海の向こうからエンジンがやってきた!・その3

海の向こうから、はるばるこんな日本の片田舎までやって来たエンジンですが、エンジンの発送前に、オーナー様から幾つかご相談を受けていました。その一つがキャブレターです。

シンガポールの事情など、全く私には分かりませんが、どうやら二輪車の文化は日本とは全く異なっているようです。修理しながら大事に長く乗る、という習慣はなく、殆どのユーザーは、オートバイの調子が悪くなったり動かなくなった時は、街のショップや修理屋さんになんとか動くようにしてもらい、壊れるまで乗る、壊れたら捨てる、そんな感じのようです。

オーナー様は、現地では規模の大きなヤマハの総代理店で日常の整備をされている、ということです。ショップにキャブのオーバーホールを勧められ、以前に購入していた新品キャブに変えようか思案している、とのことでした。

エンジンを送る際、キャブレターとクラッチのプシュレバーを同梱して頂ければ、私がオーバーホールしますよ、とお伝えしました。もちろん、オーバーホールしたからといって、新品になる訳ではありませんが、内部までキレイにクリーニングされれば、また暫くの間は調子良く使えるはずです。新品に交換するのは、その後でも出来ます。

送られてきたXJR1300エンジン

送られてきたXJR1300エンジン

ということで、到着したエンジンには、キャブレターやクラッチのプッシュレバー(クラッチレリーズ)も付いた状態でした。エンジンを分解する前に、まずはキャブレターのクリーニングをしてしまいましょう。


汚れているキャブレター

特に不具合はない、と言っておられましたが、新車で購入して15年、気になる不具合は無くとも内部はこのようになっています。

汚れているXJR1300のキャブレター

汚れているXJR1300のキャブレター

ダイヤフラムを外すと、ゴムのカスのような汚れが沢山でてきます。これは、純正キャブレターではよく見かける光景です。

フロートを外すと、底には汚れが溜まっています。ボディをクリーニングする際、どちらもキレイに掃除しておきましょう。

ジェット類で汚れた洗浄液

キレイにクリーニングされたジェット類

ジェット類は全て取り外します。思いのほか汚れていましたので、洗浄液に浸けましたら、あっという間に洗浄液に、これだけの色が付きました。

キレイになったジェット類は、見違えるような輝きになります。これだけでも、気分が良くなります。

クリーニングしてキレイになったXJR1300のキャブレター

クリーニングしてキレイになったXJR1300のキャブレター

キャブレターボディは、細かな通路が複数あります。内部まで全てキレイにしたい場合は、全てを分解し、強い洗浄液に漬けてクリーニングする必要があるでしょう。その場合は、全てのOリング類を新品に交換します。連結部も含め、完全分解です。しかしその作業は、完全にキャブレター専門業者の仕事です。私のような作業者が行うのは、現実的ではありません。

それでも、全ての取り外せるジェット類やパーツ類は取り外し、ゴムを傷めないようなクリーナー液を通路内まで吹き、念入りなエアブローをします。できるだけ調子よく使って頂きたいからです。

キャブレターボディやジェット類、その他のパーツをクリーニングしたら、組み立てていきます。ボディ外観の汚れや腐食までを、完全にキレイにすることは出来ませんが、それでも分解前を比較すると、相当にキレイになっています。内部に至っては、その差は歴然です。

出来上がったキャブレターは、エンジンが完成して送る手配が済むまで、ビニール袋に入れて、ホコリや異物が入らない状態で保管します。


クラッチのプッシュレバー

プッシュレバーとは、いわゆる「クラッチレリーズ」のことです。ただマニュアルやパーツリストでは「プッシュレバー」となっていますので、私はプッシュレバーと言っています。

分解したXJR1300のクラッチプッシュレバー

クリーニングしてキレイになったXJR1300のクラッチプッシュレバー

XJR1300のプッシュレバーは、長年乗っているとオイルが漏れてくる箇所です。持病の一つとも言えます。ただ、適切にメンテナンスをしてあげれば、漏れたフルード液でベトベトになるような事はありません。

このプッシュレバーは、交換されてあまり時間が経っていないような印象です。たいして汚れてはいません。オイル漏れの形跡もありません。メンテナンスもキチンとされています。

このように、分解クリーニングしてオイルシールを交換すれば、また数年は調子よく使えると思います。このプッシュレバーも、まだまだ使えるでしょう。


オーバーホールのご相談は、お気軽に

長く乗っていれば、消耗したり調子悪くなる箇所も増えてくるものです。壊れてからではなく、壊れる前にオーバーホールするのが、一番の得策です。

楽しいはずのツーリング先で、致命的な故障をしてしまえば、乗って帰ることもできません。一度調子が悪くなると、「また調子悪くなるのか・・・」と心配になり、楽しく走ることも出来なくなります。

15~20年も経過しているXJR1300を、今後も楽しく長く乗るためには、エンジンをオーバーホールするしかありません。オーバーホールのご相談は、お気軽にどうぞ。