XJR1300の泣き所
初期のXJR1200の時代から、この車種特有の『泣き所』、『持病』と言われている箇所が、幾つかあります。私から見れば、泣き所でも何でもないのですが、昔からそう言われることが、非常に多かった箇所です。最近、中古車で入手された方もいらっしゃるでしょうから、順にご説明します。
ヘッドカバーからのオイル漏れ

ヘッドカバーからのオイル漏れ、オイル滲みが、XJR1200の時代から、特有の持病のように言われることがあります。
ヘッドカバーは、ゴム製のガスケットでシールされています。ゴム製ですから、時間の経過と共に、徐々に硬化していきます。弾力が無くなっていく訳です。弾力が失われていけば、シール効果が薄れていくことは、容易に想像できるかと思います。
車両の保管状況にも影響されるとは思いますが、このガスケットが古くなって
硬化し、シール効果が弱まってくれば、ヘッドカバーからのオイル漏れ、オイルにじみが発生する訳です。

上記の写真のようになる前に、ガスケット交換をお勧めします。さほど難しい作業ではありません。
ガスケット交換の際、注意して欲しいことが一つあります。液体ガスケットの使用です。液体ガスケットを全周に渡り、タップリと塗布されているケースがあります。そのような作業をしたのが車両のユーザーの方なのか、それともショップの方なのかは分かりませんが、そのようなヘッドカバーを見るたびに、ガッカリします。悲しくなります。
ヘッドカバーには、ガスケットに合わせて溝があります。その溝にまで液体ガスケットがタップリと付着している訳ですが、それをどのように取り除けば良いのでしょうか?次回の作業、次回の交換を、全く考慮していないとしか、私には思えません。
ヘッドカバーに液体ガスケットを塗布される方は、間違いなくそこまでの事は、考えていないのでしょう。ご自身で一度、液体ガスケットをキレイに取り除く作業をしてみれば、すぐに分かると思うのですが、残念でなりません。
そもそも、液体ガスケットなど塗布しなくても、純正のガスケットだけでオイルをシールしますので、液体ガスケットを塗布する必要など、全くありません。もしショップの方が液体ガスケットを塗布していたら、その作業者のスキルを疑ってみても、良いかもしれません。
私は30年前のXJR1200の時代から、一度もヘッドカバーに液体ガスケットを使ったことはありません。でも、オイル漏れも、一度もありません。
上記の写真のようにオイル漏れが発生したまま乗り続けると、オイルが焼けてヘッドにこびり付きます。そうなると、簡単には落ちません。ヘッド単体にして、金属ブラシで洗浄時にゴシゴシ擦った程度では、全く落ちません。どうしても落としてキレイにしたい場合は、サンドブラスト加工および塗装になるでしょう。
そのような、残念な状態になる前に、オイル滲みが発生したら、すぐにガスケット交換を行いましょう。
プッシュレバー(クラッチレリーズ)からのオイル漏れ

ヤマハのサービスマニュアルやパーツリストでは、「プッシュレバー」となっていますが、世間では通称「クラッチレリーズ」と呼ばれています。ここでは、プッシュレバーと呼びたいと思います。
このクラッチのプッシュレバーですが、この箇所からのオイル漏れも、XJR1300の持病と言われることがあります。上記の写真のように、時折オーバーホールしてオイルシールを交換すれば、オイル漏れは発生しません。
フルード交換なども含め、クラッチはあまり気にされることが少ないような気がしています。プッシュレバーを分解すると、このような状態のピストンも、実は珍しくはありません。

ここまでくると、正常に作動するとは思えません。酷い場合は、ピストンが斜めになって動かなくなることもあります。そうなると、当然ですがクラッチは切れません。走行不能になります。
ここまでにはならなくても、フルードが漏れ出すと、下にあるオイルフィルターのカバーやフレームの塗装を、傷めます。しかしオイル漏れが発生しても、通常であれば、シール交換で十分に対応出来ます。
これもヘッドカバーと同様、持病などといったものではなく、ただの整備不良だと思っています。数年に一度整備すれば、何の問題も発生しません。持病だと言ってオイル漏れを車両のせいにするのは、恥ずかしいことだと思って下さいね。

このようにオーバーホールしてオイルシールを交換すれば、まだまだ使えます。ツーリング先で走行不能にならないためにも、数年に一度で良いですから、プッシュレバーのオーバーホールを行いましょう。
スタータークラッチ(ワンウェイクラッチ)の故障

XJR1200のスタータークラッチ
これは、XJR1200のスタータークラッチです。XJR1200は、FJ時代の物を引き継いだ構造で、確かに弱点であり、壊れるケースが時々ありました。メーカーもその事は把握していたようで、XJR1300が発売される際、スタータークラッチの構造も変更になりました。
それでも、時折セルボタンを押しても空回りしている、などといったご相談があります。
このスタータークラッチですが、交換するのは簡単ではありません。クランクケースを分割しなければ、交換作業が出来ないのです。エンジンを降ろし、シリンダーヘッドを外し、ピストンやシリンダーを外し、クランクケースを上下に分割し、クランクシャフトを取り出さなければ、交換作業が出来ないのです。
作業の手順は、エンジンのフルオーバーホールと変わりません。カーボンを除去するかしないか、ピストンリングを交換するかしないか、違いはそんな程度です。ですから、スタータークラッチの修理や交換を依頼されても、私は行いません。フルオーバーホールして他の消耗パーツを交換し、カーボンを除去し、伸びたカムチェーンを交換し、ピストンリングを交換し、バルブのすり合わせや圧縮を改善し、そのついでにスタータークラッチの主要部品を交換するのが、ベストな作業かと考えています。

XJR1200と1300のスタータークラッチ
左がXJR1200、右が1300のスタータークラッチです。内部の部品も数点、変更されていますが、外観でも違いが分かります。
以前はオーバーホールの際、スタータークラッチの部品交換は行いませんでしたが、XJR1300も古くなり、スタータークラッチの故障や不具合も、時折ですが耳にするようになりました。ですから最近では、せっかくクランクケースを分割するのですから、スタータークラッチの主要部品の交換は、オーナー様の了承を得た上で、できるだけ行うようにしています。
インシュレーターのひび割れ
インシュレーターのひび割れも、持病と言われたことがありましたが、古くなって傷んだだけかと、私は考えています。


車両の保管状況も影響しているとは思いますが、古い車両では、多かれ少なかれ、このようなひび割れは発生しているものです。
ここまで酷くなると、ひび割れ箇所から空気を吸い込んでしまいそうですが、XJR1300のインシュレーターは、中の芯となる部分は樹脂で出来ています。ですから、簡単にひび割れ箇所からエアーの吸い込みは起こりません。
とはいえ、ここまでの状態になると、良いことはありません。明らかに要交換でしょう。
クリーナーボックスの装着されている純正の状態では、インシュレーター交換は、意外と手間が掛かります。後からインシュレーターのみの交換作業は、大変です。ですからひび割れがある場合は、エンジンオーバーホールに合わせて交換しています。
XJR1300特有の持病、と言われる箇所について、代表的なものを幾つかご紹介しました。でもこれらは全て持病などではなく、ただの整備不良だと考えてください。
オートバイは機械です。入手して乗りっぱなしで何もしなければ、傷んでいくだけです。調子良く走るためには、時々はメンテナンスも必要です。考えれば、当たり前のことです。出先で困らないためにも、調子良く楽しく走るためにも、時々はメンテナンスをしてあげてくださいね。
奥様や彼女を放っておけば、必ずツケが回ってくるものです。時々はプレゼントも必要でしょう。美味しいご飯も必要でしょう。甘い言葉も必要でしょう。なのに、愛車は乗りっぱなしで放っておく。これでは、痛い目に会うのも当然です。
古い車両だからといって、エンジンの不調を放っておいても、良いことはありません。25年も前のエンジンですから、不調の原因探しをするのではなく、フルオーバーホールをして、全てを調子良くしてあげるのが、最善の方法かと思います。
オーバーホールのご相談は、こちらから
XJR1300(1200)のオーバーホールやチューニングをお考えの方は、お気軽にご相談ください。お一人お一人に誠意を持って、お答えいたします。
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