなら、バルタイも狂うじゃないか・・・」とのお言葉も聞こえてきそうですが、ハイ、狂います。ただし、0.2ミリの面研磨によるバルブタイミングの狂いを感じ取れる方は、よほどの方を除いて、まずいないでしょう。

0.2ミリの面研磨によるバルブタイミングの変化は、おおよそ2度程度でしょうか。クランクシャフトとカムシャフトの距離が短くなりますので、バルブタイミングは早まる方向になります。カムチェーンが伸びることによってバルブタイミングは遅くなってきますので、その事を踏まえれば、問題になる数字ではないでしょう。

ある程度の走行距離のエンジンをバラす前に、バルブタイミングを測定したことが何度かあります。全て、遅くなっていました。5~8度程度の遅れが標準だと思えるくらいです。

じゃあ、バルブタイミングなんて調整する必要がないのか?と言われれば、そんなことはありません。エンジンの性能や特性を決めるのは、全ての複合要素なのですから。良いと思われることを積み重ねていけば、それに応えてくれるのがエンジンです。

オーバーホール時だけでなく、カムチェーンの伸びを見越して、適時バルブタイミングを調整するのがベストでしょうが、よほどのマニアの方でない限り、そのようなことはしません。ですから私は、カムチェーンを新品に交換した場合は、バルブタイミングを3度程度進めて組みます。新品のカムチェーンの初期伸びが落ちついた頃にちょうど良くなるようにするためです。


スペシャルピストンの走りは?

さて、肝心のスペシャルピストンを組んだエンジンは、どんな走りを見せてくれたのか・・・

まず前提として、4,000回転までしか回していない事、その中で感じたことをお伝えします。また足回りについては、今回の要点ではありませんので、感想は控えます。

私のガレージからオートバイで40分ほど走ったところに、湖があります。駐車場もあり、休憩するにはもってこいの場所です。試乗する際によく行くところです。もちろん、今回もその湖を目指して走り始めます。

走り始めてすぐに感じるのは、エンジンが滑らかに回ることです。これは、オーバーホールしたエンジンでいつも感じることです。さらに、圧縮が上がっているので、低回転からトルク感があります。スタンダードの比ではありません。

トルク=パンチの効いた加速ができる、といったイメージでしょうか。ノーマルエンジンでは感じられない力強さがあります。

しかし一番驚いたのは、エンジンが軽く回ることです。通常、ピストン変更と共に圧縮比を上げても、パンチの効いたエンジンにはなりますが、軽くは回りません。逆に、若干重くなるくらいです。しかしこのエンジンは違います。圧縮が上がっているにも関わらず、軽く回っていくのです。

おそらくこれには、ピストン重量が大きく関わっていることは、まず間違いないでしょう。ノーマルピストンに比べ、15%も軽量になっているのですから。

湖が近くなり、交通量も減った道では、3速4速での急開けテストやパーシャルテストも行いましたが、速度域が高くなっても、その感覚は変わりませんでした。パンチが効いているのに軽く回る、最高の感覚です。少し前に、ノーマルピストンのまま面研磨で圧縮比を上げたエンジンを作りましたが、それとはまた違う感覚です。

ただ残念なのは、組み上がったばかりで慣らしも必要なエンジンですので、上まで回せなかったことです。今回は、4,000回転を上限として走ってきました。おそらく一番パワー感を感じられて、いわゆる美味しいところは、6~8,500rpmあたりだと思います。

レーサーも含めて、今までに何機も仕様の異なるエンジンを造ってきましたが、このピストンの軽さによる回転上昇の感覚は、一度も味わったことのないものです。さすが渡辺さん!どうりでライバルのFZ1000が速い訳です。

この冬に、自分のXJR1200改のエンジンを降ろして、ヘッド交換も含め、このピストンを組み込む予定です。私のマシンはクランクからヘッド、バルブにまで手が入ったものです。そのエンジンにこの軽量ピストンを組んだら、いったいどんなエンジンになるのか、どんな加速感を味わえるのか、考えるだけでワクワクしてきました。


ご相談はお気軽に

あなたのXJR1300を、冬の間にオーバーホールしませんか?オーバーホールすることにより、新車時のようなスムーズさを取戻すことができます。

ご要望に合わせ、ヘッド加工やバルブタイミング調整、ポート研磨など、よりハイチューンすることも可能です。

さらに、外観までくたびれたエンジンを塗装することにより、あなたの愛車は見違えるように変化するでしょう。当ガレージでは、オーバーホールをご依頼頂いた方には、格安でエンジン塗装もお受けしています。

また、空燃比計を用いたキャブレターセッティングも、場合によっては可能です。

オートバイに乗らない冬の間に愛車を何とかしたい、そう思われた方は、まずはお気軽にご相談ください。XJR1300のスペシャリストが、お一人お一人に誠意を持ってお答えいたします。