レース結果と今後の展望

筑波サーキットの電光掲示板

年に2回、オートバイ大好きでちょっとおバカなおじさん達の大運動会が、茨城県の筑波サーキットで行われています。以前は、「テイスト・オブ・フリーランス」という名称でしたが、主催が変わり、最近では「テイスト・オブ・ツクバ」となりました。私がこのレースに出場するようになって、もう20数年が経ちます。

「いつまで出来るんだろう・・・」
10年ほど前から、時々そんな事を考えるようになりました。でも幸いにして、今でもこんな道楽を続けることが出来ています。家族だけでなく、カタクラの社長を始め、多くの仲間や友人たちのお世話になって、なんとか続けることが出来ています。

とはいえ、さすがに最近では、いろいろな意味で厳しくなってきました。特に2年前の春のレースで大怪我をしてからは、なおさらです。そりゃそうでしょう。いい歳したオッサンが趣味のレースでケガをして、ヘリに乗ったんですから。しかもケガの部位と名称を全て聞くと、『ちょっと大丈夫なんですか?!』と思わせるものでしたからね。

その節は、本当に多くの方々にご心配とご迷惑をお掛けしました。でも、治って元気になると、また走りたくなります。目標が無いと走ってもつまらないので、目標とする具体的な数字を目指すことになります。そして、またレースに出場する訳です。

『今度ケガをしたら、バイクはバラバラにして捨ててやる!』
『今度バイクを壊したら、2度と直さない!』
『絶対にケガだけはするな!』

皆が、優しくそう言ってくれます。少なくとも、心配してくれているからこその言葉だと思っていますので、本当に有難いです。


感覚のズレ

決勝レースのスタート前

オートバイは感覚の乗り物だと思っています。特にサーキットを走る場合は、感覚が非常に大事です。

現在は、データロガーや各種センサーが発達し、走行中の様々なデータを分析することが可能になりました。長所や弱点、ライバルとの違い、セクターごとのタイム、スロットル開度からブレーキ入力、サスペンションの動き等々、一昔前ではプライベーターには夢だったような各種データが、比較的容易に確認できるようになりました。

ただ、各種データを分析したからといって、それだけで速く走れる訳ではありません。何故なら、ライダーも生身の人間ですから、出来ないことを簡単に出来るようにはならないからです。

「最終コーナーの進入が遅いから、そこであとコンマ3秒詰めなさい。」
「2ヘアピンの立ち上がりが遅いから、もっと早くに全開にしなさい。」

出来るのなら、誰だってとっくにやっているはずです。でも、なかなか出来ないからタイムも詰まらない訳です。なぜ出来ないのか・・・?。怖いからです。出来ないから、どうなるのかが分かりません。どうなるのか分からないから、怖いのです。転倒するかもしれない・・・。転倒して骨折するかもしれない・・・。オートバイは大破するかもしれない・・・。怖くて容易に出来るはずがありません。

私は、オートバイに乗ることもサーキットを走ることも大好きですが、あまり熱心に練習に行くタイプではありませんでした。ひどい場合は、レース前に2回くらい練習に行くだけでした。レースが終われば、また半年間は走りません。

それでも、タイヤの状態が良かったり気合いを入れて走れば、なんとか目標タイムは出ていました。練習で0秒台が出れば、とりあえず安心してレースを迎えていました。

5年ほど前までは、多少の感覚のズレはあったものの、走った感覚と実際のタイムの差は、「0.5秒以下」でした。練習量は圧倒的に足りていませんでしたが、大した問題にはしていませんでした。

でも最近では、その感覚のズレが「1秒」ある感じです。しかも、頑張ってもタイムが出ません。こんなこと、サーキットを走るようになってから、感じたことがありません。悲しいですが、これが歳を取るということなのでしょうか・・・。


タイムと結果と優先順位

決勝レースの第一ヘアピン

サーキットを走る上で、ラップタイムは非常に重要です。数字で速さが表される訳ですから。

また、レースに出場するからには、順位も重要になります。誰だって、前を走るライダーに追いつきたい、抜きたい、と考えるはずです。一つでも上の順位になりたい、と思うはずです。そう思わないようであれば、レースは止めた方が良いでしょう。

私は、タイムも順位もどちらも重要視しますが、実はあまりこだわってはいません。特に順位は、出場するライダー次第で変わるからです。

私の出場しているクラスは、簡単に言えば何でもアリです。ライダーも車両も、大抵のものは認められます。ですから、全日本ライダーなど、腕や技量が私よりも遥かに上の方も、問題なく出場できます。そんな方々が多く出場すれば、当然ですが私の順位は下がる訳です。

そういう事を嫌がる方もたくさんいますが、私は嫌ではありません。だって、自分より速いライダーと一緒にコースに出て一緒に走れば、楽しいじゃないですか。どこでどんな操作をしている、どこのコーナーはどう走っている、どんなラインでどこからアクセルを開けている・・・、そんなことが一番分かるのが、同じコースを後ろから走っている時です。言葉で説明されるより、どんな文章を読むより、一番分かりやすい授業なのです。

もし、そんなライダーを決勝レースで一人でも抜けたら、そりゃ最高の気分です。なかなかそんな気分は、滅多なことでは味わうことは出来ませんが。

順位もタイムも、もちろん大切です。良ければ楽しいです。でも、それよりも、同じようなタイムのライダーと一緒に抜きつ抜かれつをしながら走ること、前を走るライダーを抜くことの方が、私は楽しいと感じるのです。だから、一番こだわりたいところは、順位やタイムよりも、レースが終わった後の満足感でしょうか。


今回の結果は・・・?

決勝レースにて

走った感覚と実際のタイムのズレは、最後まで縮まりませんでした。良いタイヤで頑張っても、ボロくなった古いタイヤで走っても、タイムは変わりませんでした。頑張っても、タイムは縮まりませんでした。今まで簡単に出ていたタイムが、なかなか出ませんでした。

年齢のせいにはしたくない、今まではそう考えてきました。ある程度、それが出来ていたとも思っていました。でも、今回ばかりは違いました。

今回、新しいレース車両を造ってくださった方々が、レースウィークにやってきてくれました。とても心強いですが、一方で大きなプレッシャーもあります。でもレースをする上で、プレッシャーや背負うものは、必ずあるものです。手伝ってくれている方々の想い、助けてくれている方々の想い、応援してくれている方々の想い、許してくれている家族の想い、そういう気持ちや想いを背負って、私はいつも走っているつもりです。

実は決勝レース前にツナギに着替えた後、ツナギ姿でこの景色を見るのは、もしかしたら最後なのかもしれない・・・、そんな事をふと思いました。


スタート前のピットにて

決勝レースの前に、スタート前チェックというものがあります。マシンやヘルメットの確認です。最終コーナー出口あたりのピット前で行われますので、大抵は空いているピットの中に座り、一つ前のレースを見ながら時間を過ごします。

今回も同様に、空いているピットで座っていると、昔一度だけ出場した8耐の時の相棒が、隣にやってきました。もう彼とは随分と長い間、こんな事をしているような気がします。

以前の彼は、長いことカワサキのZ1で走っていました。そんなに古いバイクでよく走るな、と思ったものです。ストレートで抜ける、唯一のバイクでした。そんな彼が、今ではカワサキの羽の生えたバイクになりました。ストレートで簡単に抜かれます。

決勝レースの1週目、ヘアピンにて

少しの間、彼と話をしました。その後、スタート前チェックが終わって並んでいるマシンを、ボンヤリと眺めていました。もしかしたら、これが最後のテイストになるかもしれない、そんな事が頭に浮かんできました。

もし、頑張ってもビリになったら・・・
もし、頑張っても0秒が出なかったら・・・

もしその二つが重なるようになったら、もうこのクラスを走る資格は無いのかな・・・
そうなったら、キッパリと止めるしかないのかな・・・

感傷的にはなってはいませんでしたが、そんな事を考えていました。側に居た妻には、『もしかしたら、これが最後のテイストになるかもしれない。』そう伝えました。最後になるかもしれないので、ちゃんと見ておいて欲しかったからです。

結果は・・・

後ろに数台いましたので、なんとかビリにはなりませんでした。辛うじて0秒台にも入りました。だから、来年も走らせてもらえませんか・・・?

溝付きタイヤに鉄フレーム車両で、10年前には0秒台に入っているのですが、59秒台を出せずにここまで来てしまいました。あとコンマ1秒が詰まりませんでした。今更出るとも思いませんが、やっぱり走れるうちに出したいと思っています。

あと1年、チャンスをもらえませんか・・・?

画像は、サンデーレーサーから拝借しました。)