海の向こうからエンジンがやってきた!・その6

出来上がったXJR1300エンジン

順番が前後してしまいますが、エンジンの一番の要であるシリンダーヘッド作業と、エンジン塗装のご紹介をします。

シリンダーヘッド

取り外したXJR1300のシリンダーヘッド

IN側がオイルで少し濡れていますが、エンジンを降ろす際、もしくはその後の何らかの理由によるものでしょう。走行中にここまでオイルが浸入すれば、白煙を大量に吐くはずです。特に問題は無さそうです。

EX側は、このように白っぽく焼けているのが普通です。カーボン量も多い感じはしません。ごく普通かと思います。

取り外したXJR1300のINバルブ

これはINバルブですが、燃焼室と同様にオイルで濡れています。ただし、走行中のものでは無さそうですので、心配する必要もないでしょう。

バルブや燃焼室、ピストンに蓄積しているカーボンですが、ある程度は走行距離に比例していそうなものですが、実はそうでもありません。柔らかなカーボンが蓄積したものや、硬くて剥離が大変なカーボンが付着したもの等、いろいろと見てきました。

10万キロ、15万キロのエンジンもオーバーホールさせて頂きましたが、だからといってカーボン量が厚い、とか、エンジン内部の磨耗が激しい、といったことも、ありませんでした。

常々言っておりますが、やはりオイル管理が重要なんだなぁ~、と再認識している次第です。これを読まれている数少ない読者の方は、ぜひオイル交換をマメにして下さいね。エンジンは素直で、裏切りませんから。

カーボンを粗く落としたINバルブ

取り外したバルブは、まずカーボンを粗く落とします。といっても、簡単には落ちません。

まずは、塗装の剥離剤やそれに近い薬剤、クリーナー等を塗布します。そして少し時間を置いてからブラシ等で擦り落とします。すると、この程度にはなるものです。

この程度に粗くカーボンを落とした後、ボール盤と耐水ペーパーを使って磨いていきます。

磨き終わったINバルブ

当たり面を磨かないように気をつけながら、この程度まで仕上げます。耐水ペーパーを2、3種類使って、オイルも切らさずに磨けば、この程度にはなるものです。

目的が「カーボン除去」ですので、鏡面までは磨きません。チューニングエンジンで鏡面に仕上げる場合は、もう少し粗いペーパーから始めて、まず表面をもっと削ります。その後、時間を掛けて仕上げていけば、鏡面のような輝いたバルブになります。

組み立てたシリンダーヘッド

このエンジンは、ポート加工などはしていません。通常のオーバーホール作業だけです。それでも、キチンとカーボンを除去して洗浄すれば、このような状態のシリンダーヘッドに生まれ変わります。もちろん、バルブのすり合わせは全て行っています。

バルブのフェース面や、ヘッド側のバルブシートにキズや打痕が多くあった場合は、密着性を取り戻すために、バルブフェース研磨やシートカットを行って、バルブの当たりや密着具合を改善させます。しかしこのエンジンは、それらの作業が不要なほど、程度は良好でした。

オーナー様によると、走行距離は2万マイル(約32,000キロ)ですので、乗り方によっては、酷く傷んでいる場合も珍しくはありません。しかし、バルブコンパウンドを使っての『すり合わせ』作業だけで、十分に当たりを改善させられるほど、キズも打痕もありませんでした。


エンジン塗装

クランクケースまで組み立てたXJR1300エンジン

いくら程度が良いとは言うものの、15年以上経過しているエンジンです。アルミの腐食や汚れなどは、どうしても出てくるものです。今回は、オーナー様のご希望で、シルバーの耐熱塗装をしました。

色は、現物と全く同じ、という訳にはいきません。長い年月で焼けて変色していることもあります。右側のカバーは、実は塗装していません。中央部のアルミ地の加工が難しいからです。

右側のクランクカバー

右側のクラッチカバー

よく見ると、塗装したケースのシルバーと、塗装していないカバー類のシルバーの色が違って見えます。ちょっといただけません。

ということで、クラッチカバーは分解して外側だけを、クランクカバーは中央部までシルバーに塗装しました。

カバー類の塗装

これで見た目も、随分と良くなったと思います。

カバー類の塗装


格安エンジン塗装

当ガレージでは、フルオーバーホールの際、エンジンを新車のようにキレイに甦らせる塗装を、格安で行っています。

パーツを洗浄した後、サンドブラスト加工で汚れや腐食を取り除き、塗装の為の下地を作ります。その後、再度洗浄し、乾燥機で乾燥させてから耐熱塗料を使って塗装します。塗装後は専用窯により高温で焼き付けますので、強固な塗膜が出来上がります。

旧車ショップなどで塗装されているガンコート塗装で細かなパーツまで一式を塗装すると、簡単に45~50万円程度も掛かってしまうようです。

当ガレージでは、ご希望によりクラッチハウジングやオイルパン、スプロケットカバー、カムチェーンテンショナー、セルモーター、ジェネレーター、ヘッドカバー等も同色に塗装することが可能です。塗装専門店よりも随分を割安な価格設定ですので、興味がありましたら、オーバーホールの際にご検討頂ければと思います。

格安エンジン塗装の詳細は、こちらに記載しています。