クランクケース組み立て、その3

何度も同じエンジンを組んだりバラしたりして、組んだエンジンを実際に走らせていると、そのエンジンの癖やその機種特有の弱点、ウィークポイントなどが分かってくるものです。

ほんのちょっとした事かもしれませんが、そんなウィークポイントに対処することで、つまらないトラブルを未然に防ぐことが出来ます。


気を付けたいクランクのオイルシール部

クランクシャフト右側のオイルシール

これは、クランクシャフト右側のオイルシールです。組む際は、もちろん新品のオイルシールを組みますが、私は20年前から、このようにしています。

液体ガスケットを塗ったクランクシャフト右側のオイルシール

なぜかと言えば、このオイルシール部から、時折オイル滲みが起きるからです。カバーをしますので、外からは見えません。ですから、カッコ悪さも見えません。次回エンジンを分解する際、ちょっと液体パッキンのカスを取るのが面倒くさい程度です。

クランクケースを分解しないと分かりませんが、このオイルシールが組まれていた箇所は、このようになっています。

クランクに残ったオイルシールの跡

程度の差こそありますが、クランクケースを割ったXJR1200・XJR1300のエンジンは、ほぼ全てこのようになっています。オイルシールのカスがこびり付いているように見えます。

ミッションやシフトシャフト、クランク左側など、他にもオイルシールは何箇所にも使われていますが、このようにゴムのカスのようなものが付着しているのは、ここだけです。しかもこれが、簡単には除去できません。

私は、特殊な溶剤系クリーナーをウェスに染み込ませ、ひたすらこすって落とします。ペロッと一気に剥がれることはありませんので、気長にやるしかありません。すると、こうなります。

オイルシールの跡を消した後

気長に根気よくこすっていれば、やがてここまでキレイになります。ただ、よく見ると、黒いカス状のものが付着していた箇所は、少しザラついたように見えます。このザラ付きがオイル滲みを起こさせるのでしょうか。新品のオイルシールなのに、昔からオイルが滲むことが、時折ですがありました。なので私は、以前から液体ガスケットを塗布するのです。

なぜそうなるのか、ハッキリしたことは分かりません。オイルシールの材質の問題のような気もしますが、分かりません。他のオイルシール部では問題はありません。ここだけなのです。

ただ、オイル滲みが時々ですが発生することが分かっているのですから、ちょっとした対策ですが、やっておいた方が良いと思っています。オイルが滲んでからではなく、当初から対策しておいた方が良いでしょう。だから私は、昔からそうしています。レーサーでも街乗り車でも、XJR1200・1300では全ての車両でやっていました。

エンジンをご自身で分解される方は、ちょっと気を使った方が良い箇所かと思います。


オイルポンプ

オイルポンプのスプライン部

XJR1300のオイルポンプのスプライン部です。以前、このスプラインが破損したことがあります。それも、1度や2度ではありません。一番ひどい時は、スプラインが全てダメになり、取り付けられているギアが回らなくなりました。こうなるとオイルポンプは作動せず、オイルが行き渡らなくなり、エンジンは焼き付きます。

自分のレーサーだけの症状かと思っていましたが、街乗り車でも、ひどくはありませんでしたが、このスプラインにダメージがあった車両がありました。なので、このオイルポンプのスプライン部は、特に気にしてチェックする箇所です。

XJR1300のオイルポンプ

これがXJR1300のオイルポンプと付属パーツです。1200時代からは、何も変わっていないと思います。ということは、ここもFJ時代のままなのでしょうね。

以前、一度だけですが、分解したエンジンに、写真中央下に写っている『ダウエルピン』が付いていないことがありました。エンジンを開けた形跡がありましたので、ヤマハ出荷時からのものではありません。何らかの理由でエンジンを開けた時に、作業者が付け忘れたか無くしたか、そんなところだと思われます。

このオイルポンプは、クラッチ奥側に取り付けます。この場所です。

オイルポンプの設置場所

この場所にオイルポンプをセットするのですが、私のように手が大きい作業者の場合、ちょっと大変な場所でもあります。簡単に奥まで手が入りません。でも、そんなことは言っていられません。細かなパーツを幾つもセットする必要があるからです。

ダウエルピンを2個、Oリングを3箇所に取り付けます。Oリングは落ちないよう、工夫をする必要があります。そして、この状態にします。

オイルポンプのセット前の状態

この写真でお分かりかと思いますが、細長のダウエルピンは、位置を決めてガイドをするためのパーツです。この小さなパーツが無いと、オイルポンプの位置を決めてボルトで固定するのは、非常に困難になります。

しかし以前に開けたエンジンには、何故か付いていませんでした。当然ですが、発注しなければなりません。パーツ発注しようと思い、調べてみると・・・。

このダウエルピン、部品として出ていません。同じサイズのものも、ありません。ヤマハにも連絡して問い合わせてみましたが、なんと!部品としての設定が無いとのこと。つまり、欲しいならオイルポンプ丸ごと購入するしか方法がない、ということらしいです。

まあ、こんな箇所のダウエルピンだけが必要になる事なんて、予め設定してないということなんでしょう。かと言って、ダウエルピンに1万円以上も出すのは、どう考えても勿体無いです。ということで、古いパーツが入っている箱を、ゴソゴソと探しました。オイルポンプやクラッチが入っている保管箱の中に、小さなネジ箱があり、その中にこのダウエルピンもありました。めでたしメデタシです。


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