軽量クランク

XJR1300用スペシャル軽量クランク
XJR1300用スペシャル軽量クランク

以前に何度かご紹介している、軽量加工したクランクシャフトです。製作したのは、もう20年以上も前になります。

当時、良くして頂いていた方が内燃機屋さんに勤めており、そこの職人さんと呼べるほどのスキルを持った方が、削って仕上げてくれたクランクシャフトです。確か3本のクランクを削ってもらいましたが、これは最後の物で、一番気に入って使っていました。

XJR1300をレースに使わなくなり街乗り車を作る際、一番気に入っていたこのクランクシャフトを使った、という訳です。

今は、どの業界でも職人さんと言えるような熟練した方が減っているようで、このクランクを削って仕上げてくれた方も、とっくに引退されているそうです。そこそこ大きな内燃機屋さんですが、今の従業員の方にこのようなクランクを削れる人は、残念ながら一人もいないそうです。

ということで、形状や重量などのデータ取りのため、クランクをその内燃機屋さんに貸出していました。今の若い従業員でも、このような加工が出来るようにするため、と良い方に捉えています。きっと役立つ時が来るはずですから。

それを手助けするため、程度の良いSTDのクランクシャフトを2本、一緒に渡しました。実際に削って仕上げてみるためです。

いくら良い教科書があっても、実践してみないことには始まりません。上手く仕上がったら、秋に製作する車両に使ってみます。最悪、ダメになっても構いません。「36Y」のクランクシャフトなら、分解する手間を惜しまなければ、いくらでも入手できますので。

2本加工する内の1本は、秋から製作を始める私の2号機(コンプリートマシン)に使う予定ですが、もう1本はどうするのかは未定です。金額はある程度は必要かと思いますが、興味のある方は、お早めにお問合せください。

コンロッドを組み付けた軽量クランク
コンロッドを組み付けた軽量クランク

メタル、コンロッドボルト、ナットを新品にして、コンロッドをクランクシャフトに組み付けます。

毎回ですが、こうやって組み始めると、「やっとここまで来たな。」と思えます。なぜかといえば、ここまでで手間や時間の8割が必要だ、と思っているからです。

昔、友人がラーメン屋をやっていました。一人でやっていましたので、夜に寄った時は、よく片付けまで手伝いました。

そんな彼を見ていると、いろいろな事に気づきました。お昼からの営業なのに、朝の6時半にはお店に来て準備を始めます。チャーシューを作ったりスープを作ったり、食材を仕入れて切って、大鍋を火にかけ続けます。味を確かめ、掃除して、11時半に開店です。閉店後は、2時間掛けて掃除をして後片付けです。

いらっしゃい!と言ってラーメンを作ってお客さんに出すのは、彼の仕事の最後の1割で、残りの9割は下仕事や仕込みなんだな、と思ったものです。そこまでで、味やお店の雰囲気、清潔感などの全てが決まるのです。

オートバイエンジンのオーバーホールも、ラーメン作りと同じような気がしています。組み始めるまでに、仕上がりの9割は既に決まっているのです。そこまでに、どんな準備をしたか、部品の手配は大丈夫か、パーツの加工は済んでいるか、キチンと洗浄したか、工具は揃っているか、部品の消耗具合は大丈夫か、破損箇所はないか、パッキンやガスケットのカスはキレイに取り除いたか・・・

それらが終わらない限り、組むことはできません。ですから、何度やっても、『組み始めるまでの仕事が8割』だと感じるのかもしれません。塗装や加工があれば、9割だと思っています。


ケースの組み立て開始

塗装の終わったクランクケース
塗装の終わったクランクケース

塗装が終わったクランクケースです。もちろん塗料のかえりや合わせ面は、キレイに仕上げてあります。

塗装の終わったクランクケースアッパー
塗装の終わったクランクケースアッパー

まずはケースアッパーにスタッドボルトを立てていきます。このスタッドボルトですが、実は分解や組み立て時に、まるで悪意でもあるかのような悪さをすることが、時折あります。

1回2回ではなかなか分かりませんが、何十回もやっていると、よく分かります。

新品のスタッドボルト
新品のスタッドボルト

これは新品のスタッドボルトですが、12本中8本に、このようなゴムカバーが付いています。新品時はゴムですから、程よい弾力があります。しかし10年経てば硬化して、まるでプラスチックのようになります。

この硬化したゴムカバーが、ヘッドやシリンダーを取る際に引っかかり、抜けなくさせます。たかが硬化したゴムですが、どうにもならなくさせるのです。

この硬化したゴムのおかげで、ヘッドやシリンダーを外すのに1日掛かった、などというのは、何度もあります。外す途中でスタッドボルトを切ったこともあります。抜いたこともあります。とにかくジャマをします。

分解時だけでなく、新品に交換した後の組み付け時にも、引っかかることがよくあります。全てのスタッドボルトが真っ直ぐに立っている訳でもありませんので、ちょっと斜めになっている箇所のゴムが、ヘッドやシリンダーに引っかかります。

そんな事を何度も体験すると、このスタッドボルトのゴムカバーに意味は何も感じられなくなりました。無くても困ることは、何もありません。しかし、あって困ることは、何度も経験しています。そこで、こうすることにしました。

新品のスタッドボルト
新品のスタッドボルト

新品のうちに、ゴムカバーを切り取って外します。もう20年、この方法で組んでいますが、デメリットを感じたことは一度もありません。

ちなみに12本あるスタッドボルトですが、長さや形状の異なるものが数種類混在します。当然、取り付け位置は決まっています。ですのでパーツリストを確認し、取り付け位置を数字で書き込んでいきます。こうすれば、間違いがありません。


スタータークラッチ

スタータークラッチは、1200の時代は特有の泣き所でした。FJ時代からそうだったようです。そこで1300になる時に、スタータークラッチも改良されました。

1300になってからは殆ど聞かなくはなりましたが、それでもスタータークラッチのトラブルでエンジン始動が困難になった事例は、時折ですが耳にします。

スタータークラッチの一番の問題点は、クランクケースを割らなければ部品交換できない、ということです。つまり、フルオーバーホールと作業内容は変わりません。バルブのすり合わせをするかしないか、カーボンをキレイに除去するかどうか、その程度の違いです。

伸びているハイボチェーン
伸びているハイボチェーン

上の写真は、私のエンジンです。今回開けた際のものです。クランクシャフトとスタータークラッチを繋いでいるハイボチェーンが伸びているのが分かると思います。自重で垂れ下がっています。走行距離は少なくても、10年ちょっとでこのようになります。

オーバーホールをご依頼下さるお客様のエンジンは、走行距離も年数も、ほとんどの場合はもっと多いです。しかもハイボチェーンは、カムチェーンのようなテンショナー機構がありません。伸びたら遊びが増えていくだけです。ですから最近では、オーバーホールされるお客様には、主要部品だけでも交換することをお勧めしています。

分解したスタータークラッチ
分解したスタータークラッチ

私のエンジンのスタータークラッチを分解して、パーツ交換をするところです。スタータークラッチ丸ごとではなく、あくまでも主要部品だけです。でもこれだけで、この先も安心して乗ることが出来ると思いますが、どうでしょうか。

セルを回しても、時々空回りするようなエンジンは、いつスタータークラッチがダメになっても不思議ではありません。出先でエンジン始動が出来なくなれば、帰ることも出来ません。そうなった時、どうやってエンジンを始動させますか?

ケースを割らなければ交換できないスタータークラッチ、そろそろ換え時かもしれませんね。


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