SOHC製ピストン、発注しました。
ご報告が遅くなりましたが、先月の7月31日にSOHCエンジニアリングにお邪魔して、ピストンの最終打合せと正式発注をしてきました。
最終仕様
今回ご注文頂いたユーザー様は、サーキットユースの方もいれば、ストリートユースの方もいらっしゃいます。そこで圧縮比の違うものを二通り製作することとしました。
理由は様々ありますが、一番の理由は「ストリートオンリーの使用で12.5:1の高圧縮が本当に必要なのか?」ということです。
12.5:1の高圧縮になれば、熱の問題、異常燃焼の問題が起こってもおかしくはありません。ノッキングの問題が発生すれば、点火系のチューニングも必要になるかもしれません。
また、オーバーホール時にヘッドの面研磨が必要になった場合、圧縮比はもっと上がります。レースオンリーの車両のように、頻繁なメンテナンスも期待できません。ライダーのスキルも、人それぞれです。
そのような状況で、そこまでリスクを求める必要があるのか?
レースでの使用なら、メンテナンスも期待できます。リスクを取ることも必要でしょう。ですから圧縮比はSOHCの渡辺さんと話し合って、以下のように二通り設定することとしました。
- レース用
- 12.5:1
- ストリート用
- 12.0:1
これでも十分に、スペシャルピストンの作り出すパワーを体感することができると思っています。
予想される問題点
SOHCエンジニアリングでは、XJR1300用のピストンは、4年ほど前に1セット作ったのみで、組み込んだ車両のその後の様子も聞いてはいないそうです。もちろん経験豊富な方ですから、おおよその予想は出来ているのでしょうが。
ただ実際には、このSOHCエンジニアリング製スペシャルピストンを組んだら、何がどうなるのか、詳しく知る人の話を聞くことは出来ません。
私は以前、圧縮を上げたエンジンを何機も製作し、乗ってきた経験がありますので、おおよその予想はつきます。ヘッドガスケットの吹き抜けは、現在のSTDガスケットであれば、その程度の圧縮では、まず問題ないでしょう。
STDのアルミ一体式メッキシリンダーを使用しますので、放熱性もさほど心配はしていません。ただ、油温管理程度はキチンとする必要はあるでしょう。
一番心配しているのは、「点火系」です。私がレースをしていた時はイグナイターの変更のみで、イグニッションコイル等の点火系はSTDのままでした。特段、問題になった記憶もありません。いわゆる旧車と言われているZ系やGS系、CB系などのように、点火系の変更が必須と感じたこともありません。
しかしレースでのアクセルの開け方と、一般公道でのアクセルの開け方では、全く違います。常用域も全く異なります。常用するアクセル開度が違うのですから、イグナイターで制御されている進角マップ、つまり点火時期も、多用される部分が異なってきます。
ただし現在では、様々な点火系アフターパーツが発売されています。
昔から当たり前のように言われていることですが、エンジンチューニングの基本は
- 良い混合気
- 良い圧縮
- 良い火花
この3つです。
ピストンを変更し、ヘッドをオーバーホールすれば、「良い圧縮」は手に入ります。しかし、それだけでは間違いなく片手落ちです。圧縮する混合気を「良い混合気」にする必要があります。
スペシャルピストンに見合った「良い混合気」を作るには、高性能キャブレターを使用し、適正なセッティングを施す必要があります。
また、「良い混合気」を作り出し、「良い圧縮」をしたところで、「良い火花」を飛ばさなければ、いくらスペシャルピストンとはいえ、そのメリットを最大限に活かすことはできません。
XJRでレース活動をしていた頃は、そのような事など考えた事もありませんでした。マシン造りよりも、走ることの方に重点を置いていたからです。
もうちょっとバイクが走るようになれば、○秒は出せるはず・・・
最終コーナーでもう少し踏ん張れたら、コンマ5秒は削れるはす・・・
でも、貧乏プライベーターですので、マシンが思ったように完成するなんてことは、ありません。思ったように仕上がったことも、ありません。結局は、その状況の中で、ライダーがどれだけ頑張れるか・・・
でも今は違います。もっとゆったりとした気持ちでXJR1300に関わることが出来ます。楽な気持ちで向き合うことが出来ます。上手くいかなくても、修正する時間はタップリとあります。トライアンドエラーを楽しむ事ができます。
私のXJR1300も、フルオーバーホールしてスペシャルピストンを組み込みます。
そのマシンで、今まで出来なかったことを実験していこうかな・・・
今さらながらですが、そんなことも考えています。