野島エンジニアリング製特注マフラー
野島エンジニアリング製マフラーの試作品
二十数年ぶりにXJRレーサーを造るにあたり、無い頭を使っていろいろと考えることがありました。そんな、悩みの種の一つがマフラーでした。
レースを走るための車両ですから、性能とバンク角が最も大事です。でも、それらを満たすマフラーは、どこのメーカーなのか?今の私には全く分かりません。そもそも、マフラーが以前のように売れない時代ですから、あまりメーカーやブランドの選択肢は無いようです。
思い出すと、昔もマフラーには苦労した記憶があります。市販品を2、3種類、使ってみましたが、どれもバンク角が足りず、特に右コーナーでどこかが擦った記憶があります。
そんな時から使い始めたのが、関東では有名な、私たちの間では『小林管』と言われているマフラーでした。小林さんの工場は厚木にあり、何度もおジャマしたものです。いろいろな対策も、して頂きました。転倒修理も、何度もして頂きました。XJRレーサーだけでなく、耐久用のR1でもお世話になりました。しかし、その小林さんが数年前にマフラー製作から引退されて、依頼できる方も居なくなりました。
伝説の小林管
私の希望は、まずはバンク角の確保です。バンク角が足りなければ、何も始まりません。しかしストリートユースを前提にマフラーを作ると、センタースタンドやその取り付けステー、タンデムステップがバンク角確保のジャマになります。これらを避けて設計するから、バンク角が絶対的に不足するのです。
センタースタンド取付けステー
そこで、これらを取り外す事を前提に、どこかでレース用としてバンク角を確保したマフラーを製作して頂けないか、数社に連絡を取りました。しかし、どこからも良い返事は頂けませんでした。そんな中、ただ1社だけOK!のお返事を頂けたのが、『野島エンジニアリング様』でした。
野島エンジニアリングといえば、マフラーでは昔から有名で、私も以前、市販品を使っていたことがあります。創業者の野島さんは、現在では事業から退かれたようですが、何度かお話をさせて頂いたこともあります。
昔、テイストにも出場されていたことがあり、同じ旅館に宿泊したことがありました。その風貌から、相当な酒豪に見えますが、全く飲まれないとお聞きし、驚いたものです。
レースにも長年にわたり携わっておられる会社ですので、レース用マフラーの製造をして頂けるのは、非常に有難いことですし、心強い限りです。
テスト品
打診した時は多忙でしたが、しばらく時間を頂ければ、まずはテスト品を製作してみる、とのことでした。もちろん、まだレース用車両も出来上がっていない状況でしたので、時間が掛かっても全く問題はありません。
昨年の秋頃にテスト品が出来上がってきましたが、私の車両は形にもなっていません。しかしストリート用の車両でのテストでは、バンク角の確認も出来ません。そこでテイストに出場しているライダーの方に依頼して、筑波サーキットでテストして頂くこととなりました。
ある秋の日、練習のために私も依頼した方も、筑波サーキットに行っていました。そこで、まずは現地でフィッティングです。しかし、なぜだか集合部付近とオイルパンの突起部が、若干ですが干渉します。
筑波サーキットでのフィッティング作業
その後、依頼した方と私とで、それぞれゆっくりと別々の場所でフィッティングしてみましたが、症状は同じです。チタンの薄い材料ですから、干渉していれば、おそらくあっという間に穴が開いてしまいます。
試作品は、一旦野島エンジニアリング様に送り返しました。
走行テスト
筑波サーキットでのフィッティング作業
野島エンジニアリング様でも検証して頂きましたが、私たちのフィッティング作業時と同じような、オイルパン突起部とのマフラーの干渉は、何回か装着して頂いたようですが、全く無いようです。
送り返して頂いたマフラーを、ちょっとした工夫をして取り付けると、確かに干渉はありません。集合部も、丁度良い位置に収まります。その後も、同様な取り付け方をすると、干渉することはありませんでした。私たちの取り付け方の問題だったのかもしれません。
ただ、マフラーエンド部の角度が、少し外側に向き過ぎていた気がしましたので、そこだけは修正して頂きました。
そして、実走テストです。
筑波サーキットでのフィッティング作業
まだ寒い中でのテストになりましたが、3秒台の走行でもバンク角は何の問題もなく、路面と当たる箇所はありませんでした。高回転の吹けあがり方も、テストして頂いた方が普段使っているマフラーよりも、伸びが良いとの結果でした。つまり、『性能的にもバンク角も、何の問題も無い!』ということです。
久しぶりにXJR1300レーサーで走ろうとしているオッサンライダーには、十分過ぎるほどのマフラーが出来上がりました。
レース
予想もしていなかったようなトラブルがいろいろと発生し、満足な練習も出来ませんでした。数日前にやっと慣らしが終わり、タコメーターもなんとか間に合った、といった状態でした。ですから、今回の目標は『無事完走、できれば一桁順位』としました。あまり現実的ではない目標を掲げても、大口を叩くだけになりますから、まあこんなものでしょう。
肝心の『野島エンジニアリング製特注レース用マフラー』ですが、切れ込んで怖いくらい短めのFフォークで、当然車高も低い状態でしたが、バンク角は何の問題もありませんでした。この状態で私の体重とタイムを考慮すれば、おそらくどなたが使用しても、マフラーが路面に擦るような事は無いかと思います。
吹け上がりやトルク感、パワー特性については、比較する対象がありませんが、満足に練習も出来なかった状況でも2秒台が出ましたので、十分に合格かと思っています。
中断前のレースでは、私よりも遥かに体重の軽そうなライダーの方が乗っているXJR1300を、ストレートで抜けました。まだアクセルを開けて加速している最中でしたから、乗る人が乗れば、十分に速いかと思います。
このマフラー、サイレンサーは公道用にする必要はありますが、どなたにもご提供出来るよう、野島エンジニアリング様と話はついております。
ただし、センタースタンドやそのステー、タンデムステップは取り外す必要があります。そもそも目的はレースに使うためですから、そのあたりについては、始めから考慮しておりません。
レース車両へのフィッティング
当ガレージでご注文頂いた方には、取り付け時のちょっとした『コツ』も、お教えできれば、と思っています。
『野島エンジニアリング製特注レース用マフラー』
- XJR1300(1200)専用
- チタン手間げ
- コニカルヘッダー
- サイレンサーレス
- 価格:\165,000円(税別)
即納は出来ません。受注生産となりますので、ご注文後、お時間を頂くこと、予めご理解頂ければと思います。
また、基本設計がレース用のため、「○○社のステップとは干渉しませんか?」、「センタースタンドのステーを切除したくないのですが。」、「タンデムステップの処理方法を教えてください。」といったご質問には、申し訳ありませんが、お答えできません。このあたりの事は、全て自己責任でお願いいたします。
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