ダンボールに入ったエンジン、その2
シリンダーヘッドのカーボン除去とチェックが終わった後は、引き続きバルブのカーボン除去とチェック、磨き作業です。バルブシートとバルブフェースの当たりがきちんと確保出来なければ、いくらオーバーホールしようがチューニングしようが、片手落ちとなります。
ですから、バルブとシートの当たり面は念入りに確認し、擦り合わせ作業を行ないます。通常のオーバーホールでも、ここまでやるのは当たり前のことです。
今回のエンジンは、全て分解された状態で保管された後、当ガレージに持ち込まれました。当然、バルブも取り外された状態です。
ダンボール箱に穴を開けて、バルブスプリングと共に、各場所ごとに分けられていました。バルブやスプリング、その他のパーツを見ると、洗浄もしていない状態で、オイル分も拭き取られないまま、長期間保存されていたようです。
バルブリフタ
洗浄後のバルブ回りのパーツ
バルブリフタはシムが入った状態で、E1、E2、といったように、どの位置の物なのかが分かるよう、赤マジックで書き込まれています。当然、Iはインテーク、Eはエキゾースト、という意味ですね。I5、とあれば、インテークの左から5番目、という意味でしょう。
さて、バルブスプリングなどを、他のパーツと共に洗浄していきます。オイルや汚れが硬化したように固着しているパーツもあり、念入りに洗浄する必要があります。
この固着した汚れが、簡単には取れません。ブラシを使って削ぎ落とすようにしなければ、キレイにならないパーツもあります。結構な長期間、洗浄されずに放置されると、このようになってしまうのでしょうか・・・。
ケース類やカバー類なども見てみましたが、どのパーツにも、このような汚れの固着が見られます。結構やっかいな洗浄作業となりそうです。
バルブ磨き
ボール盤を使ってバルブを磨いていく
磨く前と磨いた後のINバルブ
バルブは、カーボンが多い時は、まずクリーナーとブラシを使ってカーボンをざっくり落とします。その後、ボール盤を使って、オイルを付けたペーパーを2種類使って磨いていきます。
昔は鏡面磨きもしましたが、手間が掛かるのと自己満足の世界なので、最近はそこまではしません。見た目は美しくなりますが、それがどこまで効果があるのか、少なくとも体感では感じることが出来ませんでした。ですから、現在の磨き方で十分かと思っています。
以前は時々、雑誌などでも鏡面加工までされたバルブや燃焼室も見ました。確かにカーボンは付きにくくはなると思いますが、それがどこまでタイムに結び付くか、と言われれば、???です。それを公道仕様のエンジンにやったところで、と考えてしまいます。
そんなところに手間とヒマを使うのなら、もっと他に使うべきところは沢山あります。公道仕様のエンジンに求められるものは、長く調子良く、安心して乗れることです。それでも、もし鏡面までお求めの方がいれば、やりますけれど・・・。
磨いたバルブと洗浄したパーツ類
磨いたバルブは、洗浄した他のパーツ類と共に、混同しないよう場所ごとに分けて保管します。ヘッドの面研磨や塗装が終わった後に擦り合わせ作業をして、その後に組んでいきます。それまで保管する、ということです。
クランクケースのチェック
さて、加工屋さんにヘッド修正を依頼する前に、クランクケースもチェックしておきましょう。もし修正が必要な箇所があれば、一緒に出したいからです。
まず、一番ボルトが折れやすい箇所をチェックします。
ここはクラッチの奥ですが、案の定、3本中2本が折れて、折れたボルトがネジ穴に残っています。ここにはバッファプレートというプレートが取り付けられていますが、このボルトは細くて、しかもネジロックが付いているのです。だから、他のボルトと同じ感覚で緩めようとすると、簡単に折れます。
もしご自身で緩める場合は、まずガスバーナーで温めてください。STDの状態で付いているネジロック剤は、高温にすると溶けます。ですから炙るだけで、だいぶ抜けやすくなります。
力は、いきなり掛けてはダメです。いっぺんに緩めるのではなく、ほんの10度くらい緩めるつもりで、ゆっくりと回してください。一旦緩んでも、「よし、緩んだぞ!」とばかりに一気に回すと、そこで折れることもあります。他の箇所でもありますが、固着していたボルトが緩む際に、ネジ穴の面を剥がしてしまうようです。
熱を掛けて、ゆっくりと少しずつ、これがポイントです。それでも、折れるときには折れます。ここのネジ穴は浅いので、素人の方が何とかしようと、ドリル等で穴開けをすると、最悪の場合、ネジ穴がダメになるだけでなく、クランクケースに穴が開きます。そんなケースを、写真ですが見た事があります。
ここは、自分で何とかしようとせず、加工屋さんに依頼するのが得策でしょう。
クランクケースを洗浄する前に、スタッドボルトが挿入されるネジ穴も、タップで修正しておきます。
アルミのカスが出るような修正は、できれば洗浄前に済ませておけば、洗浄とエアブローでカスを取り除くことが出来ます。そんなアルミ片がオイルライン
に入ってしまったら、酷いことになってしまいますからね。想像したくはありません。
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シリンダーヘッドを面研磨して圧縮比を上げ、バルブタイミング調整をします。これだけでトルクも上がり、パワーアップできます。
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ポート研磨やTMRキャブレターの装着、および空燃比計を用いたキャブセッティングで、150馬力の出力を得ることが可能になります。
どのコースも、先着1名様となります。