クランクケース組み立て、その4

圧縮漏れを直し、さらにエンジンの外観もキレイにすることが、今回のオーバーホールの主目的です。しかし細かな部分は、もう10年以上何もしていません。チェックすらしていない箇所も、結構たくさんあります。そんな細かなところまで確認して手を入れたりメンテナンスするのも、今回の大事な目的です。

組立中のエンジンの裏側

組立中のエンジンの裏側です。ケースは塗装していますので、随分とキレイに見えるようになりました。あとはオイルストレーナやリリーフバルブを取り付けてカバーをすれば、エンジン裏側は終わります。

このエンジン、ストレーナカバーに油温系のセンサーが取り付けられていますが、十数年、取り外した記憶はありません。下手したら20年間、付けっぱなしのような気もします。アルミのワッシャーも、相当にお疲れ様の状態でしょう。

油温系のセンサーとアルミワッシャ

量販店で、使えそうなアルミワッシャを仕入れてきました。大きなトラブルが無ければ、もうこのエンジンは開けない気もします。ですから尚更、細かなパーツにも気を使って組んでいきたいのです。


測定が終わって返ってきました。

ミハラのハイカムとワイセコピストン

SOHCエンジニアリングの渡辺さんに預けておいたカムシャフトとピストンが、ようやく返却されました。各寸法などを、細かく測定されたことと思います。渡辺さんの今後の製品作りに少しでも役立てば良いのですが。

まだどうなるのかは全く分かりませんが、XJR1300用カムシャフトが作られるようなことがあれば、ミハラカムシャフトの詳細だけでなく、乗り味もお伝えしているので、少しは活かされる事と思います。

XJR1300用カムシャフト、古くはFJ用と言われていましたが、現在は良いカムシャフトが全くありません。一時期、国内で販売されていた『ヨシムラST-1』は大人しいプロフィールで、モアパワーを求める方や乗り味を変えたい方にとっては、物足りない物でした。そのヨシムラカムも、生産終了になって久しいです。

現在、XJR1300用カムシャフトを入手しようと思えば、アメリカ製の肉盛りカムを製作するしかないのが現実です。肉盛りカムは製造方法を考えると、ブランク材から作られたものや削り出し製造されたカムシャフトには、やはり劣るでしょう。ただ製造コストや製造数量などを考えると、ある意味で優れた手法であるとも言えます。

でもやはり、国内のカムシャフト製造の第一人者であるヨ〇ムラさんが削りで製作してくれたらなぁ、と思っています。そうしたら、間違いなく2セットは購入します。SOHCエンジニアリングの渡辺さんは、そんな話を打診したり掛け合ったりできる方ですので、ちょっと期待しています。

渡辺さん、なんとか金額的にも折り合いを付けて、具体的な話を進めてくださいね。数百万円を立て替えることは出来ませんが、欲しい方を集めるお手伝いくらいは、何とか出来ると思います。頑張ります!


クラッチ

クラッチ回りは、多くのパーツをレースで使用していたものをそのまま使っている気がしています。程度もフィーリングも今一つなのは、当然ですね。

程度の良い中古のプライマリドリブンギア

これは、程度の良い中古のプライマリドリブンギアです。現在のパーツ価格ですと、3万円を超えます。ちょっと高価なので、クラッチ関係が多く入っているパーツボックスを探してみたところ、出てきた物です。組まれていた物は思った以上に傷んでいましたので、これに交換しましょう。

取り外したフリクションプレート

取り外したフリクションプレートです。赤みがかっていますが、今となってはどこのメーカーかは分かりません。アメリカのB社の気もします。結構摩耗もしていますので、問答無用で交換ですね。

私がXJR1200に乗り始めた頃は、今のように「FCC製」などという国内メーカーの高品質な強化クラッチは、入手出来ませんでした。「FJ用」として販売されていた、アメリカ製ドラッグレース向けパーツ程度でした。

今のような情報もなく、ライダーの経験も技術も知識も乏しかったので、まさしくトライ&エラーの繰り返しでした。クラッチの滑りには悩まされましたが、一番の問題はニュートラルの出しにくさでした。エンジンが掛かっているとニュートラルに入らないのです。

プライマリドリブンギアやクラッチボスは高価でしたので、ある程度の傷みや摩耗は目をつぶって使っていました。アメリカ製のフリクションプレートは、面が出ておらず歪んでいました。フリクションプレートやクラッチプレートも、頻繁に交換していた訳ではありません。

どれか一つが原因だったのか、それとも全ての要因が複合的に関係していたのか、今となっては分かりません。ただ、街乗り車にした後も、信号待ちの際のニュートラルは、相変わらず出にくかったです。おそらくマスターも含めて、クラッチ関係の多くのパーツをそのまま使ったからでしょう。ですから、停車する前にニュートラルにする癖が付いてしまいました。


クラッチのパーツ交換

次にいつ整備するか分かりませんので、クラッチ系はある程度は部品交換して、リフレッシュしてあげます。

プライマリドリブンギアとクラッチボスは、新品ではありませんが程度の良いパーツを保有していましたので、それらに交換します。プレッシャープレートも、純正品を加工する必要はありましたが、交換します。加工の内容は、こちらに掲載しています。

FCC製フリクションプレート

このフリクションプレートですが、STDの状態だと一番奥と一番手前の2枚だけ、幅の狭い(内径の大きい)タイプが使われています。画像のFCC製の場合では、上に写っている2枚がそれです。

一番手前側は、通常タイプを使用すると、プレッシャープレートに干渉して、半クラッチ状態となってしまいます。ですから、必ず幅の狭いタイプを使う必要があります。

対して一番奥側は、通常タイプを使用しても全く問題はありません。私は20年以上前から、通常の幅の広い(内径が小さい)タイプを一番奥に使っていました。接触面積を大きくするためと、不要な部品を排除するためです。


フリクションプレートの変更

純正のフリクションプレート

通常であれば一番奥には、幅の狭いフリクションプレートと共に、板状のスプリングとその奥のシートプレート、そしてクラッチボスに組み付けるリングが入ります。

純正のフリクションプレート

組んだ状態がこれです。この上にクラッチプレートが1枚入り、リングで外に出ないよう固定されます。

昔、様々なクラッチトラブルを起こしたことがありましたが、一度はこのリングが粉々になりました。それ以来、私は自分のエンジンにはこのリングを、一度も使ったことはありません。スプリングとシートプレートも付けません。一番奥にも通常の幅の広いフリクションプレートを組むだけです。

クラッチの奥

このような状態です。これで困ったことは・・・、ありません。ただ、クラッチのキレが悪い、ニュートラルが出にくい、といった症状が気になったので、スプリングとシートプレート、フリクションプレート、リングを組み付けて、実際に走って差を体感しようとした事がありました。

結果は、私にはその差は分かりませんでした。他のパーツの傷み具合や摩耗具合が影響していたのかもしれません。全てを新品パーツに変えたわけでもありません。でも差を感じなかったので、個人的な判断では、通常のフリクションプレートを組み、接触面積を増やす方が得策、と考えました。一番の問題は、パワーを上げた時のクラッチの滑りでしたから。

現在販売されているFCC製のコイルスプリングキットには、フリクションプレートの幅の狭いタイプは、1枚しかありません。つまり奥側は通常の幅広タイプを使い、スプリングシートやシートプレート、リングは使うな、という設定になっています。

しかし、FCC製のフリクションプレートだけを買い求めると、狭いタイプは2枚になっています。今回はフリクションプレートだけが必要でしたので、狭いタイプは2枚ありました。しかし奥には使いたくはありませんでしたので、そこだけ中古品になりました。まあ、ご愛嬌です。

クラッチは、エンジンを降ろさなくてもオイルすら抜かなくても、カバーを外せば交換やメンテナンスができますので、気楽です。


XJR1300(XJR1200)にお乗りの方へ

以下のようなお悩み、お困りごと、ご要望はありませんか?

  • 古くなったので、エンジンのオーバーホールを検討している。
  • 異音がして、なんだか調子が悪い。
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