フルカスタムのXJR1300、その6、組み立て準備2

フルカスタムのXJR1300ですが、エンジンは全て分解し、パーツ洗浄も終わりました。


サンドブラストと塗装

このエンジンは、塗装仕上げをすることになっています。ですから洗浄後は乾燥させてマスキングし、サンドブラスト加工をする必要があります。

しかし、いくらサンドブラストを掛けるといっても、このキズを消すことはできません。

左側のクランクカバー
左側のクランクカバー

右側のクランクカバー
右側のクランクカバー

どちらも転倒によるキズでしょうか、結構な深さがあります。ブラストやペーパー掛け程度で消せるキズではありません。キズは、塗装でも消せません。逆に目立つようになってしまいます。

塗装ベースとして考えれば、新品である必要もありません。ということで、ストック部品箱をゴソゴソと探します。

左右のカバー共に、2つ3つは出てきましたが、キズの無いキレイな物は、残念ながらありません。多少の浅いキズなら磨いて消すことも出来るのですが・・・。

仕方ありません。時間もあまりありませんので、スペアエンジンから取り外すことにします。今すぐに使うエンジンではありませんので、出物が出たときに取り付けておきましょう。

ブラスト前と後のクランクカバー

スペアエンジンから取り外し、ブラストを掛けたクランクカバーです。若干キズが残っていますが、サンドペーパーで仕上げてから塗装すれば、大丈夫でしょう。右側の取り外したカバーに比べれば、全然マシだと思えます。

セルモーター
セルモーター

ヘッドカバー
ヘッドカバー

通常のエンジン塗装では、セルモーターやゼネレーター、ヘッドカバー等は塗りませんが、腐食が激しいので、この状態のまま塗装したキレイなエンジンに組む訳にはいきません。

特にヘッドカバーは、よろしくない状態です。まず剥離をしてコーティングを剥がし、その上でブラスト加工します。

ボルト類もサンドブラスト

このエンジン、正直に言って、外観は結構残念な状態でした。カバー類やケースなどは、塗装すればまだ何とかなりますが、サビたボルト類を交換しようと思うと、1本数百円します。目立つボルト類だけでも、結構なコストになります。

オーナー様は、多くのコストを掛けてでも、この車両を調子良くキレイにしたい!と思っていらっしゃいます。そこで今回は、ボルトの頭をサンドブラストし、塗装することにしました。

ボルトを締める際、多少は塗装落ちがあるかもしれませんが、サビたボルトよりもずっと良いでしょう。エンジンの色とも同色なので、違和感もないでしょう。初めての試みです。

ボルトを1本1本ブラスト加工するのは、思いの他、面倒でしたが、組んだ後の仕上がりは、満足できるものです。

塗装したボルトで組んだクランクケース

塗装したボルトで組んだクランクケースです。頭がサビているボルトに比べたら、ずっとカッコ良く見えますよね。

クランクカバー右側
クランクカバー右側

エンジンブラケット
エンジンブラケット

クランクカバーの右側は、このように仕上がりました。ついでに、あまりにも汚かったエンジンブラケットも、塗装しました。

このように、細かなパーツでもキレイにすれば、オートバイの見た目もグッと良くなります。

塗装前のオイルクーラー
塗装前のオイルクーラー

塗装後のオイルクーラー
塗装後のオイルクーラー

さらについでに、新品のオイルクーラーも塗装しました。トップブリッジ回りをブラックアルマイトで仕上げますので、より一層精悍な感じになると思います。


Rサスペンションのオーバーホール

エンジンをオーバーホールしている間に、Rサスペンションをオーバーホールに出しました。

Fサスペンションは、延長キットを取り付ける際に私が行いますが、Rサスとなると、そうはいきません。普段からサスペンションのオーバーホールを依頼している、信頼出来るショップにオーバーホールしてもらいます。私の街乗りXJR1300のクアンタムも、筑波用レーサーのオーリンズも、そこに依頼しています。

出来上がった、との連絡があり、取りに行った際、昔からの知り合いという事もあり、いろいろな話をしました。その時、サスペンション本体とは別に、小さなパーツをもらいました。

オーバーホール後のRサスペンション
オーバーホール後のRサスペンション

取り外されたオイルシール
取り外されたオイルシール

話を聞くと、このサスペンション、間違いなく手を入れられています。おそらく、結構前ではなかろうか、ということですが。

まず、一番心配していたロッドですが、交換が必要なサビや曲がりはありませんでした。ホッとしました。ただしこのロッド、再メッキされている、ということです。メッキのマスキング等で分かったそうです。

また写真右側のパーツですが、オイルシールです。これが、オーリンズ純正ではなく、サイズ違いの他社製品が使われていた、ということです。外径が異なるオイルシールを使うため、わざわざカラーを製作して打ち込んであった、というのです。

しかもそのカラーを抜くために、旋盤で削って外した、とのことでした。どうやら、余分な手間を掛けてしまったようです。

オーリンズ純正のオイルシールは、メーカーと契約している専門店でなければ入手できません。つまり、純正のオイルシールを入手できないショップが、サイズ違いのオイルシールを使うために、手間と労力を使ってわざわざカラーを製作しオーバーホールした、ということです。

ロッドに再メッキしたのも、オーリンズ純正部品が入手できないため、ロッドの交換ではなく再メッキした、と考えれば、話の筋は通ります。

オーリンズのオーバーホールをしてくれるショップは、有名どころだけでも数店舗はあります。今の時代、宅配便で送れば済みます。なぜ、そのような事をしたのかは、今となっては分かりません。

今回のRサスオーバーホールは、正規店で行っていますので、ちゃんとオーリンズの純正部品が使用されています。オーナー様、安心して下さいね。


誰が、何の理由で・・・

この車両、エンジンだけでも「不思議な光景」を、何箇所も目にしました。あえて「不思議な光景」という優しい、柔らかい表現にしましたが、そのどれもが、作業者の完全なミスや誤組みとしか、私には思えません。

バルブタイミングのコマずれなど、あってはならないことです。組んだ後、一度でも確認すれば、すぐに分かることです。通常であれば、カムシャフトを組んだ後、クランクを回転させて再度チェックするのは当たり前のはずです。このような作業で、調子の良いエンジンが出来るはずもありません。

プライマリーチェーンのガイドは、明らかに故意に曲げられたものです。これではスタータギアのシャフトが、チェーンに押されて入りません。

何を考えて、どのような人がどんな理由で、このように組んだのだろう・・・、と思ってしまいます。Rサスペンションにしても同じです。

なぜ・・・?

この業界は、あなたが思うよりも狭いので、もしかしたら私が知っている方かもしれません。名前やショップ名程度は、聞いた事があるところかもしれません。それとも、以前の車両オーナー様がご自身でやったことなのかもしれません。

ただ、誰がやったにせよ、相当にいただけない状態であったことだけは、間違いありません。このような中古車を入手した現在のオーナー様は、運が悪いとしか、言いようがありません。

頑張って、出来るだけキレイにカッコ良い、しかも調子の良いXJR1300に仕上げたいと思います。

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