腰上チューニングエンジン、その6・試乗とパワー測定

SOHC製スペシャルピストンを入れ、ヘッド加工を施したエンジンも出来上がり、TMRキャブレターのセッティング作業も終了しました。

出来上がった車両の乗り味をジックリ味わってみるために、お引渡し前にテストも兼ねて、いつもの場所まで試乗してきました。

いつもの宮ヶ瀬湖まで試乗
いつもの宮ヶ瀬湖まで試乗しました。


乗り味とアクセレーション

一口にパワーアップする、と言っても、チューニング内容や仕様によって、乗り味は様々です。今回の車両は、カムシャフトはSTDを使用したこともあり、唐突なパワーの出方もなく、非常にマイルドで扱いやすいエンジンになりました。

カムシャフトをリフト量の高いものに変更すると、どうしても低速域が扱いにくくなりがちです。信号待ちなどで一旦停止して再発進する際、半クラの時間を長くしたり回転を上げたりしないと、スムーズに発進できなくなる場合もあります。

ツーリング先で渋滞にハマると、滑りを防止するための強化クラッチも相まって、信号発進や極低速での走行に嫌気が差す場合もあるほどです。これは何度も経験しているので、正直に言えばウンザリしてきます。

しかしこの車両はSTDカム仕様ですので、そのような事は全くありません。アクセルを開けなくても、左手でクラッチを放していくだけで、力強く前に動き出します。

ノーマルカムシャフトを使用したシリンダーヘッド
ノーマルカムシャフトを使用したシリンダーヘッド

また、一番多い中低速でのパーシャル走行からアクセルを開けると、エンジンは即座に軽やかに回転上昇します。しかしそのトルク感やパンチ力は、ノーマルエンジンの比ではありません。軽やかに回るのに、力強く加速していく感じです。

ボアアップして排気量を上げると起こりやすい、通称『ドッカンパワー』もありません。ちょっとアクセルを開けるだけでドカッと前に進むようですと、低速域ではギクシャクしてしまい、走りにくくなります。そのような、唐突なパワーの出方もしていませんので、非常に扱いやすいエンジンです。

大きな軽量化を実現したSOHC製スペシャルピストン
大きな軽量化を実現したSOHC製スペシャルピストン

キャブレターの味付けも、非常に上手く出来たと思えます。どこから開けても、ワンテンポ遅れるようなことは全く無く、開けた分だけトルクフルに力強く加速します。

レーシングキャブレターは、急開した時にどうしても薄い症状が出てしまい、ワンテンポ遅れて加速しがちですが、JNのセッティングも上手く決まり、急開しても薄くなりすぎて加速が遅れる、といった症状も出ません。

この部分は、公道用では一番気を使うところです。ここを遅れないようにすると、パーシャル走行時には濃くなりがちです。

パーシャル走行時に濃くなりすぎず、急開時には薄くなりすぎないようにしないと、右手にリニアに反応しない、ワンテンポもツーテンポも遅れるセッティングにしかなりません。

ここが上手に味付けされている公道用オートバイは、ほんのごく一部でしょう。私は、ほとんど出会ったことはありません。

また、ボアアップ等でパワーを大きく上げたチューニングエンジンの場合、低速や発進時にパワーが唐突に出ないよう、あえてキャブセッティングでボカしてあげる必要もあります。

ちょっとアクセルを開けただけで、毎回ドカッと加速してしまうようでは、いつも気を張っていなければツーリングもできません。そんなオートバイでは、疲れるだけで楽しくなくなってしまいます。


XJR1300用TMRキャブレターいろいろ
XJR1300用TMRキャブレターいろいろ

現在では、キャブレター車は生産されていません。つまり、TMRだけでなくFCRも、最後のレーシングキャブレターということです。しかし装着車両の多くはセッティングが合っておらず、中にはまともに走らない車両もあります。実際にそのような車両を、数多く見てきました。

せっかくの高価なレーシングキャブレターですので、もっと調子良くして、楽しく乗りたいものです。

TMRキャブレターであれば、急開時にも反応が遅れることのない、それでいてパーシャル時でも扱いやすいセッティングのお手伝いが出来ます。


パワーチェック

先日、オーナー様から「慣らしも終わってオイル交換し、パワーチェックしてきました。」とのご報告を頂きました。数字は、私が予想していたよりも高いもので、正直ビックリしたほどです。

パワーチェック結果

『150.7hp』、これがパワーチェックで出た数字です。4,700rpm当りの谷が、ちょっと気になりますが・・・。作業者の右手の開け方も分からないので、何とも言いようがありませんが…。

ちなみに『hp』は、アメリカ表示の馬力の単位であり、ヨーロッパや日本では『ps』と表記されます。おそらくアメリカ製の機械なので、表記の単位も『hp』なのだと思われます。『hp』と『ps』では、正確には若干の違いがありますが、出力を見る時、そこまで細かく気にする必要はないでしょう。

ここでは、昔から使い慣れた『ps』や『馬力』という表現で表記しようと思います。とっさに『hp』と言われても、何のことなのか自分でも分からなくなりそうですから。

私はあまり数字にはこだわりません。特にパワーチェックは、ショップや機種によって誤差があります。昔は、故意に水増しして表示させていた、という話も聞いたことがあります。自分のオートバイのパワーがある方が、お客さんは喜ぶからだそうです。

それよりも、私が気にするのは『差』です。オーナーの方は、チューニング前にも同じショップでパワーチェックをされたそうで、その時の数字は「118馬力」だった、ということでした。

ということは、シリンダーから上の腰上チューニングだけで、『33馬力』もアップした、ということです。もちろん、キャブレターの変更やセッティングの差もあるでしょう。でも、「118ps ⇒ 151ps」は、28%も出力が増加していることになります。

通常、XJR1300でマフラーとキャブレターを変更した場合、良くて『120ps』と言われていますし、その辺りの数字が妥当だと感じています。ですから、チューニング前の出力が『118ps』だったというのは、ある意味では正確な数字だったのではないか、と判断できます。

その車両が、腰上チューニングで『151ps』になったのですから、素晴らしい結果だと思えます。オーナー様も、『全く別の乗り物になった!』、とおっしゃっていました。

とはいえ、低速でも普通に扱えますし、どこからでもアクセルを開けただけ、回転も付いてきます。パワーはあるが非常に扱いやすいエンジンです。低速でも全く問題なく走ることができますし、開ければその圧倒的なパワー感やトルク感を味わう事のできるエンジンです。

この仕様であれば、どなたでも街中やツーリングで問題なく扱うことが出来ると思います。なおかつ加速していけば、その圧倒的なパワー感やトルク感を味わいながらも、STDエンジンよりも軽くエンジンが回っていく、そんなイメージです。


SOHCピストン、1セットのみ限定販売します!

通常では入手できないSOHC製ピストンですが、今なら当ガレージ保有の1セットのみ、販売いたします。

一言で言えば、「パワーはあるのに軽く回る!」、そんな乗り味になります。そのような特徴に大きく寄与しているのは、SOHCピストンの圧倒的な軽さです。今までに何機ものチューニングエンジンを作って乗ってきましたが、この感覚は一度も味わったことのないものです。

次回の製作予定はありません。また、このピストンは当ガレージでなければ入手できません。SOHC様にも在庫はありませんし、少量の製作依頼を受けてくれることもありません。

今回の限定販売は、ピストンだけの販売はせず、オーバーホールやチューニングまで合わせたセットとなります。最大限、ピストンの性能を発揮させるためのものですので、ご理解頂ければと思います。

ピストンが他では入手できないのですから、この乗り味も他では手に入りません。とはえい、総額では高額になりますので、すぐに購入される方が現れるとは思っていません。首を長~くして、気長にお待ちします。

ただし1セットだけですので、購入者が決まり次第、販売終了となりますこと、ご了承いただければと思います。

詳しくは、下記をご覧下さい。