バルブタイミング調整とエンジン完成

バルブタイミング調整は、面研磨をした場合やカムシャフトを変更した場合は、必ず行う必要がある作業だと考えています。

今回オーバーホールしているエンジンのシリンダーヘッドは、古いノートの記載によると「0.5mm」の面研磨をしています。今回、面を出すためにさらに追加で研磨しました。

シリンダーも、もしかしたら面を削っていたかもしれない加工された物から、新品に変更されています。ベースGKの厚みも変わっています。カムチェーンは伸びた物から新品に交換しています。カムチェーンダンパも、前後の二つ共に交換しています。つまり、様々な条件が変わっている、ということです。ですから、バルブタイミングも調整し直す必要があるということです。


実際のバルブタイミング調整

XJR1300のピックアップベース部

ピックアップベースを見ながらクランクシャフトを回転させて、1・4番ピストンの上死点を出します。この写真の状態で、上死点が出ています。通常はこの状態で、カムスプロケットの位置を合わせて、バルブタイミングを合わせます。

カムスプロケットでバルブタイミングを合わせる。

STDエンジンであれば、この方法で合わせるだけで、全く問題はありません。ただし、どうしても製品誤差はあります。またカムチェーンは伸びていきますので、バルブタイミングも遅れていきます。従って、古いSTDエンジンのバルブタイミングは、どれも遅れているものです。

また、シリンダーヘッドを面研磨した場合、クランクシャフトとカムシャフトの距離も短くなりますので、バルブタイミングはやはり遅れます。カムシャフトを社外品に変更した場合も、「ボルトオンでOKです。」を信じるよりも、正確にバルブタイミングを出したほうが、より性能は発揮されます。

簡単に言えば、エンジンのパフォーマンスを上げようと何かをしたら、バルブタイミングも正確に調整した方がいいですよ!ということです。メーカー純正の状態から何かをする、例えば部品を替える、加工する、といった場合は、大抵はパフォーマンスを上げたいからです。

特にエンジンを降ろしたり、開けて中身を何かするのであれば、なおさらです。どうせ手間を掛けるのですから、もう一手間を掛けて、バルブタイミングを調整したらいかがですか?ということです。

正確に上死点を出す。

正確に上死点を出すには、このようにマイクロゲージを使います。ピックアップベースで出すよりも、ずっと正確に上死点が出ます。

こうして上死点を出したら、そこを基準にして、何度でバルブが開き始めるのか、何度で閉じるのか、を調整する訳です。その調整を出来るようにするために、カムスプロケットの取付穴を長穴に加工するのです。

長穴加工されたカムスプロケット

このカムスプロケットの長穴加工ですが、最初の頃は自分でやってみました。でもこれが、非常に硬いのです。火花が飛ぶだけで、ほとんど削れません。ダイヤモンドの高価なビットを付けても、削れる前にやる気がなくなりました。

以降、この作業は加工屋さんに依頼しています。加工屋さんは治具も作ったらしく、ちゃんと回転方向に動かすことができます。取付穴を横長にするだけでは、スプロケットを回転させられませんので、タイミングの微調整が出来ません。回転方向に動くことが必須条件です。

カムスプロケットを固定する。

カムスプロケットの位置をずらしながら、バルブタイミングを測っていきます。1回2回で合うことは希で、大抵は4、5回は位置を変更して測定します。ちょっと位置をずらしタイミングを測定する、これの繰り返しです。

これでOK!となったら、ボルトにネジロック剤を塗布し、カムスプロケットをカムシャフトに固定します。EX側が終わったら、次にIN側も同様に合わせていきます。

バルブタイミング調整が終われば、あとはヘッドカバーを取り付けて、エンジンは終了です。

オーバーホールが終わったXJR1300エンジン

カバー類も磨き直しましたので、一段とカッコ良くなりました。塗装もされて、キレイなエンジンに生まれ変わりました。


最後の小細工

自分のエンジンにしている小細工を、幾つかご紹介してきましたが、最後はこれです。

オイルシールを押さえるステー

ドライブアクスルのオイルシールが抜けないよう、ステーで押さえています。市販のステーで作った簡単なものです。

もう20年以上前になりますが、エンジンをオーバーホールした後に、このオイルシールが抜けたことがありました。当時は街乗り兼用でしたので、オーバーホール終了後、慣らしをしようと思い、家を出た直後に抜けました。

ハッキリは覚えていませんが、道志道でもどこかのオイルシールが抜けて、ブーツがオイルまみれになった記憶があります。同じオイルシールだったような、そうではなかったような・・・。いずれにしても、組み方が悪かったのだろうと思っていますが、それ以来、レース車両はこのオイルシール押さえを作って付けていました。念の為です。そしてそれを、そのまま街乗り車にも付けている、という訳です。

私以外には、このオイルシールが抜けた、という話は、聞いたことがありません。ですから、当時の私の組み方の問題だと思います。皆さんは、心配なさらずに。


XJR1300(XJR1200)にお乗りの方へ

以下のようなお悩み、お困りごと、ご要望はありませんか?

  • 古くなったので、エンジンのオーバーホールを検討している。
  • 異音がして、なんだか調子が悪い。
  • TMRキャブレターを取り付けて、セッティングまでして欲しい。
  • チューニングしてパワーアップをしたい。
  • これからも安心して長く乗りたい。

XJR1300のキャブレター車であれば、既に生産から15~20年程度は経過しています。XJR1200であれば、それ以上です。つまり、立派な旧車ということです。

今ならまだエンジン関係の新品パーツは、メーカーから出ます。しかしそれも、いつ終わるのかは分かりません。少しずつですが、廃盤になっているパーツもあるようです。

これからも長く安心して乗るためには、エンジンをオーバーホールするのも一つの方法です。メーカーから部品が出ている今であれば、それが可能です。

ヤマハXJR1300のことであれば、どのようなお悩みやお問い合わせでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

XJR1300のスペシャリストが、お一人お一人に親身になってご回答いたします。