オーバーホール前の測定
私が普段乗っているXJR1200改1300ですが、エンジンをオーバーホールしたいな、と思って既に数年が経過しました。今年のGWはコロナ感染症の影響もあり、出かける予定もレースも、全ての予定がキャンセルになりましたので、特段やることがありません。
そうだ!エンジンをオーバーホールしよう!
エンジンを降ろして分解してしまえば、もう走ることもできません。乗りたくなったら、エンジンを組むしか方法はありません。それくらい自分を追い込まなければ、またこの状態で走ってしまいそうです。
どうしても自分の車両は、後回しになってしまいます。
さあ、頑張ってエンジンをオーバーホールしましょう!
エンジンを降ろす前に
私は、「何馬力出た!」という話には、あまり興味がありません。趣味で乗るオートバイですから、数字よりも乗った時の楽しさを優先したいからです。とは言え、今の自分の車両が何馬力なのかは、ちょっと興味がありました。
以前に作った車両のオーナーが測定していたこともあり、また組み直した際にOH前と後の比較もできると考え、シャーシダイナモを所有するショップに出向きました。同じショップ、同じ機械なら、比較も可能ですから。
うる覚えの記憶ですが、12年ほど前に今の車両を作った際の測定では、157~158馬力程度は出ていました。150後半だった事は確かです。1年後に、インナーシムを純正のアウターシムに変更しましたが、それだけでそう変わるとも思えません。
150psくらいはあるかなぁ~、と思いながら測定してみると・・・
ち~~~ん・・・(涙)
まあ、予想はしていましたので、ショックというほどではありませんでしたが、予想外の低さではありました。
ブルーの線が今回の測定値で、「143.1ps」
赤線は、私が以前に製作したXJR1300で、「156.9ps」
シリンダーヘッドからは圧縮漏れしていますし、調子も今一つであったのは確かです。オーバーホールするまで、と言い聞かせながら、だましだまし乗っていました。
ですが、低中速では溢れるようなトルクもあり、前のバイクに付いて行けない、ということもありませんでした。ただ、やはり中間域から上では調子は今一つで、キャブレターのセッティングも、妙な方向にズレていきました。中間域の線の乱れも、おそらく圧縮漏れの影響でしょう。
コンプレッション
ガレージに戻り、エンジンを降ろす前にもう一つの計測作業が待っています。コンプレッション測定です。エンジンのオーバーホール前と後にも、よく行います。
さて、私のお疲れ様エンジンは、どのようになっているのでしょうか・・・
1番と4番は、このように「14.1~14.2k」程度はありました。12年も酷使されてきたエンジンとしては、まあ上出来でしょう。しかし圧縮漏れは、主に2番と3番からです。ここは、どの程度あるのか・・・
・・・
あまりのショックに、写真を撮ることも忘れてしまいました。
結果は、2番3番共に、「4.6~5.0k」程度しかありません。これではパワーなど出るはずもなく、よくこれで「143ps」も出ていたものです。
ヘッドの圧縮漏れは、XJR1200でレースを始めた当初からずっと悩まされてきました。分解する度に面出し研磨をしたり、ガスケットを変更したり、スタッドボルトをクロモリにして締付トルクを上げたりもしました。その中でも一番効果があったのが、カッパーGK(銅製GK)を使うことでした。
カッパーを使うには、シリンダーにも加工が必要でした。メタルの合わせGKと違い、多少吹き抜けても、エンジンが冷えた状態で増し締めすれば、ある程度は改善します。メタルGKでは、一度抜けたら終わりです。ですので、レースではカッパーを好んで使っていました。
現在のエンジンを作る際、クランクケース以外はレースで使用していたパーツの中で、一番状態が良さそうな物を使って組み上げましたので、パーツの多くは中古品でした。ヘッドもシリンダーもピストンも、です。その結果、必然的にGKもカッパー仕様となった訳です。
ですが、カッパーGK仕様では、長年一般公道を問題なく走れるような耐久性は、やはりありません。高圧縮にしていますので、なおさらです。
1200の頃は紙のようなGKでしたが、現在の1300の純正GKは、メタルの3枚合わせになっています。早くこの純正GK仕様に変更したい!と思い、早10年が過ぎた、ということです。
GKの小話
ヘッドGKの吹き抜けで悩まされていた頃、あるヤマハのお偉い方に相談したことがありました。
「何をやっても、すぐにヘッドGKが吹き抜けるんですよ。」
『オマエの組み方が悪いんじゃないのか?』
「キチンと組んでいるつもりなんですけど・・・」
そして1年後・・・
『ヨーロッパで吹き抜けのクレームが多くて、GKを変更したんだよ。』
「ほら!やっぱりオレの言った通りじゃないですか。」
『向こうは、アウトバーンとかで飛ばすからなぁ~』
「オレの言ったことを信用しておけば、クレーム前に改善できたんですよ。」
そしてヘッドGKは、メタルの合わせタイプに変更されました。でも当時は、コスワースの80mmピストンを使っていたこともあり、カッパーを使い続けました。
調子が今一つなのに、汚いまま使い続けてゴメンね。頑張ってくれたね。塗装もして、外観もキレイにして組み直します。ですから、もうしばらく頑張ってくださいね。
長い間、お疲れ様でした。
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