ダンボールに入ったエンジン、その4

段ボール箱十数個に入ってやってきたバラバラなエンジンですが、やっとここまで作業が終わりました。

サンドブラスト加工の終わったカバー類

サンドブラスト加工の終わったクランクケースとシリンダーヘッド

上の写真は、塗装の為のマスキングまで終わった状態ですが、ここまでの作業が結構大変です。

まずチェックしながら各部品を洗浄して、乾燥させます。加工が必要な部品は、この時点で内燃機屋さんに加工を依頼します。シリンダーヘッドの面研磨やシートカット、折れたボルトや抜けないボルトの抜き取り作業、固着したダウエルピン処理などです。

純正の塗装が浮き上がるほど傷んでいるパーツは、剥離材を使って浮き上がった塗装を出来るだけ落とします。その後、洗浄して乾燥させてから、サンドブラストの為のマスキング作業です。

サンドブラストが終わったら、再度洗浄します。特にオイル通路は、エアブローを何度もして、徹底的に洗浄します。マスキング以外にも、各通路にメディアが入り込まないよう、フタや栓をしますが、それでも絶対ではありません。念には念を入れて、ということです。

その後、乾燥させてから塗装の為のマスキング作業をします。そしてやっと、上記の写真の状態になります。

ちなみにジェネレータは、サンドブラスト加工が出来ません。ですからブラシやサンドペーパーなどで汚れやサビを取り除き、塗装します。


エンジンパーツ塗装

塗装の終わったエンジンパーツ類

塗装の終わったクランクケース

今回は、耐熱のシルバー塗装です。新品と見違えるほど、どのパーツもキレイになりました。ヘッドカバーやオイルパンなどは、あれだけ汚かったパーツが、塗装することによって、ここまでキレイになりました。

耐熱塗料は、塗装して時間を置いただけでは、完全に硬化はしません。硬化させるためには、高温で焼く必要があります。

ですから当ガレージでは、塗装後に専用釜で高温焼付けをします。

200度以上の設定も出来ますが、エンジンパーツはアルミ素材ですので、バラした常態でそこまで高温にするのは、歪みなどのリスクがあります。ですから、そこまで温度を上げることは、さすがにしません。

高温の専用釜で焼き付ける。

塗装が終わりマスキングを剥がしたら、すぐに組める訳ではありません。いくら丁寧にマスキングをしても、合わせ面には少なからず「塗装のかえり」が発生します。特にクランクケースやシリンダーヘッドの合わせ面は、凹凸や汚れが無く、キレイな面である必要があります。

塗装のかえりは必ず取り除き、脱脂したうえで組んでいきます。

塗装のかえりを、スクレッパーで取り除く

写真はブラック塗装時のものですが、このように合わせ面に塗料が付着した箇所は、その塗料をスクレッパーなどで取り除き、その後に脱脂します。ここまでの作業を終えて、やっと組み立てに入ることが出来ます。

エンジンのオーバーホール作業では、組み立ては最後の2割程度の仕事です。料理と同じで、その多くは仕込み作業です。仕込み作業で味と出来栄えが決まってくるのと同じで、組み立てまでにどんな作業をどこまでどうやってやるか、ということが、非常に重要です。

毎回同じ思いになりますが、全ての組み立て準備が終わると、少しホッとします。あとは組んでいくだけでエンジンが出来る、と思えるからです。


お買い得なピストンセット

エンジン組み立てのための純正パーツ

今回のエンジンのオーバーホールには、これだけの純正パーツが必要です。相当な量に思われるかもしれませんが、毎回これくらいの量になります。

今回は、ピストンとシリンダーも新品に交換します。XJR1300の場合、シリンダーはアルミ一体式のメッキシリンダーです。スリーブまでの一体式ですから、従来のシリンダーのようなスリーブ交換は出来ません。

鉄製スリーブのように、酷く磨耗しているものは、滅多にありません。でも一体式ですから、どこか1ヶ所が傷んでいたら、シリンダー交換になります。

アルミ一体式のメッキシリンダーは、放熱性も良く、耐久性も高いです。レース時代の後半は、ボアアップせずにSTDの79ミリボアで走っていました。80ミリや81ミリにボアアップしたエンジンも造りましたが、それよりも、放熱性も耐久性、走りやすさも上回っていたからです。それくらい、STDのアルミシリンダーは良いシリンダーだと思っています。

とは言っても、走行距離や年数が経過したものは、やはりそれなりの状態です。

XJR1300の場合、「シリンダーとピストンのセット」が、メーカーから部品として販売されています。約74,000円です。ピストン4つ購入すると28,000円ですから、5万円以下で新品のシリンダーが購入できることになります。お買い得です。

ですから、走行距離が多い方やピストンが傷んでいる方には、セットでの交換をお勧めしています。ピストン・シリンダー・バルブ回りは、エンジンのパワーを生み出す肝心要のパーツです。ケチらないで、コストや手間をかけたいところです。

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