雨の筑波サーキット走行会

今から30数年前、友人から一人のバイク好きの同級生を紹介されました。何でも、親父さんのやっている自転車店の中でオートバイ屋さんを始めたらしく、私の記憶では、ラメ入りのグーリンに塗られたZ1だったかZ2だったかに乗っていたと思います。今なら、ちょっとばかり痛いカラーリングだったかもしれませんね。

親しくなった後は、そのお店がある埼玉県東松山市まで、週末の度に通いました。当時流行った「F-3」というレースを始めたばかりで、エンジンを分解したり部品を削ったり、大した知識も経験もない若者たちが、よくやっていたと思います。

当時の私には幼子が二人おり、家では「週末母子家庭」と言われていたものです。その代わり、という訳ではありませんが、バイクの用事が無い週末や夏休み、冬休みには、キャンプに行ったり、スキーに行ったり、海に行ったり、山に行ったり、よく一緒に遊んで過ごしたものです。

海のおじさんのところにも、毎年夏になると行きました。子供たちが覚えているかどうかは、分かりません。もしかしたら、どうしようもない“馬鹿親父”だったのかもしれませんね。楽しかった思い出として、記憶に残っていれば良いのですが・・・。

それから30年後、『カワサキと言えばRSイトウ♪』と言われるような、カワサキでレースを志す者なら誰でも知っている、有名ショップになっていました。全日本選手権でも8耐でも、すっかり有名チームのようです。

埼玉県東松山市のライダースショップイトウ

まだ彼が独身の頃は、夜中までバイクをイジった後、よく彼の部屋に泊まりました。筑波、鈴鹿、もてぎ、SUGO、西仙台など、よく一緒にサーキットにも行きました。一緒に夜中までエンジンをイジっていました。8耐、6耐、もて耐、シングルレース、選手権レースなど、いろいろなレースにも出場しました。

何度もお立ち台に登りました。何度も転倒しました。痛い思いも嬉しい経験も、沢山しました。結納の方法も教えました。彼の恥ずかしい話も、山ほど知っています。まあそれは、お互い様ですが・・・。

そんな彼が、真夏の8月に筑波サーキットで走行会をするようになって、どれくらい経つのでしょうか・・・。走りたい、とかではなく、行くのが一種の義務のようになっていますので、今年も行ってきました。


ガレージのお客様たち

今回は、地理的に筑波まで行けそうで、走るのが好きそうなお客様たちに、走行会のご連絡をさせて頂きました。特別に速くなくても、『走って楽しみたい!』と思える方なら、どなたでもウェルカムな走行会です。昨年はコロナの影響で中止になりましたが、2年前も3年前もお客様が参加されて、同じ走行時間を一緒に走って、楽しみました。

数名のお客様から、「申込みました。」という連絡も頂いていました。しかし、誰の日頃の行いが悪いのか、数日前の予報では、終日「雨」となっており、前日の予報では、なんと『大雨』となっていました。天気予報に『大雨』という表示があることを、初めて知りました。

雨の走行など、おそらく誰も望んではいないでしょう。もちろん私も、イヤです。でも手元には、賞味期限の切れていない、上物のレインタイヤがあります。昨年の7月、雨のレースで使用したタイヤで、このまま保存していても、だんだんとゴムは硬化し、使い物にならなくなります。

雨のスターティンググリッド

普段のスポーツ走行でしたら、予約しても雨予報の場合は、キャンセルして走りません。つまり、こんな時しか走らないだろう、ということです。朝から頑張ってタイヤ交換をし、「雨の中、一日走ろう!」と思って準備しました。雨の走行は、準備が大変ですが、一度走り出せば、それなりに楽しいものです。

走行会主催者の彼とは、長年に渡ってこのような付き合いをしています。私も一応、これでも国際ライセンスというものを持っています。返せ!とは、MFJからはまだ言われていません。ですから、「気をつけて走るから!飛ばさないから!」と言えば、どの走行枠も走らせてもらえます。つまり、ガレージのお客さんたちと一緒に走ることが出来ます。

それが主催者からの依頼であれば、ギャランティの発生する「インストラクター」ですが、勝手に走るただのオジさんですので、自分の走行料も支払っています。毎年、クタクタになるまで走りますが、誰も冷たいジュースすらくれません。ギャラは要りませんので、せめて走行の合間にどなたか飲み物でも頂けると、有難いんですが・・・。

走行中は、お客さんの後ろに付いたり、ラインや走り方の観察ができます。前に出てラインを教えたり、走り方や操作の見本をお見せすることもできます。まあ、こんな私がどこまでお手本になるのかは、何の保証も出来ませんが・・・(汗)。

こんなオジさんのワガママを聞いてもらえる走行会なんて、他にありません。彼の走行会だけです。ただ、さすがにこの雨では、お客さんたちも来るのかどうか、微妙です。


走行会当日

今回は、朝からタイヤ交換をしたり、セッティング変更したりで忙しく、またスケジュールが変更されて、自分の走行の合間に他のクラスの走行もあります。とにかく休憩時間もなく、写真を撮るヒマもありませんでした。妻が来ていれば撮れたのでしょうが、あいにく用事があり、来ていません。

しかし、今更ですが「GoPro」を購入しましたので、雨でしたが撮影してみました。


朝一番の走行

ほんの数人しか走行していません。朝からこの天候では、テンションも下がるというものです。

ただ私には、新品に近いレインタイヤがあります。『たくさん走ってね♪』とタイヤが優しく私に向かって言っているようです。はい!頑張って走ります!だから、転倒しないようにグリップしてね♪

この走行で、一つ気付いたことがありました。最終コーナーのクリップに付いた後、アクセルを開け始めた直後ですが、白線に乗った際に滑るのです。明らかに白線で滑るのです。今までそんな事を感じたことは、ただの一度もありません。

この走行会は、豪華な顔ぶれのゲストライダー達が来ています。つい先日に行われた全日本選手権で、雨のST1000クラスに出場したライダーもいます。GP3で連勝したライダーもいます。全日本を走っている現役のゲストライダーに話をするのも緊張するものですが、勇気を振り絞って、ちょっと聞いてみました。

「○○~っ、ちょっと来てくれ!」(手招き♪)
『あっ、おはようございます。なんすか?』
「あのさー、今走ったんだけど、最終イン側のグリッド線、滑らない?」
『あの白線は、ヤバいすよ。ヤマハの2台が転んだのも、たぶんあの白線です。特にヤマハ車は滑りますよ!カワサキはグリップしますけど。』
「マジかぁ~」
『気をつけて下さいよ♪もう怪我しちゃダメですからね。』

いつ新規に引かれたグリッド線なのかは知りませんが、あの滑り方はダメです。あと1秒詰めようと思ったら、簡単に転びそうです。全日本の決勝レースでヤマハ車が1周目2周目と続けて、それも先頭で転びました。その様子を、一部始終見ていました。ヤマハの監督さん、筑波に修理要請やクレームを言ってくれないかなぁ~

そんな話を聞いた後の2走行目と3走行目は、思ったよりもタイムが伸びませんでした。走りながら『滑りますよ』の言葉を思い出して、ビビリながらの走行となってしまいました。


お客さんの動画です。

数人しか来ませんでしたが、お客さんの後ろ姿を撮影してみました。恥ずかしい!、写りが悪い!、フォームが変だ!、速く見えない!、などというクレームは、一切受け付けておりません。

一人は、近所に住む後輩君です。小さい子供もいるのに、『レースに出たい!』とホザいています。困ったものです。

「おいおい、そんなところを走っちゃダメだぞ!」というところも、平気で走ります。まだまだ修行が全く足りていないようです。頑張って、もっとタイムを縮めて下さいね。


走行後の集合写真

走行時間の終盤には、雨も小降りになってきました。コースも少しずつ乾いてきました。帰り支度をするころには、ほぼドライです。

こんな時、「なんでもっと早くに乾かないんだ!」と幾ら言ったところで、何も始まりません。そんな事を考えるよりも、「普段は走れない雨の筑波をたくさん走ることができて、本当にラッキーだ♪」と思えば良いのです。この経験は、きっとこの先に活きてきます。

後片付けが終わった頃、集合写真を撮りました。誰も怪我することなく、無事に終わることが出来て、本当に良かったです。

楽しかった一日が終わりました。

走行後の集合写真

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