1年半ぶりのチェッカー

2019年春・テイストオブツクバ

先日、筑波サーキットでのレースに出場してきました。タイムはというと、見るも無残なものでしたが、今回の目標である『無事完走!』を、なんとか達成できました。

昨年の春のレースで、今までに経験したことのないようなケガを負い、家族や仲間に多大な迷惑をかけてしまいました。

「景色を見たい!」と言ったら、同行して頂いた医師に怒られましたが、ヘリコプターにも乗ったようです。あまり記憶にはありませんが・・・

私の入院中、母親の具合が悪くなり、無理して退院を早めてもらいましたが、まるで退院するのを待っていたかのように、退院日に母親が亡くなりました。一度も『バイクを止めろ!』と言わなかった母でした。

夏過ぎには体調は万全に戻りましたが、そんな事もあり、自分へのケジメとして、初めて自分の意思で秋のテイストへの出場を取り止めました。


どうするのか・・・

もう随分と前から、サーキット走行はレース前に2~3回行くだけです。絶対的に練習量は足りていません。後輩君たちには、「もっと練習してください!」と怒られています。

でも、普段の生活をしていると、久しぶりに筑波に走りに行く事が、ひどく億劫になっていました。筑波の予約、時間の調整、オートバイの整備・・・。一度動き出すと、「やっぱりオートバイに乗るって、楽しいなぁ♪」と思えるのですが、そこまでいくのにエネルギーが必要なのです。

人間は、どんどん退化しています。車両も、長年の酷使により各部が劣化しています。その上、走行時間が少ないのですから、思ったように走れないのは、当たり前と言えば当たり前です。

そんな状態で、「1分を切る!」と思って走れば、そりゃあ転ぶのも当たり前というものです。ここ数年の状態ですね。

そんな中、初めての大ケガです。回りが『もう止めろ!』と言うもの当然です。長年お世話になっているチームの社長には、『お前のバイクはバラバラにして、ゴミにして捨てておく!』と言われました。

でも、不思議と家族は、本気で止めろとは、誰も言いません。言って止めるくらいなら、もうとっくに止めていると思ったのかもしれません。

近い将来、サーキットで走れなくなることは、自分でも分かっています。この歳まで頑張ってきて、止めていく仲間もいます。やりたくても出来なくなった仲間もいます。

自分はどうだろう・・・
いつまで走れるのだろう・・・

そんな事は、10年前から時々、考えています。

『バイクに乗っている時間が愛おしいんだよね。』と言っていた先輩がいます。その気持ち、今ならよく分かります。

レースは、一人では出来ません。いろいろサポートしてくれる仲間がいるからこそ、ライダーとして走れるのです。

チームの社長にも相談しました。同じくらいお世話になっている方にも相談しました。もちろん、妻にも相談しました。そして、もう少しだけ走らせてもらうことに決めました。

ワガママなのは、分かっています。でも、走らせてください。皆さん、お願いします。

あっ、子供たちには相談していません。
『いい歳して、何考えているの?止めなさい!』と言われるのが、分かっていますから。ケガをした際にも、散々と怒られました。だから、怖い娘達には相談もしていません。


そして練習

転倒時に砂を吸った可能性がありますので、まずはエンジン整備からです。

私のレーサーは「R1」のエンジンを積んでいますが、R1エンジンの整備は、全て社長にお願いしています。
参考:砂を吸ったレーサーのエンジン

整備後、4月の初旬から筑波通いが始まりました。久しぶりに自分のレーサーに乗ります。あのレース以来ですから、1年ぶりです。

が、しかし・・・

2週目に黒旗を振られ、ピットインします。
「高野さん、マフラーから白煙が出ていますよ。」

オートバイから降りて確認すると、白煙がモクモクです。
「こりゃ、すいません。」

ピットロードから車両を出し、一息入れた後、整備を始めます。でも、目視では何も不具合はありません。エンジンを掛けても、白煙は出ません。オイルの匂いもしません。

念のため、マフラーまで外し、エキパイやEXポートも確認しますが、オイルでベトついた様子は、どこにもありません。原因は何なのか、さっぱり分かりません。異音もしません。水も噴いていません。

筑波の職員の方に、エンジンを始動して白煙が出ていないことを確認してもらい、2本目を走行することになりました。レコードラインを走らずに、3週目にピットインすることを伝え、それまでに白煙が出ていないか、見ていてもらいます。

そして3週目に、ピットに入ります。
「高野さん、やっぱり出ています。」

マシンを下りて確認すると、1本目と同じです。ご迷惑をお掛けしました。本日は撤収です。

でも、オイル臭くはありません。オイルが燃焼室に入って燃えているのとは、ちょっと違う感じです。とにかく、帰ってから検証してみましょう。


その後も、トラブル続き・・・

吸った砂をキレイにしたもらった後、サイレンサーを交換しました。本番用はひどく傷んでおり、修理に出しました。その時、スペアとして1本、サイレンサーを社長から貸してもらいました。

もしかしたら、そのスペアサイレンサーのせいなのかも・・・。ふとそんな気がして社長に言うと、
「そういえば、誰かがエンジンブローさせた時に付いていたものかも。」という話になりました。

サイレンサー内部にオイルが多量に入り、オイルだから時間が経っても乾燥せず、それが熱で燃えて白煙となっている…。他の理由も考えられない状況なので、サイレンサー交換で済むのであれば簡単です。

白煙で走行できなかった数日後、2回目の筑波の予約を入れていました。1年ぶりになるので、出来るだけ走って、身体と感覚を少しでも戻したいと思い、いつになく予約を頑張りました。

念のため、ハイエースに積み込む前の明るい時間にサイレンサーを交換して、エンジンを掛けてみました。すると・・・

マフラーから白煙が出ます。明日の走行は中止決定です。

その後、後輩のK君に手伝ってもらい、エンジンを降ろしました。社長にもう一度、中を見てもらうためです。

結局、4月に予定していた走行は、計8本も走れなくなりました。先が心配です。

再度エンジンを開けて見てもらい、積み終わったのが4月も終わる頃でした。

少なくとも、エンジンを掛けただけでは、白煙は出ません。よし、筑波に持ち込みましょう。走ってみなければ分かりませんから。

そして筑波サーキットにテストに行きました。快晴です。絶好のテスト日和です。

マフラーからの白煙は、何度も確認しましたが、出ていません。直ったようです。ただ、ライダーが1年ぶりなので、マシンは大丈夫になりましたが、乗り手が焼きつきそうです。自分では分かりませんでしたが、おそらく身体から白煙が出ていたのは間違いありません。

約1年ぶりで、自分のマシンで走ることができました。タイムは・・・頑張っても、やっと1秒に入った程度です。イヤイヤ、今日だけはタイムを気にしないでおきましょう。

その後、シフタートラブルやチェーントラブルが続き、5月に入っても予定していた走行の半分しか走れません。最後の走行もトラブルが出たため、急遽前日の練習に参加することとしました。

トラブルが解決しているかどうかも分からない状態で、予選を走りたくはありませんから。

前日練習で走った結果、幸いトラブルは直っていました。あとは無理せずケガをしないよう、頑張るだけです。


久しぶりのレース

予選では、ボロボロのタイヤで走った前日練習のタイムも更新できない体たらくでした。走った感覚と実際のタイムに、1秒のズレがある感じです。

でも、何故か回りもあまりタイムが出ていません。

決勝グリッドに並ぶと、両隣には普段は59秒で走るヤツらがいます。リハビリレースのおじさんに気を使って、隣に並んで一緒に遊んでくれる、ということでしょうか。ではお言葉に甘え、遊んでもらいましょう。

スタートは・・・。相変わらずヘタです。せっかく両隣にならんだヤツらにも、先行されてしまいます。目の前には、北海道からやってきた、30年前のレース仲間がいます。なんとか彼に付いていって、30年ぶりに遊びたい・・・そう思っていましたが、スルスルッと数台を抜いていって、離れてしまいます。

気を使ってリハビリおじさんと遊んでくれている2台を、8周もかけてようやく抜きましたが、すでに体力が残っていません。人間が焼き付き寸前です。

「あと5周とか残っていたら、どうしよう・・・」そう思いながら最終コーナーを立ち上がってボードを見ると、『L1』の数字が見えました。そして1周を頑張り、久しぶりに心地よい疲れの中、チェッカーフラッグを受けることができました。

2019年春・テイストオブツクバ

今回は、筑波サーキットの職員の方からも、『もう身体は大丈夫ですか?』とか、『良くなりましたか?』と声を掛けて頂きました。レース仲間からも、同様の事を言われました。

もうすっかり大丈夫です!
だから、もう少し遊ばせてくださいね♪


カッコいい後輩

2019年春・テイストオブツクバ

チームの後輩のK君です。見た目は十分オッサンですが、可愛い後輩です。
この日も、ポールトゥウィンです。2位以下をぶっちぎっていました。カッコ良すぎです。

「つまらないから、スタートで出遅れて、追い上げていってくれ。」
「ラスト2周になったら、トップに出てもいいから。」

そんな事を言って送り出しましたが、すぐに先頭に出ると、後続を引き離していきます。

「コースレコードを狙います!」
と言っていましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。

2019年春・テイストオブツクバ

以前は、貴重なFZエンジンを何度も壊していました。それでもいい訳もせず、黙々と頑張って走り続けていました。練習量は、軽くみても私の10倍です。

よく見ると、ヘルメットのカラーリングが私と同じです。
このデザインを知っている方は、相当なマニアです(笑)。

K君、こんな先輩ですが、これからも助けてくださいね♪