交換したい部品とは?

XJR1300の純正パーツ
XJR1300の純正パーツ

当ガレージでオーバーホールするエンジンは、稀にXJR1200もありますが、主にXJR1300です。1300の発売は1998年ですので、古いエンジンでは、既に27年が経過していることになります。ザックリと言えば、殆どは20数年経過しているお疲れ様なエンジンですので、様々な箇所にガタが来ているのが現状です。

私がXJRエンジンを分解したりイジり出したのは、1200が発売されて1年も経っていない頃でした。当然、ガスケット類は都度、交換しますが、その当時は交換しない部品も、幾つかありました。例えばスタータークラッチがそうです。1200の純正ピストンを使って140ps出したエンジンでも、スタータークラッチなどは交換もしていません。その必要すら、感じていませんでした。

ですが、月日が経つにつれ、様々な不具合が聞かれるようになり、どうせ分解するなら、ということで、当時では交換しなかった部品の幾つかは、今ではお客様にご相談したうえで、交換するようになりました。

その他、消耗が激しい部品も、思いがけず出てくるものです。今回は、そのような部品、出来れば合わせて交換したい部品を、ご紹介しようと思います。


スタータークラッチ

XJR1300のスタータークラッチ
分解したXJR1300のスタータークラッチ

スタータークラッチは、XJR1200のベースであるFJ1100時代からの弱点でした。ワンウェイクラッチ、とも呼ばれる部品です。

「セルボタンを押しても、クランクケース内で空回りするようで、一向にエンジンが始動しない。」

このような症状が発生したら、スタータークラッチのトラブルだと思ってください。1200時代は、よくこのような話を聞いたものです。
『直して欲しい!』といったご相談も、時折受けました。しかしスタータークラッチは、クランクケースを割らなければアクセスできません。つまり、簡単には直せません。手間は、フルオーバーホールと変わらないのです。

XJR1300のスタータークラッチ
XJR1300のスタータークラッチ

1300に排気量がアップされた1998年からは、スタータークラッチは対策されています。1200よりも、ずっと壊れにくくなっています。それでも時折、スタータークラッチの壊れた症状や、エンジンが始動しにくい、といったお話を耳にします。ですから最近では、フルオーバーホールされるお客様には、スタータークラッチの主要部品交換をお勧めしています。

主要部品を新品に交換するだけで、調子の悪かったスタータークラッチも、見違えるように調子良くなります。


【小ネタ】
1984年発売の「FJ1100」の型式は、『36Y』です。
1986年発売の「FJ1200」の型式は、『4CC』です。

FJ1100

私が購入した頃(1994年)のXJR1200は、エンジンNOの刻印がされているクランクケースの箇所には、『4CC』とだけ、刻印されていました。それ以外のエンジン番号などは、ありませんでした。(型式は、4KG)

XJR1300のエンジンを分解していくと、様々な部品に『36Y』の刻印があります。バルブにもクランクシャフトにも、『36Y』の型番がハッキリと鋳型として表示されています。

排気量が「1100 ⇒ 1200 ⇒ 1300」と拡大されてきましたので、ピストンやシリンダーは、その都度変更されていますが、他のエンジン部品は、案外と「FJ1100」時代のままのようです。

昔、レース用エンジンで、FJ1100のシリンダーヘッドを使ったことがありました。当時の私が調べた限りでは、燃焼室の容量や形状も、ポート形状も、XJR1200と同じでした。違うのはフィン形状だけで、問題なく使えました。

私はインジェクション車のXJR1300エンジンを分解したことは、まだ一度もありません。でもヤマハですから、主要部品を変更しているとは思えません。もしインジェクションエンジンも、バルブやクランクが変更されていないとしたら、FJ1100が1984年発売ですから、XJR1300の最終型である2015年式まで、実に31年間も、同じ主要部品が使われたことになります。完全に元を取っていますね。


ドライブスプロケット

XJR1300のドライブスプロケット
摩耗しているドライブスプロケット

XJR1300のドライブスプロケット
摩耗しているドライブスプロケット

Rのスプロケット(ドリブンスプロケット)は、普段から目につきますし、気にされる方も多いですが、ドライブスプロケットは、カバーの内側にある為か、あまり気にされる事のない部品です。ただ、長期間放置していますと、気付いたら上記画像のように、刃先が変形したり、摩耗して尖ったりしていることもあります。

このような状態になる前に、チェーンを交換されることも多いかと思いますが、チェーン交換の際は、ドライブスプロケットの点検や確認を、是非して頂きたいものです。チェーンにも、相当の負担を掛けています。

変形や摩耗を感じたら、チェーンと共に交換をお勧めします。どんなに高価なホイールやタイヤを装着していても、チェーンとスプロケットでRタイヤを駆動させなければ、オートバイは走れません。せめて車検の都度、確認をお願いしたいところです。


クラッチのプッシュレバー

クラッチのプッシュレバー
クラッチのプッシュレバー

クラッチレリーズ、と言われる事の多い部品ですが、マニュアルには「プッシュレバー」と記載されていますので、私はプッシュレバーと言っています。

クラッチは、多くの方が考えている数倍も負荷が掛かり、思った以上に傷んでいるものです。フルードに至っては、ブレーキフルードの10倍汚れる、と思っています。試しにオイルタンクを開けてみてください。メンテナンスされていない車両では、オイルタンクの底に、黒いスラッジが溜まっているハズです。

クラッチ側のオイルタンク
クラッチのオイルタンク

それほど負担の掛かっているクラッチですが、ノーメンテの車両では、このプッシュレバーからのオイル漏れが、時折発生します。原因は簡単で、ほとんどの場合、オイルシールの劣化です。オイルシールを交換し、クリーニングすれば、改善します。

酷い場合には、摩耗によりピストンが斜めになり、動かなくなります。そうなったら、自走は無理でしょう。

クラッチのプッシュレバーは、エンジンのオーバーホール時にはオーバーホールしてオイルシールを交換し、フルードも交換しましょう。


インシュレーター

インシュレーター
ひび割れているインシュレーター

昔から、キャブレターをレーシングタイプに変更する際、合わせて良く交換されていたのが、インシュレーターです。パーツリストでは、「ジョイントキャブレター」と記載されています。

このインシュレーターですが、古くなると画像のように、ひび割れが発生します。ただし、中に樹脂製の芯がありますので、表面にひび割れが発生したからといって、すぐにエアを吸い込む、という訳ではありません。

とはいえ、ここまで酷くなる前には、交換したいものです。

ちなみに、キャブレターと合わせて交換する場合、「FJ用」に変更するのが昔からの定番です。FJ用はXJR用と比べ、内径が大きくなっています。安価な製品も見たことがありますが、使用するべきでは無いでしょう。

FJ用には、「36Y」の刻印がありますので、交換する場合は、確認してくださいね。


クリーナーボックスパーツ

クリーナーボックスパーツ
クリーナーボックスパーツ

インシュレーターと同様か、もしくはそれ以上にゴムの劣化が激しいのが、エアクリーナージョイントです。インシュレーターと比較すると、ずっと薄いゴムで出来ており、硬化により弾力が無くなっています。

キャブレターを外す際、エアクリーナーボックスを出来るだけ後ろに下げて、インシュレーターとエアクリーナージョイントの間から、引っ張り出すようにして取り出します。その際、エアクリーナージョイントは変形します。

キャブレターを取り付ける際は、逆の作業で押し込んでいきます。すると、弾力の無くなったエアクリーナージョイントは、キャブレターとの密着が悪くなる場合があります。そこからのエアの吸い込みで苦労した経験も、数度ですがありました。

そんな経験もありましたので、硬化したエアクリーナージョイントは、交換をお勧めしています。

合わせて、クリーナーボックスの分解清掃とエレメントの交換も、お勧めします。エンジンを降ろした後は、クリーナーボックスを取り外す最大のチャンスです。エンジンを降ろさずにボックスを外そうと思えば、知恵の輪のような面倒な作業が待っているのです。正直に言えば、私はやりたくありません。

そんなこともありますので、純正キャブレターをお使いの方には、エンジンを降ろした際のクリーナーボックスの手入れを、お勧めしているのです。


キャブレターのニードルバルブ

新品のニードルバルブセット
新品のニードルバルブセット

キャブレター内のニードルバルブは、あまり注目はされない部品ですが、このバルブの尖った黒い三角部が摩耗したり硬化すると、ガソリンが止まらなくなります。すると、フロート内部にガソリンが溜まっているにも関わらず、ガソリンが流れ続けます。

フロート内がガソリンで一杯になっても、流れ込むガソリンは止まらず、フロート外部に流れ出てしまいます。多くの場合は、吸気ポートを伝わり、燃焼室に流れ込みます。そして、ピストンリングとシリンダーの間からクランクケース内に流れ込んでしまいます。

『エンジンオイルの量が増えているんですけど・・・』

このようなご相談を、何度か受けたことがあります。エンジンオイルは継ぎ足さない限り、増えたりはしません。増えたのはオイルではなく、ガソリンです。

もしキャブレターをオーバーホールするのであれば、少し高価な部品ですが、ニードルバルブの交換は、しておいた方が得策かと思います。純正キャブレターを取り外し、内部パーツを交換するのは、案外と手間も掛かり、あまりやりたくない作業です。

エンジンを降ろし、ついでにキャブレターもオーバーホールするのであれば、追加の工賃は不要です。部品代だけで、交換できます。

これからも長く乗ろう、とお考えの方は、ニードルバルブの交換も、出来たらしておいた方が良いでしょう。ついでに、フロートチャンバのガスケット交換も、お忘れのないよう、お願いしたいところです。


ストッパプレート

ちょっとばかりマニアックな部品にはなりますが、クラッチ奥に、シフトカム、という部品があります。ギアを入れ替えする際にシフトフォークを動かす為の、重要な部品です。

そのシフトカムを、クランクケースから外れないよう固定するのが、ストッパプレート、という部品です。

シフトカムのストッパプレートと、取り付けボルト
シフトカムのストッパプレートと、取り付けボルト

良く見ると、画像の上と下のプレート形状が異なっているのが、分かるかと思います。形状だけでなく、固定するためのボルト形状も、変わっています。

上部は、1200と1300初期のもので、途中から下の形状に変更されています。そもそも通常のメンテナンス程度では、外すことの無いパーツですが、私はフルオーバーホールの際には、必ず外しています。洗浄したい為と、確認チェックしたいからです。

上部の古いタイプは、取り付けボルトがプラスネジになっており、おまけにネジロックが塗布されて組まれていますので、ドライバーとハンドパワーだけで外そうと試みても、まずネジをナメるだけで、外せません。ショックドライバーの使用も、ケースを割りそうで、非常に怖いものです。

そのような外せないトラブルが、おそらく相次いで発生したので、画像下のタイプに変更されたのだと思っています。ヘキサゴンボルトに変更され、それに伴ってプレート形状も変更されています。

1200時代のシフトカムのストッパプレート
1200時代のシフトカムのストッパプレート

変更されたシフトカムのストッパプレート
変更されたシフトカムのストッパプレート

殆どのユーザーには、あまり関係のない部品かとは思いますが、1200時代からずっと分解整備をしてきた私にとっては、嬉しい変更でした。『やっとヤマハも分かったか!』、と思ったものです。


Fフォーク

保管状況やメンテナンス頻度で、その状態は全く変わってはきますが、時にはこのような状態のFフォークを見ることがあります。

XJR1300のフロントフォーク
XJR1300のフロントフォーク

ここまで酷い状態は稀ですが、オイルシールを押さえる為のスナップリングが水の侵入によってサビてしまい、このような状態になったものと思われます。こうなってしまえば、オーバーホールは必須作業になります。

フロントサスペンションは、気にされない方には放置されがちな部品の一つです。しかし、常に上下動を繰り返し、路面のショックを吸収し、働き続けている部品です。出来れば車検ごとに、オイル程度は交換したいものです。

当ガレージにエンジンのオーバーホールをご依頼される方には、普段はメンテナンスしていない部分のお手入れも、是非して頂きたいものです。オイルシールやスライドメタル、フォークオイルを交換すれば、また暫くは、フロントフォークも良い仕事をしてくれるハズです。

オートバイは、乗り手を裏切りません。手を入れてあげれば、それだけ乗り手に返ってきます。乗り心地や楽しみ、心地よさを与えてくれます。


エンジンのオーバーホールだけでなく、サスペンションやその他の箇所もお手入れしたいとお考えの方は、まずはご相談からお願いします。

多くの経験と実績を持つ店主が、お一人お一人に誠意をもってお答えいたします。

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