XJR1300のRサスペンション

アラゴスタサスペンション

少し前の記事で、コンプリートマシンのRサスペンションを「アラゴスタ」にする予定だと書きました。そんな事を書きましたら、数名の方から「聞いたことのないメーカーです」とか、「なぜオーリンズにしないのですか?」といったお問合せがありました。

今回はRサスペンションについて、少し書きたいと思います。


サスペンションを変える理由

私がサスペンションを変える理由は、『楽しく乗りたい!』からです。

サーキットを走るレーシングマシンなら、『楽しい = 速く走る』ことですので、速く走れる車体になるよう、機能最優先となります。それが、一般公道を走行するツーリングマシンであっても、『楽しく』走れるように、自分なりのアレンジを加えた状態で走りたいのです。

ある程度のスポーツ的な走り方をしても、負荷を余裕を持って受け止めてタイヤをグリップさせ、運動性能も上げてくれるサスペンションが欲しいのですが、XJR1300というオートバイは、少なくともスポーツするオートバイではありません。ヤマハも、スーパースポーツと同レベルの走行性能を持たせようとは、全く考えていません。

体重の重い大柄な私が、ちょっと強めにブレーキを掛けたり、振り回すような切り返しをしたり、ちょっとだけ攻めたコーナリングをしようと思えば、オートバイはどこかに飛んで行きそうになります。ハンドリングは安定せず、サスは踏ん張ってくれません。もちろん、サーキット走行では、全くと言ってよいほど、そのままでは適応しません。

遠い昔ですが、初めて筑波サーキットにXJR1200を持ち込んで走行した時、久しぶりの走行で楽しくなってしまい、だんだんとペースアップして、調子にのって転倒しました。タイヤもブレーキもサスペンションも、何もかもが『お前、調子に乗るなよ!』と言っているようでした。その日から、私のXJRカスタムが始まりました。


ツインショックの特徴とは?

現行のスーパースポーツ車やリンク式モノサス(1本サス)車では、もしRサスペンションを変更するとすれば、これは『オーリンズ』しか考えられません。性能や自由度の高さ、入手のしやすさ等、どれを取ってみても、間違いなく一番でしょう。モトGPやWSB、全日本選手権など、速さを争うロードレースの世界では、まるで標準装備パーツのようにオーリンズが使われていることからも、その優位性が分かります。

対してXJR1300は、皆さんご存知のようにRサスはツインショック(2本サス)です。高性能なオートバイはシングル(モノサス)化されて久しいですが、ツインショックを装着されたオートバイでの高度なレースは、近年は行われてはいません。つまり、あまり開発されていない、進化していない、ということになります。

XJR1300は、標準で『OHLINS』ブランドのRサスペンションが装着されていますが、標準オーリンズは、アフターマーケットのオーリンズサスペンションとは異なります。見た目こそカッコ良いのですが、そこまで高機能ではありません。

多くのパーツが、レースという極限の争いの中で切磋琢磨し、しのぎを削りながら進化していく事を考えれば、ツインショックの進化があまり進んでいないのも、納得できます。オーリンズと言えども、ことツインショックだけを考えれば、モノショックのような絶対的な優位性は無いと思っています。

クァンタムサスペンション

私がXJR1200に乗り始めて、初めて買ったパーツが、このクァンタムサスペンションとミクニTMRキャブレターでした。ですから、もう26年くらい使っていることになります。もちろん、何度もオーバーホールはしていますし、仕様変更は何度行ったか、覚えていないほどです。

クァンタムサスペンションのサイトを見ると、当時とほとんどデザインの変わっていないサスペンションが、今でも購入できるようです。なんだか懐かしい気がしてしまいます。

http://www.qrs-j.com/Motorcycle/mcTwin.html

当時は、大した知識や経験もなく、なぜクァンタムにしたのかさえ、あまり記憶にはありません。まだオーリンズに、XJR1200用というサスペンションが販売されておらず、良さそうなツインショック自体が無かった気がします。ですから丸山選手などは、モノショックを2本使っていたような記憶があります。

そのような状況の中で、おそらく大した理由もなくクァンタムにしたのですが、サスペンションというのは、付けておしまいではありません。装着したところがスタートなのです。データや先駆者が何もない状態でしたので、その日から試行錯誤が始まりました。


ツインショックに求めるもの

筑波サーキットを速く走りたいから、Rサスペンションを交換した訳ですが、何度か走行をしていると、ああしたい、こうしたい、といった事が次から次へと出てくるものです。

初期のクァンタムサスペンションには、減衰を調整する機能が付いていませんでした。現場で出来ることと言えば、プリロード調整だけでした。そこで、クァンタムサスペンションの整備やオーバーホールを担当されていたショップに相談し、いろいろと教えて頂きながら、何度も何度も仕様変更をして頂きました。本当に長いこと、お世話になりました。

減衰調整の為のシム変更、スプリング変更、全長の変更、オーバーホールなど、本当に良くして頂きました。だから長い間、レースで使ってこられたのです。途中で、ボディまで変更して頂き、特殊工具を使って減衰調整も出来るようになりました。スプリングに至っては、何本テストさせて頂いたか分かりません。一番初期のモデルでしたが、使っていく中で、完全に私スペシャルのクァンタムサスペンションになった訳です。

XJR1300をレースで使わなくなっても、思い入れのあるクァンタムサスペンションです。オーバーホールしながら、今でも大切にツーリングマシンに使っています。

とはいえ、新たに製作するコンプリートマシンには、別のサスペンションを使いたい、という思いはありました。また現在、友人がサーキット走行をするためのXJR1300の車体も、1台作ることになっています。ならば、同じサスペンションを使って、いろいろと試してみよう、ということで、両車共にアラゴスタを使うこととなりました。


アラゴスタに決めた理由

ツインショックも、今ではいろいろと選択肢があるようです。ただ、長くXJR1300に乗っていると、全長はこのくらい、スプリングは何キロくらい、減衰はこのくらい、という明確な目安が出来ています。あくまでも私の個人的な好みによるものですが、純正と同じでは、腕の無い私にはスポーツ的な走りなど出来ません。おそらく多くの方も筑波を走り込んでいけば、Rサスペンションの長さやスイングアームの垂れ角は、同じような数字になるのではないかなぁ~、と思っています。

たとえば、そのような知識と経験があった中で、オーリンズを選んだとしましょう。まず、全長を変える必要があります。そのままでは話になりません。スプリングも交換が必要です。これらは、たとえサーキット走行をしない車両でも、私は変えて走りたいのです。

オーリンズサスペンションには、標準の仕様があります。購入時の状態のことです。ですから、まず標準サスを購入し、別途、スプリングやエンドアイを購入しなければなりません。それらと交換する手間もコストも必要です。自分の好みにするために、わざわざ新品に手間とコストを掛けて仕様を替えるのも、なんだかなぁ~、と思っていました。好みや仕様がある程度決まっているのですから、初めからその状態で組み立ててくれたら、手間もコストも無駄にはなりません。

そんなツインショックは無いかなぁ~、と探してみると、2社ありました。一つは、淡いグリーンのカラーが特徴的なナイトロンで、私が長年使っているクァンタムと同じ方式のようでした。パーツは英国製、組み立てとメンテナンスは国内で行っているサスペンションのようです。

名前は以前から知ってはいましたが、なぜか「これ、良さそうだなぁ~」、「使ってみたいなぁ~」とは思いませんでした。性能云々ではなく、おそらくカラーリングの第一印象があまり良くなかった、好みじゃなかった、といった程度の理由です。

コンプリートマシン製作を真剣に考え出した頃、昔からの友人が「高野さん、アラゴスタいいですよ♪」と言っていました。その友人が、こちらです。

K’sFACTORY & ASIA 松原泉Z1

後ろ姿ですが、アラゴスタのオレンジのスプリングがよく分かります。ちなみに、前方のRタイヤだけ写っているのは、おそらく私です。よくこんな風に、一緒に走りました。

実は彼とは、20数年前に、鈴鹿8耐を一緒に走りました。なので、昔から良く知っています。勤め先がホンダ系のサスペンションメーカーであることも、知っています。そんな彼が、「高野さん、アラゴスタいいですよ♪」と言うのですから、素直に信用しました。

K’sFACTORY & ASIA 松原泉NinjaH2R

40年以上昔のバイクで1分を切ろうかという勢いで走っていた彼ですが、最近は、最新のスーパーチャージャー付きオートバイで走っています。同じクラスを走るオートバイは、どれも速いですが、以前はストレートで抜ける唯一のオートバイでした。それが今では、ストレートで簡単に抜かれます。でも、モノサスになっても、Rサスペンションはアラゴスタを使っているようです。


上田隆仁

こちらの彼も、ツインショックでアラゴスタを使っています。やはり20年以上前から知っているライダーで、よく見ると上で紹介したH2Rと、仲良く楽しそうに走っています。

足の長さは二人ともほぼ互角で、間違いなく短足コンビです。でも、オートバイに乗らせると、足の長さは関係ないのでしょうか、二人ともに速いです。

上田隆仁

この角度で見ると、アラゴスタのオレンジ色のスプリングが、よく分かります。ちなみにオレンジはカタクラカラーなので、好きな色です。


加賀山就臣選手・刀レーサー

あと、やはりこの選手を忘れる訳にはいかないでしょう。そもそも、バイク好き・レース好きのおじさん達の楽しみのレースに、WSBで何勝もしていて、鈴鹿8耐の優勝経験もあるライダーが、最新のオートバイで本気で走るのは・・・?ちょっとばかり頂けない気もします。ですから昨年秋のレースで、わざわざツインショックとキャブレターを使ったことには、非常に好感が持てました。

上の画像では、アラゴスタ製のツインショックとオレンジスプリングが、よく分かります。以前彼がテイスト用に製作したマシンは、モノサスとインジェクションでした。外装パーツを外すと、カタナとは誰が見ても思えないような車両でした。まあ、私が言えたことではないのですが・・・(汗)。

私の場合は、ライダーの腕もなく、年齢が年齢ですので、笑って許してやって欲しいと思います♪


ベースとして申し分のないアラゴスタサスペンション

これだけの、そうそうたる顔ぶれのライダー達が筑波サーキットを本気で走り、それなりのタイムを出していれば、私程度のライダーの使用に関しては、全く問題はないでしょう。しかも親しいライダーもおりますので、いろいろな話も聞けますし、アドバイスを貰うことも出来ます。

何も、皆のように速く走ろうという訳ではありません。でも、速く走れる道具であれば、ゆっくりと走ることも出来ます。レースで使えるパーツであれば、ツーリングにも使えます。

ということで、Rサスペンションは、アラゴスタに決定です。


XJR1300のエンジンオーバーホールとチューニング

古くて調子が悪くなった車両は、エンジンのオーバーホールをすることによって蘇ります。

オーバーホールのついでにちょっと手を入れてあげたり、重要なパーツを交換することによって、純正状態からパワーを上げることも可能です。

XJR1300に関するお問合せ、ご相談はこちらからお願いします。

走行写真は、『サンデーレーサー』から引用させて頂きました。)