フルカスタムのXJR1300、その10・車体編2

フルカスタムのXJR1300ですが、車体はほぼ出来上がりましたので、この後はエンジンを積み、仕上げていくことになります。

キズや埃が気になりましたので、車体は屋内で組んでいましたが、ガレージに移動して、早速塗装されたエンジンを積みます。

エンジンを積み終わったフルカスタム XJR1300

今回は、キャブレターは変更せずに純正キャブレターを使いますので、エアクリーナーボックスを取り付けます。分解前に試乗できなかったこと、20年物の古いキャブレターであることから、ちょっとばかり心配ではありますが、保管前に分解クリーニングはしています。試乗してもし調子が悪かったら、その時に対応策を考えましょう。

オーナー様の予定では、このまましばらく乗って、その後ミクニTMRに変更したい、とのことでしたので、リミッターの心配も無くキャブレターの変更にも対応できる、「ウオタニ」製のイグナイターキットを取り付けることになりました。


ウオタニSP2フルパワーキット

ウオタニSP2フルパワーキット

説明書を見ながら組み立てていきますが、そう難しいことはありません。イグニッションコイルのステーが、ちょっと取り付けにくいくらいでしょうか。

私がレースを始めた頃は、今では当たり前のウオタニ製品など無く、電気系では苦労しました。ようやくオーバーでイグナイターが発売されましたが、それまでは、オーバーの試作品のような怪しいイグナイターで対応していました。

私のXJR1300には、今でも当時のオーバーイグナイターが付いていますが、点火マップを含め、昔に設定したままの使用で何の問題もありません。

一度、軽いデトネーションによりコスワースピストンを溶かしたことがありましたが、それもごく軽度なものでした。高圧縮比、高回転の常用、走行時間などを考えれば、仕方のないことだったと思っています。

その時のコスワースピストンは、取り外した後、捨てずに今でもどこかにしまってあります。思い出の品は捨てられない、困ったタイプのおじさんです。

オーバーのイグナイターは、確か99年式までの対応で、それ以降の年式には対応していません。そもそもコネクターの形状が違った気がします。

あまり知られてはいませんが、エイジュウプロでも、レーシングイグナイターが販売されていました。そちらは、2000年以降の車両にも対応した製品があった気がします。

おそらく多くのユーザーの方が乗り始めに考えることは、「スピードリミッターをカットしたい!」ということでしょう。古いオーバーイグナイターでもウオタニでも、スピードリミッターやその他のセンサー類はキャンセルされます。その上で、点火時期を変更することもできます。

ただし、点火時期の変更には、知識と経験が必要です。なぜなら、簡単にエンジンを壊すことになるからです。リスクがある、ということです。

STDエンジンとハイチューンされたエンジンでは、最適な点火時期は全く異なります。吸入効率を高め、高圧縮化されたエンジンで点火時期をむやみに進角させると、簡単にピストンが溶けます。

もし進角させようとお考えの場合は、十分に注意する必要があります。キャブレターセッティングの薄過ぎと進角のセットは、デトネーションを起こすリスクが常にあることは、忘れないでくださいね。


用途違いの傷んだボルト

角の潰れているロックナット

さて、話が少し脱線しました。

エンジンを積み、様々なパーツを取り付けていく中で、当然ですが取り外したボルトを使う事になります。分解時に気をつけてはいましたが、時折、このような状態のネジ類を目にする事になりました。

なぜ、このボルトをここに・・・?
なぜ、ナメたナットを使っている・・・?

どう見ても、やっつけ仕事で仕上げたとしか思えません。手の届くところにあったから、といった理由で使われたとしか思えません。何度も手を入れた形跡のある車両ですが、このようなボルトやナットが使われていると、少し悲しい気分になります。

このような時、
『自分のオートバイだったら、そのまま組むか?』
と、いつも考えます。

汚れたパーツ、錆びたボルト、ナメかかったボルト、オイルの滲んだブレーキ回り、調子の悪いキャブレター、戻りの悪いスロットル・・・

あとは取り付けるだけ、といった時は、どうしても面倒臭く感じてしまいますが、このようなボルトやナットは、問答無用で交換します。入荷までの時間は掛かりますが、その方がずっと気分は良いですから。

ということで、その都度作業は止まりますが、これらのボルトやナットが出てきた際は、新しいボルト・ナットに交換します。


錆びたマフラーフランジ

磨いてサビを落としたマフラーフランジ

マフラーも、取り付ける前にキレイにしてあげましょう。

ハンドグラインダーにバフを取り付けて磨くと、パイプ部はちょっと質感が変わりましたので、磨くのは止めました。クリーナーで汚れを落とす程度にします。

サビたフランジは、コンパウンドを付けてバフで磨き、サビを落としました。それだけでキレイに見えます。

取り付けた後に目立つ箇所は、取り付け前に手を入れてあげた方が、手間も省けて後悔もしません。「あと一手間」を、常に心がけたいものです。


塗装したクラッチプッシュレバー

塗装したクラッチプッシュレバー

これは、クラッチのプッシュレバーです。XJR1300の弱点の一つとも言われ、よくオイル漏れを起こします。オイル漏れを放置すると、汚れるのは当然ですが、クラッチの切れが悪くなったり、切れなくなったりすることもあります。

最悪のケースは、プッシュレバー内のピストンが斜めに固着し、ギアが変えられなくなることです。そうなると、ニュートラルにも出来ず、クラッチを切ることも出来ません。つまり、エンジンを始動して走ることが出来ない、ということです。出先でそうなれば、家に帰ることもできません。

できれば1~2年に一度は、シール交換などのメンテナンスをしてあげて欲しいパーツです。高価なパーツではありませんので、定期的に新品に交換するのも、一つの方法です。

マフラーまで取り付けたフルカスタムのXJR1300

マフラーとオイルクーラーまで取り付けました。フランジのサビも無くなり、それだけでキレイになった気がします。

ここまでくれば、あと少しでエンジンを掛けることが出来ます。