XJR1200のオーバーホールについて

最近、ブログの更新頻度がダダ下がりです(汗…)。申し訳ございません。

有難いことに、私のような者にオーバーホールをご依頼してくださる方が続いており、他の仕事もありますので、油で汚れた手を動かしながら、忙しく日々を過しております。

そんな中、世間様と同じようにお盆休みを頂き、他界した両親の故郷に挨拶回りとお墓参りに行ってきました。新潟県なのですが、ちょうど新潟市が40℃を越えた頃で、新潟が日本で一番暑い地域になっていました。暑すぎて少し痩せたかもしれません。

帰りに栃木県に寄り、「ツインリンクもてぎ」で行われた「2&4レース」を見てきました。いやぁ、本当に暑かった。暑すぎで、見ているだけでバテました。けれど、レースも熱くて、面白かったです。


XJR1300エンジンのオーバーホール

最近、XJR1200のオーバーホールについて、時折ご相談やお問合せを受けることがありますが、私はあまり1200のオーバーホールはお勧めしていません。何故かと言えば、以下の主要パーツが廃盤になっているからです。

  • ピストン
  • シリンダー
  • コンロッド

エンジンパーツは、大部分が1300の物を使えます。しかし排気量が異なりますので、ピストンやシリンダーは1200専用です。もしエンジンを開けて、ピストンやシリンダーにダメージが見つかった場合、新品の純正パーツが手に入りませんので、他の方法を考えなければなりません。

それらパーツの交換が必要になった場合、実際どのようにすれば良いのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。


ピストン

ピストンも磨耗します。磨耗だけでなく、こんな事になっているケースもあります。

ダメージのあったピストン

これは1300のピストンです。オーバーホールした際に、このダメージを見つけました。オーナー様は、気が付かずに乗っていたようです。おそらく異物混入によるものです。1300で起こることですので、当然ですが1200でも起こりえます。

このように、ピストンにダメージがあった場合、純正品が既に入手出来ませんので、社外品を使うしか方法はありません。しかし1200に使える77mmピストンは、社外品では見つかりません。

XJR1200は、FJ1200を引き継いでいますが、FJ1200で検索しても、出てくるのは『ボアアップピストン』ばかりです。ワイセコ、コスワース、Wossner、JE、SOHCなど、いろいろなピストンを見たり実際に使ってきましたが、1200の純正サイズである「77mm」のピストンは、現在ではどこからも発売されていないようです。

つまり、XJR1200でピストン交換をしようと考えた場合、ボアアップするしか方法がありません。ボアアップとなれば、シリンダーの加工や修正も必要になってきます。つまり、ある程度のコストが必要になる、ということです。

ちなみに私は、XJR1200のエンジンを4機持っています。1300にも使えるパーツが沢山ありますので、捨てないで保有しています。最近では、ちょっとジャマになってきていますが。欲しい方、いますか??

パーツ箱を探せば、1200の程度の良い中古ピストンも、1~2セットはあった気がします。まあ、それを使えば、ピストン交換は可能かもしれませんが・・・。


シリンダー

キズのあるシリンダー

キズのあるピストン

上記の画像は、同じエンジンから取り外したシリンダーとピストンです。当然ですが、このままでは再使用できません。これは1300でしたので、ピストンとシリンダーは、新品に交換しました。

XJR1200は、スリーブ圧入タイプのシリンダーですので、異物混入などで1ヶ所だけスリーブがダメになっている場合は、スリーブ製作・打ち換えで済む場合もあります。ただ、磨耗で4箇所共にダメな場合は、4つのスリーブ製作・打ち換えになりますので、相当なコストを覚悟する必要があるでしょう。

もしボアアップするのであれば、1300サイズの79mmピストンであれば、1300のシリンダーを使えば良いでしょう。80mm以上のピストンの場合は、スリーブ製作+打ち換えになりますので、やはりコストがかさみます。

ちなみに1200をボアアップしようとした場合、XJR1300のシリンダーを使う場合でも、シリンダーはクランクケースに入りません。スリーブ径が大きいためです。

その場合は、クランクケースを削って広げる必要があります。ここにもコストが必要になってきます。


コンロッド

コンロッドの交換が必要な場合・・・、おそらく相当なダメージがあった場合になるかと思います。通常では、あまり考えられません。

私が想像するのは、バルブ落下、ピストン破損、コンロッド破損、焼き付き等の原因でコンロッドが曲がった、焼き付いた、折れた、といった事です。今までに何度も経験したり見てきたものです。ひどい場合は、いわゆる『エンジン全損』という状態です。

こうなれば、コンロッド交換ではなく、エンジン交換です。ですから、コンロッドの交換はあまり考えなくても良いでしょう。

ちなみに、やった事はありませんが1200のエンジンに1300のコンロッドは組めるはずです。違いは表面処理です。

1300になって、コンロッドには浸炭処理という表面加工が施されるようになりました。強度を上げるためでしょう。ですから、もしコンロッドを交換したくなった場合でも、1300のコンロッドを使う事は可能かと思います。


あまり知られてはいませんが、1300のエンジンパーツは、シルバーカラーが廃盤になっています。今年の春まではあったのですが、シルバーはもう出ません。

黒も、どうやら後期型インジェクション仕様のブラックのみのようです。初期のブラックと比較すると、多少違って見えるかもしれません。機能的には問題ありませんが、見た目も大事ですので、悩みどころです。

まあ、1200は既に20年以上経過していますので、エンジンの色も焼けたりくすんだりして、多くは変わってしまっています。もし色も気にするのであれば、エンジン塗装をお勧めします。サンドブラストで下処理をしますので、ヘッドカバーなどのパーツも、同じ色に塗装できます。ちょっと雰囲気が変わります。


1300エンジンへの積み替え

私の車両も1200でしたが、1300エンジンに積み替えています。先日のお客様も、1200から1300に積み替えて、車検まで取って納車しました。知人にも、同じように1300に積み替えている方が何人もおります。

XJR1200は、既に発売から25年経過しています。調子良く走っている車両も、あまり見かけなくなりました。

中には1200にこだわっている方もおりますが、もしこだわりが無いのであれば、どうせオーバーホールして調子良くするのであれば、1300エンジンに載せ換えるのが良いのではないでしょうか。

排気量が上がり、パワーもトルクも向上します。新品パーツも出ます。中古エンジンも、いろいろと出回っています。エンジン以外の部品も、そのまま使えます。

それでも、どうしても「1200にこだわりたい!」という方は、ご相談に乗りますので、お問合せ下さい。ただし、1300の通常オーバーホールよりも、少しコストが掛かるかもしれません。

お問合せ、ご相談はこちらからお気軽にどうぞ。