TMRキャブレターについて

様々なTMRキャブレター

レーシングキャブレターについて、時折以下のようなご質問を頂戴します。

  通販サイトなどでは、XJR1300用TMRの取扱いが無くなったようですが…
  TMRのセッティングを教えて下さい。
  FCRとTMR、どちらがお勧めですか?
  レーシングキャブを使っていますが、調子が良くないのですが…
  ヨシムラのMJNはどうですか?

ですので、今回はキャブレターについてのお話です。


TMRキャブレターの購入方法

現在、ACTIVEやWebike等の通販サイトでは、XJR1300用ミクニTMRは、販売されていないようです。カタログ落ちしています。TPS付きTMRとMJNは、ヨシムラ製がまだ販売されています。

XJR1300がインジェクション化されて、既に10年以上が経過しています。TMRキャブレターの販売数も激減していると予想できます。時代の流れですので、キャブレターが売れないのは、致し方ないことなのかもしれません。

当ガレージでは、TPS無しのタイプであれば、XJR1300用をご用意できます。今年になって既に5つ、ご用意しました。

某サイトやあるショップでは、注文してもXJR1300用は3~4ヶ月待ち、という話も耳にしましたが、当ガレージではそこまでお待たせはしません。メーカーに40パイのボディ在庫があれば、ピッチをXJR1300に合わせて組み替えますので、早い場合は1週間程度で入手できます。

私は今まで、TPS無しを20年以上、使い続けています。楽しく走るためには、無くても問題はありません。

肝心なのはセッティングです。特に一般公道では最も多用する中速域のセッティングが、非常に大事になります。

空燃比計を用いた実走セッティング作業も、当ガレージでは出来ます。豊富なデータと合わせて、あなたのTMRをセッティングします。ご希望の方は、お気軽にお問合せください。

空燃比計を取り付けた実走セッティング
空燃比計を取り付けた実走セッティング作業


TMRキャブレターのセッティング

TMRキャブレターのベースセッティング(初期セット)は、口径によって決まっています。XJR1300用はXJR1300で実際にテストされ、細部までセッティングされている、と思っている方もいるようですが、大きな勘違いです。

そもそもレーシングキャブレターのセッティングは、ユーザーが自己責任で行うものです。調子が悪いからといって、販売店や取り付けショップにクレームを付けられるものではありません。調子良く走らせるための責任は、ご自身にあるのです。

シャーシダイナモが普及し、シャーシに掛ければセッティングが出せる、と思っているユーザーの方も多いようですが、それは誤解です。シャーシダイナモは後輪出力を測定するものであって、セッティングを出す為の機械ではありません。

もしシャーシダイナモで詳細なキャブセッティングが出せるのなら、導入しているショップは何故、セッティングサービスをやらないのでしょうか?何故、こんなにも多くの車両がセッティングも出ていない状態で走っているのでしょうか?

キャブセッティングは、エンジンの回転数ではなく、アクセル開度で考えていくものです。キャブレター内の各パーツの受け持つ範囲が、回転数ではなくアクセル開度で決まってくるからです。

そしてオートバイは、機械ではなく人間が乗るものですから、そこに乗り手の感性であったりアクセルの開け方であったりスキルであったり、様々なものが加味されてきます。

アクセルをジワッと開けるのか、急に大きくガバッと開けるのか・・・

シャーシダイナモでジワッと高回転まで回すことを2~3回やっただけで、乗って楽しいセッティングが出せるとは、とても思えません。

セッティングは簡単には出せません。だから多くのユーザーの方が調子の悪いまま乗り続けたり、困ったり悩んだりしているのです。

そんなユーザーの方が、「おっ、面白いサイトがあったぞ。聞いてみよう。」といった感じで、当ガレージにセッティングをお尋ねになるのでしょう。でも、申し訳ありませんが、お教えしてはおりません。

キャブセッティングは、同じ車種でも、状態が違えば変わります。マフラーやその他の条件が変われば、異なってきます。チューニングエンジンであれば、なおさらです。オーナーの乗り方や好みもあります。厳密に言えば、気候や標高でも変わってきます。

セッティングやオーバーホール、チューニングをご依頼されたお客様については、実走テストや空燃比計を用いたセッティング作業もしております。ですが面識も無く、いきなり「セッティングデータを教えて下さい。」と言われても、教える気にもならない、というのが正直な気持ちです。

TMRキャブレターのJNセッティング作業
TMRキャブレターのJNセッティング作業

高価なカスタムパーツを付けても、キャブセッティングが出ていないXJR1300は、もう何十台も見ています。カスタムに200万円以上掛けているのに、まともに走らない車両もあります。なぜ、セッティングにコストを掛けないのでしょうか。

たとえ10万円掛かったとしても、高価なオートバイなのに調子悪いまま乗り続ける事を考えれば、今すぐやるべきだと思うのは、私だけではないハズだと思うのですが。


FCRとTMRについて

なぜ当ガレージが「ミクニTMR」しか扱わないのかと言えば、私が個人的にTMRが好きでFCRが嫌いだからです。ただそれだけの理由です。

好きだから長年使い続け、経験もデータもパーツも豊富にあります。メーカーともパイプがあります。でもFCRには、良いイメージがありません。パーツも保有しておりません。

FCRが装着された車両でレースをした事は、何度もあります。耐久レースで好結果を残せた事もあります。お立ち台に登らせて頂いた事もあります。決してFCRを否定している訳ではありませんし、その性能を疑っている訳でもありません。

ただ、自分のXJR1300という車両に取り付けて、セッティングをいろいろとイジッて、楽しく走れるようにするには、TMRしか使いたくない、というだけです。

細かいことは何度か当ブログで書いていますので、ここでは省略しますが、以上の理由で、FCRはイジりたくないのです。イジった後の責任も取りたくないのです。

FCRキャブレター
XJR1300用のFCRキャブレター

ちなみに性能で言えば、TMRの方が少し上だと考えています。トルク感やパワー感といった、感性に訴える部分でも、TMRの方が上だと思います。しかし市場に出回っている数は、圧倒的にFCRの方が上です。

レーシングキャブレターを入手しようと考えた時、どちらを選ぶかは好みで決めれば良いでしょう。ただ個人的に聞かれた場合は、TMRを勧める、という事です。


調子を良くするには?

ミクニのサイトには、TMRキャブレターには次のような説明がされています。
『スムースボアの採用で吸入効率を向上させ高出力化した、レース用キャブレターです。』

レース用キャブレター、つまりレースに使う素材ということです。ですからその能力を引き出し上手に使うのは、ユーザーの責任になります。

調子の悪いキャブレターを使っている方には、二つの特徴があります。

  • ノーセッティング
  • ノーメンテナンス

TMRキャブレターのオーバーホール
TMRキャブレターのオーバーホール作業

多くのユーザーの方が、そもそもセッティングもせず、使い続けているにも関わらずメンテナンスもしていません。これでは調子が悪くて当り前です。

調子の悪いレーシングキャブレターを使っている方は、まずは各部が正常に作動するよう、オーバーホールをしてみてください。その上で、セッティング作業をし、どのアクセル開度でもスムーズに回転が付いてくるよう、調整・変更作業をするのです。

ご自身で出来ないのであれば、プロや専門家に依頼しましょう。その程度のコストをケチっているようでは、レーシングキャブレターを使う資格は無いのかもしれません。

カッコ良くするために、カスタム費用を掛けます。オイル交換にも、お金を掛けます。タイヤが減れば、新品を購入して交換します。チェーンやブレーキパッドが消耗すれば、新品に交換します。

なのに、レーシングキャブレターという高価な機能パーツを購入しても、その機能を引き出し楽しく走る為のコストは、何故か掛けません。それを考えると、何だか悲しくなります。


ヨシムラ製MJNについて

ヨシムラ製のTMR-MJNは、独自のアイデアを具体化させたキャブレターで、JNの形状が通常のTMRと比べ、全く異なります。

TMRよりも圧倒的に市場に出回っているようですが、細かくセッティングを出そうと思うと・・・。

ヨシムラ製TMR-MJNキャブレター
ヨシムラ製TMR-MJNキャブレター

詳細は言いませんが、キャブレターを使う旧車レースにおいて、TMRは数多く使われているもののMJNは殆ど使われていないところに、答えは隠されている気がします。

MJNのセッティングを出して下さい、調子を良くしてください、というご希望には、申し訳ありませんが、以上の理由からお応えすることが出来ません。


レーシングキャブレターのまとめ

現在のレーシングキャブレターは、ケーヒン製FCRとミクニ製TMRに大別できます。ヨシムラMJNは、いわば派生機種のようなものであり、一から製作しているものではありません。その中でどれを選択するかは、ユーザー様ご自身で決めれば良いことです。

レーシングキャブレターは、その名の通り「レース用部品」です。性能はSTDキャブレターよりも数段上です。マフラーと併用することで、XJR1300でも120psを超えることが可能です。

でも、忘れてはならないのは、『セッティングとメンテナンスは自己責任である』ということです。調子が悪いから、上手に使えないからといって、メーカーや販売店にクレームを言える部品ではありません。

キャブレターは、ドレスアップパーツではありません。機能パーツです。その持っている機能を生かすも殺すも、ユーザー様次第です。

ミクニ製TMRには、オーナーズマニュアルがあります。細かなパーツも入手できます。やる気と根気さえあれば、どなたでもご自身でセッティング作業が出来ます。

つまらない噂話や正確ではないネット情報などに惑わされず、是非セッティングを出して、楽しくXJR1300に乗って欲しいと思っています。

今まで調子の悪い状態で乗っていた方にとっては、セッティングの出ているレーシングキャブレターの乗り味は、感動出来るものだと思います。どこから開けても、ボコつくことなく付いてきます。レーシングキャブレターにありがちな、急開時のタイムラグもありません。

どうせレーシングキャブレターを付けるのなら、是非そのような車両に乗って、楽しいオートバイライフを送って欲しいものです。

ご自身でやる自信の無い方、難しそうだと感じている方には、ミクニTMRに限りますがセッティングやメンテナンスのお手伝いが出来ます。遠慮なくお気軽に、お問合せください。

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