テイストを走ったXJR1300たち

ここ数年、テイストオブツクバに出場する「XJR1200・XJR1300」が急激に増えてきました。

マシンの入手のしやすさやレギュレーション変更によるものと思われますが、XJR1300好きにとっては、何とも喜ばしいことです。

多くのライダーがXJR1300に乗っているからといって、別に私の知り合いでも何でもありません。そんなXJR1300で走っているライダーの中から、個人的に知っている数名を、ちょっとご紹介してみましょう。


SUPER MONSTER Evo・ゼッケン45番

今から30年ほど前、『J-SP750』というクラスがありました。簡単に言えば、750ccのプロダクションクラスです。

頭に付く「J」は、ジュニア、という意味で、ノービスと国際A級の間のライセンス区分のことです。それ以前は「国際B級」、少し経つと「国内A級(NA)」と言われるようになり、「ジュニア」と呼ばれたのは、ほんの数年間だけだった気がします。

彼は、そのSP750時代に同じクラスを走っていた、むか~しのレース仲間です。当時のマシンは私と同じで、ヤマハのOW-01でした。とにかく、開けっぷりが良かったことを覚えています。

一度、富士スピードウェイでSP750のレースがあり、昔の富士の最終コーナーで、レース中、私の目の前でハイサイド転倒しました。高速コーナーなのに、そんなに開けなくても・・・と思った事を覚えています。

2年目にSP750が自動昇格対象クラスになり、現ヤマハ監督や私と一緒に、国際A級に昇格しました。

昇格した後も数年間は全日本を走っており、その後も時々、SUGOの全日本や地元の十勝のレースに出場していたようです。15年くらい前にSUGOの耐久レースに出た際、久しぶりに会いました。一日中雨が降っていましたが、彼の乗るGSX-Rが、まるで田植えでもしてきたかのように、ドロだらけになっていた気がします。

XJRには、1200の初期の頃から乗っており、時々相談を受けていました。クランクシャフトが折れた、と言って、クランクを送ったこともありました。だから彼のエンジン仕様は、おおよそ分かっています。

昨年夏に造ったSOHCピストンを組んであり、後軸で165ps出ているそうです。十勝でも速くなった、と言っていました。

昨年春からテイストに、遠く北海道からやって来るようになりました。凄いエネルギーです。そのモチベーションは、どこから出てくるのでしょうか。私も少しは見習わなくてはいけません。

昨年春はレースの記憶がなく、一緒に走った気がしません。秋は私が出場しませんでしたので、今回、久しぶりに彼と一緒に走るのが、少し楽しみでした。

グリッドに並ぶと、目の前に彼はいました。同じようにスタートを失敗し、2周くらい目の前にいましたが、上手に先行車両を抜いていき、離れていってしまいました。

後ろからそんな彼を見ていると、XJRとは思えないくらい、ストレートも走っていました。長年乗っていて煮詰まっているとはいえ、エンジンパワーも開けっぷりも、さすがです。

リハビリおじさんは付いていけず、ただ見ているだけでした。今度は付いていけるよう、もう少し頑張らないといけませんね。

何か必要なパーツがあったら、また言ってくださいね。そしたら、たまにはお返しに、カニでも届くかなぁ~。


SUPER MONSTER Evo・ゼッケン24番

筑波サーキットの主のような存在の、皆さんご存知のトヨちゃんです。

以前、単品製作されたフレームにR1のエンジンを載せ、外観はFZのようなマシンで、私の知らない速い世界を走っていました。どんなマシンに乗っても速く、私のようなただのバイク好きのおじさんが競争できる相手ではありません。

今回は、付き合いのあるショップのマシンでの参戦のようです。外見は1300Cですが、インジェクションではなく、キャブレターが付いているようです。

練習で後ろからその走りを見る機会がありましたが、
「最終コーナーは、そう走るんだね♪」と、この歳になってお勉強させてもらいました。

とはいえ、そう簡単にマネできる訳もありません。そんなところでそんなに開けるのも、怖くて普通のおじさんにはできません。まあ、それが簡単に出来るなら、とっくに58秒出ていても、おかしくはありませんが・・・。

マシンは、実物をジックリ見た訳ではありませんが、良く出来ているようです。Fフォークはお決まりのゴールド物が付いていますし、ストレートも走っているように見えました。

ただタイムを見る限り、筑波の主としては、ちょっと物足りない感じもします。練習でも、何度かコース上で止まっていましたので、何か問題を抱えていたのかもしれません。

「なんか時々、コース上で休憩していたね。」
『1周走るのが大変なんですよ♪』

危なっかしさがなく、とてもスムーズに走っているように見えます。その上手な走りは、見習いたいものです。今度缶コーヒーをおごるから、個人レッスンを優しくしてくれないかなぁ~。


MONSTER Evo・ゼッケン6番

チームの後輩君です。私のお古の街乗りXJR1200を所有していましたが、ヘッドガスケットが吹き抜け、エンジンを中途半端にバラして、早4年・・・。

本人は、『レーサーにしてテイストを走りたい!』と口では言っていましたが、このままの状態では、あと10年経っても形にはならないでしょう。チームの社長にも何度か、「あいつのエンジン、組んでやれよ♪」と言われたこともあり、頑張ってエンジンを1機、造ることにしました。

クランクシャフトにも手を入れ、ヘッドはスペシャルチューンです。しかも、ピストンはSOHC製です。カムシャフトは間に合わなかったので、手持ちのヨシムラST-1で組みました。

私が造ると約束したのはエンジンまでで、後は彼が自分で何とかする約束でしたが、動き出しがちょっとばかり遅く、初走行はエンジンが出来上がって半月以上過ぎたGWとなりました。

車体も電気もやっつけ仕事で、初回からトラブル発生です。レースウィークの木曜日は、私も一緒に筑波に行きましたが、また残念な結果でした。トラブルに対処して社長が対応してくれましたが、別のトラブル発生です。

木曜日の夜は、私が夜中まで組み直し作業をして、何とか走行可能な状態にしましたが、私が行かなかった金曜日、またもトラブルが彼を襲います。XJR1300での初レースは、修行の連続です。

土曜日の走行は諦めて修復に専念し、迎えた日曜日。予選は何とか走り、そこそこの15番手でしたが、決勝中にトラブルが酷くなり、リタイヤとなりました。

今回のトラブルが発生する理由を、私は二つしか知りません。その内の一つが怪しいのですが、今後、時間を掛けて検証していくことにしましょう。

何はともあれ、お疲れ様でした。
今後も続ける気、あるかなぁ~。


MONSTER Evo・ゼッケン56番

仙台からやってくるアベちゃんです。20年前には、もう同じクラスを一緒に走っていました。

勝ったり負けたり・・・。私がXJR1300で、アベちゃんは、リザルトで確認したら、『GPZ-750R』となっていました。オートバイもツナギも、色は地味でしたが、走りは派手でした。

確かアベちゃんが初優勝した時は、すぐ後ろで見ていた気がします。つまり、抜けなかった、ということです。良いヤツなので、『やったなぁ!良かったなぁ~』、そんな言葉を掛けた気がします。

8年前の東日本大震災の時は、仙台にいたのを思い出して、なんだか心配になり、電話したものです。何度掛けても繋がらず、無事に居てくれたらいいなぁ~、と思っていたところ、1週間ほど経って、やっと向こうから電話がありました。

「オレ、軽トラで走っていたんすけど、揺れてひっくり返るかと思いましたよ。」そんな話をしてくれました。とにかく無事で良かったです。

その後、また筑波で見かけるようになりました。オートバイは、ニンジャからXJRに変わっていました。ショップで造り込まれたマシンのような、高価なパーツや派手なパーツはあまり使われていません。写真をよく見ると、FフォークはSTDのようです。

昨年春のレースでは、私より一足先に八千代病院に運ばれたと聞きました。一緒に運ばれたヤツはケガが酷かったようですが、アベちゃんは軽症だったようで、なによりでした。

今回のレースは、優勝です。さすがです!


MONSTER Evo・ゼッケン77番

彼とも以前、同じクラスを何度も一緒に走りました。確かその頃は、あるショップのマシンに乗っていたと記憶しています。

テイストの10日ほど前、後輩君が筑波に行ってきました。帰ってから、こんなやりとりがありました。

「高野さん、清水選手って知ってますか?」
『おう、知ってるよ。』

「XJRでFをグニャグニャさせながら毎周走っていて、転倒してバイク燃やしたらしいです。」
『あいつなら、やりかねないなぁ~』

1週間後、筑波に練習に行くと、彼がいました。マシンも、走れる状態になっていました。

『バイク、燃やしたらしいじゃん♪』
「キャブが燃えちゃったんですよ。」

『直ってるみたいだけど、誰かのバイクをパクッてきたのか?』
「ちゃんと自分で直したんですよぉ!」

もちろん彼のバイクも、Fフォークはどう見てもSTDです。
そして決勝レースは、見事2位です!



レースは、お金が全てではありません。幾ら掛けたかで速さが決まる訳でもありません。でも、有利になるのだけは確かです。

XJR1200やXJR1300が増えてきて、ショップも参入してきて、マシンの出来栄えも一段と良くなってきました。多くの車両には、まるで純正パーツかのように、ゴールドのFフォークが装着されています。

そんな中、2台の決して贅沢にコストを掛けているとは思えないXJR1300で、揃ってのお立ち台です。乗り手の腕の良さでしょう。さすがです。

でも、良い子のみんなは、彼らの真似はしないで下さいね。危ないですから・・・


全ての画像は、以下のサイトより拝借させて頂きました。
https://wild.gr.jp/SundayRacers.html