シリンダーヘッドの小細工

普段乗っているXJR1200改1300ですが、カッパーGKからの吹き抜けや、それに伴うエンジンの汚れが気になり、オーバーホールしたいと思い立って早数年、やっとオーバーホールが終わりました。

シリンダーヘッドは、クランクケースを組み始める前に出来上がっていましたので、シリンダーまで組んだ後は、ヘッドを載せるだけです。

ヘッドについては、以下をご確認ください。

ちょっとばかりの小細工をしているヘッドですが、この状態での一番の違いは、何と言ってもポート径の大きさでしょう。IN、EX共に大きくなっています。違いの分かりやすい写真を探してみました。

XJR1300のスタンダードポート

このヘッドは、塗装してキレイにはなっていますが、ポートは純正のままです。この状態のINポートの入口は、直径で約33mmです。

拡大加工したXJR1300のインテークポート

こちらは、今回組む私のヘッドです。一目でポート入口の径が大きくなっているのが分かるかと思います。これで直径は、約38mmです。

33⇒38mm、ですので、たった5mmの違いだと感じられますが、面積を比べてみると、

  • 8.55平方cm ⇒ 11.34平方cm
  • その差:2.79平方cm(32.6%増)

径で5mm大きくなるということは、面積で『32.6%』増える事になります。1.3倍以上になるということです。シリンダー内に充填される混合気の量も1.3倍になる、という単純なものではありませんが、それだけ吸入効率は良くなります。この時代に設計された古いエンジンでは、非常に有効なパワーアップの手法であると言えます。

手間が掛かりますので、それなりの時間と加工費は必要になります。当ガレージでも、あまり依頼を受けることはありません。でも、見返りは十分にあります。ちょっと敏感に感じ取れる方であれば、ポート加工したエンジンとそうでないエンジンの違いは、分かると思います。私は、自分で乗るXJRエンジンでは、昔から必ずポート加工はしています。

ポートの拡大加工は、この時代の古いエンジンのチューニングアップでは、王道の加工です。ちょっと興味のある方なら、おそらく何度かは耳にしたことがあるくらい、昔は当たり前に行われていた手法です。

ただし、バルブを含めた鏡面加工仕上げは、私は行っておりません。頑張っても、バルブの鏡面程度です。ヘッドのポートや燃焼室、バルブなどの鏡面加工は、昔の雑誌ではよく見ました。実物も見たことがあります。チャレンジしたこともあります。しかしストリートユースでは、その効果を感じ取ることは、まず出来ないでしょう。労力も掛かり過ぎます。当然、その分のコストも掛かります。ですから当ガレージでは、鏡面仕上げはやっておりません。


ヘッドのスタッドボルト

シリンダーヘッドまで乗せたXJR1300のエンジン

シリンダーヘッドまで乗せたところです。塗装したおかげで、オーバーホール前と比べて随分とキレイになりました。半分は自己満足の世界でしょうが、やっとキレイになって、ちょっと嬉しいです。

さて、この写真にも、普通とはちょっと違う組み方が写っています。特別でもありませんし、大した事でもありませんが、自分のエンジンでは、25年前からやっている組み方です。ですが他の方の組んだエンジンでは、見たことはありません。それが、こちらです。

シリンダーヘッドのスタッドボルト部

XJR1300(1200も同様です)のシリンダーヘッドには、合わせ面側に細い4本のスタッドボルトが組まれています。前2本、後ろ2本です。そのスタッドボルトがシリンダー側と貫通しており、ナットで留める仕組みです。

シリンダーヘッドのスタッドボルト部

分かりやすくしました。このスタッドボルトです。

実はこのスタッドボルト、実に良い仕事をしてくれることがあります。このスタッドボルトの1本が曲がっており、シリンダーからヘッドを外せず、シリンダーとヘッドを取り外すのに半日以上も費やしたことがありました。曲がった理由は分かりません。

これとは別に、エンジンの分解時、どうにもヘッドがシリンダーから外せず、ヘッドとシリンダーを一緒に外したこともありました。

また分解時は毎回、ガスケットがスタッドボルトに引っかかります。シリンダーヘッドGKには、この4本のスタッドボルトを含め、合計で16本ものスタッドボルトが貫通しています。分解時、必ずどこかしらが引っかかり、ヘッドが簡単に外せません。イライラすること間違いなしです。どうせ大したトルクも必要としない場所です。ですからエンジンを分解するようになってから程なくして、私はこのスタッドボルトを通常のボルトに変更しました。

圧縮比で12:0を超えるエンジンでも、ボルトに変更したからといって、何も変わったことは起こりません。XJR1300をレーサーにしていた時代からそうでしたので、街乗り用にしても、ずっとそうしています。

シリンダーヘッドのスタッドボルト部

こちらは、カムチェーンテンショナーがある後ろ側です。前のEX側と同様にボルトで留めています。何度も分解するというような場合は、このように変更することで、作業性はずっと良くなります。分解時だけでなく、組み立て時も楽になります。

最初で最後のオーバーホール、ということでしたら、あまり変わらないのかもしれませんが。
ちなみに、純正のオイルクーラーを使用している車両には、この手法は使いません。

シリンダーヘッドのスタッドボルト部

この写真のように、スタッドボルトにオイルクーラーステーが固定されていますので、ボルト変更はせずにスタッドボルト仕様のまま組みます。


XJR1300(XJR1200)にお乗りの方へ

以下のようなお悩み、お困りごと、ご要望はありませんか?

  • 古くなったので、エンジンのオーバーホールを検討している。
  • 異音がして、なんだか調子が悪い。
  • TMRキャブレターを取り付けて、セッティングまでして欲しい。
  • チューニングしてパワーアップをしたい。
  • これからも安心して長く乗りたい。

XJR1300のキャブレター車であれば、既に生産から15~20年程度は経過しています。XJR1200であれば、それ以上です。つまり、立派な旧車ということです。

今ならまだエンジン関係の新品パーツは、メーカーから出ます。しかしそれも、いつ終わるのかは分かりません。少しずつですが、廃盤になっているパーツもあるようです。

これからも長く安心して乗るためには、エンジンをオーバーホールするのも一つの方法です。メーカーから部品が出ている今であれば、それが可能です。

ヤマハXJR1300のことであれば、どのようなお悩みやお問い合わせでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

XJR1300のスペシャリストが、お一人お一人に親身になってご回答いたします。