レースエンジンその2、シリンダーヘッド

加工の終わったシリンダーヘッド
加工の終わったシリンダーヘッド

40年近く前に設計された「FJ1100」がベースになっているエンジンですから、昔ながらのパワーを上げる為のチューニング方法は、とても有効です。たとえばポートの内径を拡大したり、滑らかに削ったりする事は、昔のエンジンをチューニングするうえでは、王道のような作業でした。

私は、自分が乗るXJRエンジンでは、1200の時代からずっと、ツーリングに使用するストリート用でさえ、必ずと言って良いほど、ポート研磨を含め、様々な加工を施していました。ノーマル状態だとパワーが足りなくて、なんだか物足りないからです。

今、製作しているレース用エンジンでも、やることは変わりません。このヘッドは、INポートもEXポートも、拡大加工しています。面研磨もしています。圧縮は、相当に高くなりそうです。

このヘッド、裏からちゃんと塗料が吹かれていないことが、よく分かりますね。分解して裏側からも塗装すれば、こうはなりません。でもレースに使うエンジンですから、そんな事は気にしませんし、そこに手間やコストを掛ける気には、今はなれません。それでも気になるようでしたら、次回のオーバーホール時にでも塗装しましょう。


拡大加工されたINポート
拡大加工されたINポート

拡大加工されたEXポート
拡大加工されたEXポート

ポートはINもEXも、写真のように拡大した上で、滑らかに仕上げます。もちろん、燃焼室近くのバルブシートとの段差も、指で触っても段差を感じさせない程度まで、滑らかに仕上げてあります。

筑波サーキットは、低速コースです。回り込んだ小さなコーナーばかりで、ストレートも短いです。コーナーの度に回転数は落ち、低回転からの回転上昇と加速が求められるコースです。ですから、最高速や高回転の伸びよりも、中低速のトルクや走りやすさがタイムに直結する、と昔から言われています。

中低速を優先させる場合は、ポートもあまり拡大せず、トルク重視にした方が良い、と言われています。マフラーに関しても、全く同様です。あまり太くしないほうが走りやすいよ、ということですね。

こんな話を聞くのは、なにも今始まったことではありません。30年前から聞いています。では、その話を踏まえたうえで、「どの程度の太さが最適」なのでしょうか・・・。マフラーのエキパイは、何φが良いのでしょうか?テールパイプは、何ミリが良いのでしょうか?シリンダーヘッドのINポートは?EXポートは?

実は私は、こういった比較テストがあまり得意ではありません。例えばマフラーのテストをするには、どれだけのテスト用マフラーを用意すれば良いのでしょうか?もしポート内径のテストをするとなった場合、幾つのヘッドを用意しなければならないのでしょうか?何度交換する必要があるのでしょうか?その交換作業は、誰が行うのでしょうか?

違いを理屈で言われれば、「あぁ~、なるほど」、と納得できます。もし次回製作する時は、「じゃあ、こうしてみよう、ああしてみよう。」ということも、もちろんあります。でも、基本は『ある物で何とかする!』という、典型的な「ザ・昭和」の教えで育ってきた年代です。無い物を欲しがっても、どうにもならない時代にレースをしてきました。だから、贅沢は言えない癖が付いています。「贅沢は敵!」の、困った時代のオジさんですね。

レースでも街乗りでも、そうやってオートバイに乗っていると、大抵の事は何とかなるものです。ですから今でも、わざわざ手間とコストを掛けて、何か大掛かりな比較テストをしよう!、という気には、あまりなれないのです。

もし万が一、奇特な方がいらっしゃって、テスト品の用意もしてくれて、それに掛かる時間やコストも心配しなくて良い状態でしたら、それは有り難くテストさせて頂くでしょう。でも残念ながら、そんな事は間違ってもありません。

もう一つ、何かを変える際に、譲れないことがあります。

『簡単に人の言うことを信用しない。』ということです。
困ったオジさんですね。

もちろん、言う方によって全く変わりますよ。例えばもしオートバイの事であれば、長年お付き合いをさせて頂いているヤ○ハの方々だったりすれば、そりゃ信用するでしょう。ワークスの監督でさえ逆らえない方々が言うことですからね。

でも同じことを、筑波サーキットで時折見かける程度の、ただの顔見知りの方が話すのであれば、そもそも話すら聞きません。

どこの誰かも知らない方に、いきなり
『儲かる話、ありまっせ!!!』

と言われて、いったい誰が信用するのでしょうか・・・
私にとっては、それと対して変わらない話に聞こえてしまうのです。

むか~~し、レースブーム真っ只中の頃は、一番多いときで1クラスに300台以上エントリーしていたことがありました。1クラスに150~200台なんて、普通でした。決勝レースに出走できるのは、確か筑波で32台でした。(4台×8列、かな・・・)

そんな時代は、同じクラスに仲の良い仲間なんて、まず居ません。楽しく話す相手も、いません。友達作りにレースをしていた訳でも、ありません。ですから、何か分からないことがあっても、同じクラスのライダーに聞く、尋ねる、なんて、考えられない時代でした。もし思い切って聞いたとして、いったい誰が自分のライバルに、本当の事を言うのでしょうか。

時代は変わりました。オートバイも変わりました。環境も育ちも、全てのものが変わりました。ノービスのレースでさえ、予選落ちがありません。練習から知り合い同士の、ほのぼのとした時間と空気が流れています。

少し危ない思いをしてでも、前のヤツを抜くぞ!、ぶつかるかもしれないけれど、インを差して抜くぞ!
そんな場面は、まず見なくなりました。「ザ・昭和」のどうしようもないオジさんから見ると、仲良しクラブの楽しい走行会のようにも見えることもあります。

そんな状況ですから、ライダー同士が細かな情報交換を、当たり前のようにしています。皆、他人やライバルから聞いた話を、信用しているのでしょうか・・・。それとも、ただ楽し話をしているだけなのでしょうか・・・。

今の時代、ネットで探せば、大抵のことは調べられます。しかしそれが専門的な知識、多くの経験からしか分からないようなデータだったとしたら、皆さんはそれらの情報を、信用するのでしょうか・・・。実際に自分で試してみるのでしょうか・・・。

私は、典型的な「ザ・昭和」のオジさんですから、そもそもどこの誰かも分からない方の意見や言っている内容は、始めから信用しません。全く信じません。特にオートバイの情報であれば、読むことすらしません。自分の身を危険にさらしてまでテストするなど、間違っても有り得ません。

よく目にするライダー同士の情報交換は、皆さん、どこまで信用しているのかなぁ~、何を求めて話をしているのかなぁ~、と感じることがあります。

すっかり話が脱線してしまいましたね。すみません。

最後に、廃盤となって久しい「FJ用インシュレーター」の写真で、今回は終わりにします。

拡大加工されたFJ用インシュレーター
拡大加工されたFJ用インシュレーター

今でも、この「FJ用インシュレーター」は、入手できます。ルートや方法は、聞かないでくださいね。でも、新品が入手できますので、使わない手はありません。

私は、その内径の大きな「FJ用インシュレーター」を、さらに削って内径を大きくして使っています。写真でお分かりかと思いますが、Oリングの溝ギリギリまで削って大きくしています。

チューニングなんて、そんな事の積み重ねだと思っています。もし拡大しすぎて低速トルクが細くなっていると感じた時は、自分の右手で何とかします♪

ヤマハXJR1300のことであれば、どのようなお悩みやお問い合わせでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

XJR1300のスペシャリストが、お一人お一人に親身になってご回答いたします。
お問合せ、ご相談はこちらからお願いします。