フルカスタムのXJR1300、その5、エンジンの組み立て準備

フルカスタムのXJR1300ですが、エンジンの分解が終わりました。分解後は、まずは全てのパーツをチェックしながら洗浄していきます。

洗浄したエンジンパーツ類

シリンダーも洗浄はしていますが、今回はピストンとセットで交換することになりました。

オーバーホールの主な目的は、消耗パーツの交換と圧縮回復です。シリンダー回りは、通常であればピストンリングの交換で済みますが、このエンジンの場合は、ピストンとシリンダーに結構なダメージがありました。

取り外してカーボンを落としたピストン

これが取り外したピストンです。通常の走り方では、4~5万キロ程度では、ここまでピストンに当りは付きません。シリンダーも消耗していましたので、オーナー様ご了解の上で、セットで交換することとしました。

何度か書いていますが、XJR1300のメッキシリンダー+ピストンのセットは、8万円弱で購入できます。今後も長く乗りたいのであれば、セットでの交換がお勧めです。


シリンダーヘッド

圧縮の要であるバルブ回りですが、こちらも結構なダメージがありました。

打痕や虫食いが酷いシート面

シリンダーヘッドのシート面は、このように打痕や虫食いが酷く、この状態での再使用はお勧めできません。

傷みの激しいEXバルブ

こちらは取り外したEXバルブです。右側はザッとカーボンを落としたもの、左側はボール盤で磨いてカーボンを落とした後になります。

バルブのフェース面はシート面同様、相当な打痕や虫食い跡が見られます。すり合わせ程度ではどうにもならない状態です。

シリンダーヘッドの面も多少傷んでおり、歪みもありましたので、ヘッドの面出し研磨とシートカット、合わせてバルブのフェース研磨も行う事としました。バルブは新品に交換することがベストですが、16本になりますので結構高額になります。1回であれば、フェース研磨で補うことができます。

ちなみに面出し研磨とは、最小限の面研磨をすることでキズや歪みを取り除き、ヘッド面をキレイに再生する作業です。通常であれば、0.1mm以下の研磨量で済みます。

シートカット後のバルブシート

シートカットをすると、バルブシートはこのように打痕も無くなり、キレイになります。

フェース研磨後のバルブ

フェース研磨したバルブです。こちらも打痕が無くなり、キレイなフェース面になりました。

バルブとシート面の密着度合いは、圧縮に大きな影響を与えます。レースを始めた頃は、『まずバラしたらすり合わせをしろ!』と言われたものです。

時折、「レースじゃないから、すり合わせだけで良いです。」という方がおります。しかし、打痕や虫食い跡は、すり合わせでは消せません。密着していないシート面からは、当然ですが圧縮は漏れます。圧縮が低くなれば、その分、パワーも出ません。

これらの作業は、チューニングやパワーアップではなく、あくまでも機能回復のための作業です。新車時にできるだけ近づけるためです。

面出し研磨後のシリンダーヘッド

良い圧縮を支える箇所の一つが、シリンダーヘッドの合わせ面です。ここに歪みやキズがあれば、吹き抜けや圧縮漏れなど、圧縮低下の原因にもなります。

古い空冷エンジンでは、熱による歪みも発生しているものです。異物によるキズが発生していることもあります。それらの歪みやキズを無くしてキレイな面にすることは、非常に重要です。

ちなみに、サビたダウエルピンが1ヶ写っていますが、これは内燃機屋さんに抜き取ってもらったものです。

水が入りやすいのか、蒸発しにくい構造なのか、XJR1300のエンジンを分解すると、決まったように同じ箇所のダウエルピンが固着しています。まず間違いなく、写真のようにサビています。

一番酷かったエンジンでは、この固着したダウエルピン1ヶのために、一人でシリンダーからヘッドが外せませんでした。こんな事は初めてでした。ちょうど知り合いの加工屋さんが来たので、手伝ってもらい、二人で1時間掛かって、ようやくヘッドをシリンダーから外すことが出来ました。

他にも、エキパイを固定するためのスタッドボルトも、固着しやすい部品の一つです。抜けない、折れた、なんていうことは、良くあります。中には、一度緩んだ後、回らなくなるスタッドボルトもあります。

これは、ヘッド側のネジ部が固着したボルトに剥がされ、ネジ部がダメになった時に起こります。こうなると、手に負えません。内燃機屋さんに依頼し、ボルト抜きとヘリサート挿入をしてもらうしか方法はありません。

20年も経過したエンジンですから、抜けないボルト、外れないパーツはあるものです。抜けないボルトを無理に回そうとすれば、大抵は折れます。さらに抜くのが困難になります。

XJR1300、1200だけでも何十機も分解・組み立てをしていますので、機種特有の弱点は、誰よりも分かっているつもりです。何もないように見えても、始めからバーナーで炙ってから緩めるボルトがあります。ボルトが折れやすい箇所も分かります。それでも、分かってはいても、抜けないものは抜けません。

このように、古いエンジンは分解するだけでも苦労します。保管状況が悪い車両では、なおさらです。

でも、苦労してでも一度分解して、消耗パーツを交換するなどの手を入れてあげれば、エンジンは調子を回復し、また安心して走れるようになります。その為のオーバーホールですから。

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